ヒロイン2
「えぇ…と、おそらく皆さん誤解されてると…」
私は遠慮がちに声をあげたが興奮冷めやらぬ令嬢達は聞く耳を持たない。
「そんなことありませんわ!!!」
どこぞの伯爵の子息の落とし物をわざとらしく拾ってさしあげたとか、どこぞの子爵の子息が授業でわからなかったところをマリアに質問して教えていたとか…等々マリアが尻軽だと言われる理由を次々とあげていった。
……ただの良い人やんけ!!!
って思わずツッコミたくなった。
「ちなみにそのような親切な行為をマリアさんが行ったのは男性に対してだけでしたか?」
私はあくまで冷静にリーダー格の令嬢に尋ねた。
マリアからはマリアからで後で話を聞くとして、とりあえずこの集団からも話を聞いた方が公平だと思い質問をした。
私が平等に考えてくれると信頼してか、マリアは静かに私達の質疑応答をしてる様を見守っていた。
「い、いえ…それは…」
私の問いに答えにくそうにする令嬢。…てことは女子生徒にも同じ様に親切なのね。
「マリアさんは平民の立場で貴族の方と接するというのはとても勇気のいる行動だと思いませんか?その上で親切な対応をするというのは本当に勇気のいる行動だと思います」
身分云々取っ払っても自分が良かれと思ってやっていても相手にそれが『善意』として伝わるとは限らない。良いことをするって勇気のいる行動なのだ。
ましてや相手が身分の上な貴族相手だと一体どれだけ勇気のいる行動だったか…。
「さぁ、分かったら寮の方へお帰りなさい」
話は終わりだ早く帰れというオーラを醸し出したら令嬢達はそそくさと帰っていった。
「ふう」とため息をつきマリアの方へ振り返ったら、マリアがキラキラした目でこちらを見ていた。
「グリアベル様、ありがとうございます」
「リーナスでいいわよ」
頭を下げたマリアの頭を上げさせる。
「まさかリーナス様から助けていただけるとは…とても嬉しかったです」
「ちょうどここの廊下通ったら声が聞こえてきたのよ。怪我とかなさそうで良かったわ。とりあえずマリアさんも寮にお帰りになるでしょう?送っていきますわ」
「マリアでいいですよ!あっ…でもリーナス様も用事があるのでしょう?まだ明るいですし私1人でも大丈夫ですよ?」
「あっ…」
やばい、ここでのひと悶着で生徒会の存在忘れてたわ。
そう思ってたら教室に入ってくる人の気配。
「リィー、どうやら問題があったようだな」
「リーナス、心配したぞ」
「リーナスさま!!ようやく見つけましたわ!!」
「見つかって良かったです」
「人騒がせな奴だな」
クリス様、ルーファス、パメラ、ヘレナ、ロビンが続々と教室に入ってきた。
一向に生徒会室に現れない私を心配してみんなで探しててくれたらしい。
「皆さん、ご心配おかけして申し訳ありません。この通り私もマリアも無事ですわ!」
両手でグッとガッツポーズすればみんな安心したように微笑む。
それからヘレナとパメラ、ロビンにマリアと一緒に帰ることをお願いして、私とクリス様、ルーファスは生徒会室に向かうことにした。マリアは私に向かってお辞儀をし終始笑顔で私を見つめていた。
「……またリィーの信者が増えた…」
「え?何か言いました?」
「いや、なんでも」
隣でクリス様が何か呟いてたが、よく聞き取れなかった。
は!!そういえば今ふと思い出したのだけど、先ほどはたしかマリアとクリス様の出会いのシーンなのでは?
最早今となってはうっすらとした記憶しかないけど、先ほどのシチュエーションでクリス様が助けに入り、生徒会があるからってことでそこまでの絡みはなかったのよね。
クリス様の出番を減らしたことに内心謝っているとクリス様が「でもリィーが無事で良かったよ」と蕩けそうな笑顔で腰を抱いてきた。ちょ…ここは校舎。
逃げようとしてもがっちりホールドされてそのまま歩くことに。
「おいバカップル、俺の存在を忘れてないだろうな?」
ルーファスが呆れ半分イラつき半分のような表情でこちらを睨んだ。
「これから共に生徒会の仕事という大仕事をしてくれる仲間を忘れるわけないじゃないか」
爽やかな笑顔で答えるクリス様に今度は呆れ100%でため息をつくルーファス。
「ルーファス様も心配してくださってありがとうございます。ご迷惑おかけしました」
「迷惑じゃない…心配はしたが、見つかって良かった」
そう言って優しく私の頭を撫でるルーファス。
「ほんとならその手を払い除けるとこだが、今回はお前も頑張って探してくれたから特別に許そう」
クリス様が面白くなさそうに呟いた。
クリス様ってそんなキャラだっけ?ルーファスはやっぱ古くからの親友だからルーファスに見せる顔って他の友人に対する顔と違うのかしら?
クリス様とルーファスの様子を交互に見てるうちに生徒会室に着いていた。




