戦い
正直勝算があるかと問われれば何とも言えない。
2人の神と4人の精霊王でも封印することで精いっぱいだったのだ。
だが私は闇の神以外の加護を持っているし、クリス様に至っては闇の神の力を継承したとはいえ、全員の力を譲り受けた闇の神の力なので全員の加護を持っている状態だ。
そして2人の神の加護を持つ聖魔の宝剣ーーーー
この力を総動員して邪神を止めねばならない。
私は火の魔法、水の魔法、土の魔法、風の魔法を次から次へと繰り出した。
邪神はそれを煩わしそうに私の繰り出した魔法を消していった。
「なんだこの魔法は?私をなめているのか?」
邪神がイラつきながら魔力を凝縮させ、黒い球体と化した魔力を私に放ってきた。
放ってきたと軽々しく言ったが、その魔力の塊の球体は直径2メートルくらいのかなり大きいもので食らったら一たまりもなさそうだ。だが避けれそうになかったため光の結界を再び作り迎え撃とうとした…が…
「きゃ…!!」
「リィー!!」
邪神の攻撃に耐えきれず光の結界は壊れ攻撃の余波が私を襲った。
私は後ろへ吹っ飛ばされて体を地面に打ち付けた。
仰向けに倒されたが何とか起き上がり、邪神と向かい合う。
「遊びに来ただけなら去れ。邪魔だ」
邪神に殺気を込めた目で睨まれれば怯んでしまったが、ここで逃げ腰になってはいけない、気持ちを強く持たねばと自分を叱咤する。
長々と時間をかけるのは得策ではない…それこそ相手の思うつぼになりそうだ…
そう感じた私は両手に自分の魔力を集めだした。
温かな光の玉のような物ができあがり、それが徐々に大きくなっていく。
自分の背丈の半分程の大きさになると抱えきれなくなって両手を天にかざす体勢で魔力を集めだした。
(もっとだ…もっと集めなくては…!!)
ビリビリと周りを纏っている空気が震え、魔力の塊がどんどん大きくなっていく。
気が付けば光の玉は直径3メートル位の大きなものになっていた。
私はその大きな光の玉を邪神に向かって放った。
「ぐああああ」
男の唸り声が聞こえた。クリス様の声ではない、おそらく邪神に見事に命中したのだろう。
声を聞く感じそれなりのダメージを与えることができたのだろう。
「…!この女!!舐めた真似を!!」
邪神は大きな光の魔法を食らい尻もちをついたが体勢を立て直し、私に闇の波動を放ってきた。
先ほどよりも強力なもので直接当たれば死は免れないだろう…だがもう光の結界を作る魔力は残っていない。
「死ね!!!」
「リィーーーーーーーーー!!!」
闇の波動を目の前まできてるのを感じたのを最後に…私はそのまま意識を失った。
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「……んっ」
目を開けても真っ暗で何も見えない。
いや、自分の服、自分の手、自分の長い髪の毛そこははっきり見えている…ということは自分は真っ黒な空間にいるのか…と目覚めたばかりの割に結構すんなり自分の今置かれている状況を把握できた。
床も天井も周りを見回してもどこも黒黒黒。
床に座っているということは重力はあるのか、この空間…と妙なとこに気付けた自分に思わず笑いがこみ上げた。
明らかに今置かれてる状況が普通ではないのにどこまでも冷静でいられるのは自分の死を自覚しているからか。
意識を失う前のこともはっきりと覚えているし、自分が死んだのは紛れもない事実なんだろうけども…。
そういえば最後クリス様の叫びが聞こえたな…私の名を叫んでいた。クリス様は無事なんだろうか…。
今となってはクリス様の安否を確認することもできない…。
雨が降ってるわけでもないのに顔が濡れてる、と頬に手を当てれば自分が無意識のうちに涙を流していることに気が付いた。
ここでの人生も悪くはなかった…むしろ前世よりとても充実した人生だったと思う。生きた時間は前世より短いけども…。
ひとしきり泣き、疲れて再び眠りに落ちた
次に目を覚ました時も相変わらず真っ黒な空間だった。それもそうか…
ただひとつちがうことは私の近くに子供がうずくまっていた。
周りの色と同じ髪色だったからすぐには気づけなかったけど、黒髪の子供で白いローブの様なものを身に着けうずくまっている。
「どうしたの?だいじょうぶ?」
私の声で顔を上げた子供は男の子のようで、色白の肌に金色の目に涙を溜めていた。
顔のパーツが整っていて将来イケメンになりそうな男の子だなぁとぼんやり考えていた。
…がすぐにその男の子の正体がわかることになる。
「さっきまで僕を戦っていたのに僕の心配をするんだね?」
「え」
てことは…この子供は邪神なの…か?でも戦った時は青年と呼べるくらいの見た目だったから、この姿は幼少期なのだろうか?
「でも僕知ってるよ、最初優しく接してくれてもその内僕を邪険に扱ったりするんだよ」
そう言って幼い男の子は再びうずくまった。
「ねぇ、君の弟と妹も君を裏切ったりしたの?」
「え?」
私は前世のことを思い出しながら言葉を紡いだ。
「人間目線で言うとね、生きていれば良いことより悪いことの方が多く感じられることもあるのよ。でも悪いことばかりじゃなくてね…。あなたの言いたいことはわかるよ、人間なんて結局は自分本位で信用できないって…でも本当に信用できない人間ばかりだった?」
私の問いに顔を上げた男の子の目線に合わせてかがんで頭を撫でた。
この子は邪神だと分かっていても、不安そうに見上げてくる表情はどう見ても普通の男の子だ。そんな子供が悲しそうに心を閉ざしていたら、先ほどあった出来事など取っ払って寄り添いたくなるのが人の心ではなかろうか?
「ねぇ君の弟や妹も信じられない?」
「それは……」
「私はね、全員を信じろって言ってるわけじゃないよ。私だって信用できない人間の方がはるかに多かったし。でも1人でも自分を理解してくれる人間がいるってことはとても幸せなことじゃないかな?」
前世では正直家族と数少ない友達しか心開ける人間はいなかった。勝手に信用して勝手に裏切られたと思い勝手に傷つく…その一連の心の変化というものが煩わしいと思っていたのかもしれない。だから私は周りに人を置かなかった部分もあったと思う。
そんな私のことをある程度理解してくれる人が1人でも周りにいることのなんとありがたかったことか…それは社会人になってから感じることが多かったかもしれない。




