教会
一通りクリス様の私に対する愛情表現を終えると、座って先ほど買ってきたサンドイッチやらホットドッグやらを2人で食べた。
サンドイッチという庶民の食べ物に慣れないせいか、クリス様の頬にサンドイッチの具がついていたので、それをすくって食べるとクリス様が顔を真っ赤にしていた。
先ほどの仕返しだ、ふん。
お腹がいっぱいになり私の膝枕という強制イベントでクリス様が寝転がりすうすうと寝息を立てている。
やっぱり疲れてたんだなぁ…
キラキラと輝く金色の髪を優しく撫でると穏やかな表情で眠っていた。
寝顔だと少し幼く見えて可愛らしいということもその時知った。
久々にこんな穏やかな時間を過ごした。学園生活も早くも懐かしく感じていた。
30分ほどでクリス様が起き、まだ時間に余裕あったので先ほど話していた小さな教会に立ち寄ることにした。
重い扉を開けばステンドグラスは美しくろうそくの光が優しく辺りを照らし、古い長椅子が何脚か設置されていた。
床はギイギイと音を立ててこの教会の古さを物語っている。
「おや、お祈りですかな?」
声のした方を向けば優しそうな神父さんが立っていた。
おじいちゃん神父さんで穏やかそうな雰囲気がある。
「いえ、偶然この近くを通りかかったもので立ち寄らせていただきました」
クリス様がおじいちゃん神父さんに対応してくれて神父さんも「おお、そうでしたか。ごゆっくりしていってください」とお辞儀をしてその場を離れようとした。
「あっちょっと待ってください」
私はおじいちゃん神父さんを呼び止めた。
「この教会の裏手に洞窟の様なものが見えたんですけど、あそこはなんですか?」
そう、ここの教会に入ろうとした時、裏手側に洞窟の様なものがあって何となくあそこはなんなのか気になっていた。
「あぁ、あそこには昔昔…太古の時代にあったと言われる伝説を後世に語り継ごうと残された壁画があります」
「伝説?」
「えぇ、遥か昔に邪神と呼ばれる存在が世の中を支配していた所謂暗黒時代なるものがあったらしいのです。その暗黒時代を終焉に迎えさせた時の話が壁画のモチーフとされると言われております。なにぶんその伝説も時代の流れで所説あったりその話自体風化しつつあったりで、私含め現在の人間でその伝説をきちんと知っている人間はいないのです。歴史学者ですらただのおとぎ話と割り切っている人がほとんどで…」
「私…その壁画見たいです、見せてもらっていいですか?」
「リィー?」
何故かは知らないけれど神父さんの話を聞いて壁画を見たくなった。
「あと知る限りで良いので、神父さんの解説も交えて見せてもらっていいですか?」
「えぇ、それは構いませんが…あくまで私の話も真実かは分からないので話半分に聞いてもらえると…」
「分かりました、それで良いです!お願いします」
「勤勉なお嬢さんだ」と微笑みながら教会を出ようとする神父さんに私達もついていった。
「リィーはどうして壁画が気になったんだい?」
「私は元々歴史が好きですから…あと壁画として残されてる以上ただのおとぎ話には思えなくて」
クリス様は不思議そうに目を丸くさせ、私がそう答えると「確かに見る価値はあるね」とクリス様も興味を示したようだった。
洞窟の中神父さんの後ろを歩き、しばらく歩くと空間がひらけた場所に着いた。
「わぁ…」
思わず感嘆の声が出る。
それもそのはず壁画の大きいこと…2階建ての建物と同じくらいの高さの壁画でとても大きく、壁画の上の方は見上げなければ見ることが出来ない。
「これは…すごいな…」
クリス様も驚いているようだ。
壁画は全部で3つあるらしく、ここでよく壁画を見てみようと思い入り口から見て左側…一番左側の壁画を見た。
大きな黒い影の様なものが縦長に伸びている。足元にはたくさんの黒い渦がある。
「この黒い影の様なものが邪神と言われています。そしてこの壁画が描かれている時代が暗黒時代です」
神父さんが私の隣に立って説明してくれた。
次に真ん中の壁画を見た。
がっしりした黒髪の影をまとっている様な男性と光を放った様なプラチナブロンドのウェーブがかった髪の長い女性の周りに4つの玉の様なものが浮かんでいるような絵が描かれていた。
その4つの玉は赤、青、黄色、緑とカラフルだった。
「この男性女性は神、女神だと言われています。正確には闇の神と光の女神だと言われています。そして4つの光の玉は4属性の精霊王であると…」
最後に一番右側の壁画を見た。
1人の男性が描かれていて、その周りには6つの玉が浮いているようだった。
先ほどの真ん中の壁画の玉に2つプラスされているような絵だった。増えた色は…白と黒か…
その男性が一番左側の壁画の大きな縦長の影を剣で切っているような絵だった。
「この壁画の話が実は世間で一番知られているかもしれません。この男性は光の女神、闇の神それから4人の精霊王の力を手に入れ邪神に打ち勝ち英雄となったのです。この英雄の子孫が王族の皆様だと言われています」
「その話なら…少し聞いたことがあるかもしれん…だから王族の持っている魔力の属性が全属性だと言われているらしい…」
クリス様が壁画から目を離し考え事をまとめるように喋りだした。
「遥か昔、神々の加護を得て世界を救った英雄の子孫が国を造り、それがバロラニア王国だと言われている」
「たしか…その英雄の話はおとぎ話として絵本にもなっていましたね。興味があれば読んでみるといいかもしれません」
神父さんはクリス様が王太子だと気づいてないようで絵本を読むように勧めてきた。
まぁ…王太子ってバレてないことに関しては安心したが、相手の先祖を題材にしたおとぎ話を勧めるという奇妙な状況に内心苦笑いしていた。




