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邪神

「ん…そういえば…」

私はふとあることに気付き左側の壁画を再度見た。


「リィー、どうしたんだい?」

クリス様が壁画に近づいた私の隣にきた。


「この邪神と言われる縦長の影の足元に黒い渦がありますよね?これ魔力の歪みに似てません?」

私の言葉にクリス様が急に険しい顔つきになりその壁画に注目した。


「そ、そんな…まさか…」

壁画をじっと見つめた後険しい顔つきのまま青ざめたクリス様はそのまま動かなくなった。


「魔力の歪みとは…最近頻発しているものですよね?何か良からぬことが起きねば良いのですが…」


あれだけ頻繁に魔力の歪みが続出している訳だから一般庶民も魔力の歪みについて知っているのだろう。だがさすがにこの魔力の歪みの暴走の果てに何があるのか…そこまではまだ危機感はないようだ。

恐らく私達が頑張って抑えているからそこまでに深刻な状況になっているとは思っていないようだ。



だが私はこの壁画を見た時…邪神が降臨するんじゃないかという恐ろしさにかられた。

クリス様も同じ考えなのだろう。顔が青ざめたままで汗まで流れていた。決してこの場所が暑い訳ではない。



一通り壁画を見て満足した私達は城に向かって歩いていた。お忍びで外出してるので馬車ではなく徒歩だ。


「今回リィーが気分転換にと誘ってくれたことで思わぬ収穫があった」

クリス様はあれから難しい顔をしている。

それもそうだ…もしかしたら今回の魔力の歪みが邪神の復活の予兆だとしたら…。


「そもそも邪神というものはなんなのでしょう」

悪い魔王的ポジなのは分かるが、何故いきなり邪神の話になるのかがよく分からない。

その昔の英雄とやらが倒したんじゃないのか?


「正確には封印したらしい。僕も王族に伝わる話くらいしか分からないが、あの神父の言うことはほぼ当たっている。僕達王族の先祖がその英雄なんだけども、完全に倒すには少し力が足りなくてかろうじて封印に成功したって話だ。その封印が解けつつあっての魔力の歪みなんだろうか…そこら辺は分からないけども、あまり良い状況ではなさそうだ。」


ふむう…封印か…完全に倒したわけじゃないのなら邪神の出現も不思議ではない…か…。

それにしても邪神が復活した時この時代の人間達でその邪神の対処ができるのだろうか…。



私の暗い顔を見てクリス様がフッと笑いかける。

「安心して?リィーのことは僕が守るから」

そう言って抱きしめてきた。


「無理はしないでください…私もクリス様をお守りできるように頑張ります」

私が抱きしめ返せばクリス様が「リィーも無理しないでね」と額にキスをしてしばらく道の真ん中で抱きしめ合っていた。

まだ街のはずれだから恥ずかしくない!てか久々のクリス様とのゆっくりした時間が取れてとても嬉しい。







~~~~~~~~~

昼間に来たような丘の上に私はいた。

ただ先ほど来た丘と違うのは色んな花々が咲いていることと近くに小さな川が流れていること。


丘の上から少し下ったとこに小さな教会があったように、この花が咲き乱れた丘の少し下の方には可愛らしいお家があった。



白を基調としたお家で家を囲むように花壇がありこれまた色んな花が咲いていた。


白い柵に囲まれたその小さな可愛らしいお家は、昔私が1人で住むならこんな家がいいなぁと憧れを抱いていたそのまんまのお家。



丘を下りその家の近くまで行くとちょうどこげ茶色の玄関のドアが開き、中から美しい女性が出てきた。


腰のあたりまである緩くウェーブのかかったプラチナブロンドの髪は爽やかに吹き渡る風で穏やかに靡いて、淡い青と緑のオッドアイと人形の様な整った顔立ちは神秘さがある女性だった。



その女性は花壇に水をやり、一通り花の世話をすると顔を上げた。

その時私と目があった。


彼女はにこりと笑い「ようこそ、どうぞこちらへ」と可愛らしい家の中へ誘った。私がここにいることに何も驚いてはいないようで、むしろ私がここにこうしていることが当たり前の様な雰囲気を漂わせていた。




家の中は北欧のカントリー風な雰囲気の家でこれまた私が憧れていた内装のお家だった。


1人その憧れが詰まった家に感動していると美人さんがふふっと笑って「お茶が入ったのでどうぞ」とテーブルの上にいつの間にかお茶とお菓子が出されていた。


私は美人さんの向かいの席につきお茶を一口ご馳走になる……美味しい。


「あの、ここは?」

お家に感動してばかりじゃ話は進まないからまずは一番最初に思った疑問を投げかけた。


「ここは神の世界…貴女が住んでる世界とはまた別の世界」

すごいぶっ飛んだことを言われているが私は納得した。


「なるほど…今ので分かりました…貴女は…






光の女神様ですね」

私の言葉に目の前の美しい女性ーーー光の女神様は目を見開いた。


「貴女は私の正体がわかっていたのですか」

「えぇ…といっても教会の裏手にある壁画を見なければ、あなたのこともここが別世界だということも気付かなかったでしょうが…」

そう言いながら再びお茶を口にする。



「それで…私は何故ここに呼ばれたのですか?」


「貴女にはちょっとした昔話に付き合って頂きたくこちらに呼ばせていただきました…。貴女は気づいているのでしょう?これから起こることを…」


光の女神がどこか悲しそうな表情で俯いた。





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