仲直りのその先に
「私自身生きていれば傷つくことも多くあったかもしれない…ほんと嫌になることもあったと思う。でも周りの大部分の人間が敵だったとしても、1人でも自分の味方がいて自分が帰ってこられる場所があるというのはとても幸せだと思う。そんな人とは出会わなかった?本当に誰もいなかった?」
「僕は……」
男の子は喋らなくなってしまった。
私はその子の隣に腰をおろし、そこから何も言わずただ黙って成り行きを見守っていた。
「……僕、弟と妹にひどいことしちゃったんだ…」
しばらくしてからぼそっと呟くような声で話し出した。
「……そっか…」
「…どうしよう……」
ようやく顔をあげて私の方を再び見る。その金色の目からは涙が流れていた。
「謝ろう?許してくれるかもしれないし許してくれないかもしれない。でもお互い大事に想ってるならいつか許してくれる日がくるかもしれない。」
男の子の頬の涙を優しく拭いながらゆっくり話した。
男の子の目は不安そうに揺れている。
「もし不安なら一緒に謝ってあげるから?ね?」
優しく諭せば、男の子は観念したように頷いた。
その時、私達の前に小さな光が現れた。
それが徐々に大きくなって私の身長よりも大きくなった。
そこから2人の男女が現れた。
「…光の女神様、と闇の神様…?」
プラチナブロンドの美しい髪を靡かせた女の人の隣に漆黒の髪の毛を後ろに束ねた男の人が立っている…おそらく彼が闇の神なのだろう。
「お兄様…もうこんなことを止めにしましょう?」
光の女神が小さな男の子の目線に合わせて膝を折り懇願した。
「…僕はお前たちにひどいことをした…僕のこと許してくれる?」
「むしろ兄様にひどいことをしたのは俺です…許していただけますか?」
闇の神は恐らく封印したことを言っているのだろう。いくら不可抗力とは言え実の兄を殺す気で結果封印するというのは断腸の思いだったと思う。
「僕は…お前たちを許す…。お前たちも僕を許してくれるなら共に神の世界へ帰ろう。」
頬を伝う涙を拭い立ち上がった男の子は2人の男女の顔を見た後、私の方へ振り返った。
「お前はリーナスと言ったか…色々すまなかった…そしてありがとう。僕はもう人間界を滅ぼそうとはしない、この2人と自分達の世界へ帰るんだ。」
「そっか…うん、それがいいね」
私は3人の笑顔を見ることができて心の底から良かったと思った。
元々兄妹仲が悪かった訳じゃない。ちょっとした意見の不一致が世界と自分自身の命を揺るがすきっかけとなってしまったが、本来ならば仲の良い兄妹なのだ。
元に戻って安心し思わず笑みがこぼれた私に光の女神も闇の神もお礼を言ってきた。
「リーナス、貴女のおかげで私達の兄妹も元に戻りました。ありがとうございます。」
「リーナス、俺からも礼を言おう。兄と妹と再びこうして一緒にいれることを感謝する」
2人は私に礼を言い終えると男の子が前に出てきて私を見上げた。
「リーナス、本当にありがとう。しかしよくこの僕と戦おうと思ったね?」
先ほどの泣き顔とは打って変わっていたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「お詫びと言っては何だけど、君と君の婚約者の彼に僕の加護を与えよう…。弟が命を懸けて力を託し作った国の未来が素敵なものになるように願いを込めて…」
そう言って男の子が目を瞑り胸の前で手を合わせると私の中に温かな力がみなぎっていた。
ここまで力を手に入れてしまったらチート以外の何者でもないが、ありがたく受け取っておこう。でも私もう死んでるんじゃないの?
「君はまだ死んではいないよ?ここは神の世界と人間界の狭間だ。今から君を元の世界に返すね。」
私の疑問が顔に出てたからか、男の子は私の心の中の疑問に答える。そして私はまばゆい光に包まれた。
「あ、そうそう、そういえば僕達名を名乗ってなかったね。そのついでにちょっとした小話を教えたげる!僕はアラン。そして弟はバロンで妹はラーニャ。君たちの国のバロラニア王国は弟と妹の名前をくっつけてできた名前なんだよ!」
「えええええ」
ここで思わぬ国の歴史を更に知ることになって困惑する。てか最後にすごい情報をぶち込んできたな…。
唖然とした私の表情を見て満足したのかクスッと笑って私に手をかざす。
「さて…そろそろ元の世界に返すね?ありがとう…さようなら」
その言葉を最後に私の周りは再び真っ暗になり私の意識はそこで途絶えた。




