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もう会えない愛しき人

ロビンにそんなことを言われれば嬉しいやら照れるやらでなんとも言えない気持ちになる。


前世干物女と化し恋愛関係に疎いこととかも知っているからだろう。言葉に重みがある。


「そう言うお前は良い人はいないのか?」

今や私を抱きしめた形になってるクリス様はロビンに質問した。

いや人前でこの格好は恥ずかしいしバカップルみたいだ。そう思い逃げ出そうともぞもぞ動くがびくともしない。


「…俺はいたんだが…死んでしまって…」


ロビンが昔を思い出すように…しかしその傷は癒えてはいないことがわかる様な表情で俯いていた。


「それは…すまない…」

クリス様が申し訳なさそうに謝った。

「いや…いいんだ…昔の話だ」


「あっ…」

その言葉を聞いて私は前世…それも自分達が死ぬ間際のことがフラッシュバックした。





死ぬ前、共に幼馴染と居酒屋で飲んでいたあの夜。

互いの近況報告をしあってた時、ニマニマした幼馴染が何やらもったいぶっていて、一大ニュースがあるけども出し惜しみしてる様な雰囲気を醸し出していた。


私はしびれを切らし「はよ、言いなさいよ!!」とそんな幼馴染を睨むと…

「俺、結婚するんだ」

と少し照れながら頭をかいた。


なんでも職場恋愛で2年くらいの交際だったらしい。幼馴染は彼女にベタ惚れでプロポーズを受けてもらったことがほんとに嬉しそうだった。

彼女は料理が上手だとか可愛いだとか自分のゲーマーとしての趣味にも寛大だとか近況報告の後半のくだりはほぼ惚気を聞いてたような気がする。


彼を見て一番幸せな時期の1つであることが分かり、惚気に胃もたれを起こしかかってもまぁ今日は仕方ないなぁ…と思いながら話を聞いていた。

余談ではあるが今日のこの飲み会も彼女にはもちろん話しているし、オッケーももらっている。幼馴染でお互い恋愛感情がないとはいえ、男女2人で会うのは良い気がしないだろうし変な誤解をされても困るしね。




おそらくロビンはその彼女のことを言っているのだろう。

死んでしまって…というのは彼女ではなく「自分」のことで。


「俺にも婚約者がいたんだ…でももう彼女には会えない…」

生きていれば訪れた幸せ…それがあの事故で幼馴染もその彼女も奪われてしまった。

ロビンは涙を流しながら前世のことを思い出していた。



私とクリス様はベンチに隣同士に座っていたがロビンの話を聞く為ロビンの隣に座りなおして、私とクリス様でロビンを挟んでロビンを真ん中にする形になっていた。


「あの頃…一番幸せだったなぁ…」

そう言いながらロビンは泣き出した。

私もクリス様も何も言わず正面を向いていた。


こういう時人ってあんまり声かけられたくないわよね、そう思いただ黙って桜の木を眺めていた。






ロビンが顔をあげると日もすっかり沈み夜になっていた。

泣くだけ泣いたらすっきりして我にかえったのだろう。


「…悪い…こんな時間まで付き合わせてしまって」

「いや、いいよ。それは構わない。リィーのことは僕が寮まで送るから……リィー?」


私が何も言わずにいるとクリス様が立ち上がって私のところまで来た。

「リィー?大丈夫?」

心配そうに私の顔を覗き込むクリス様。きっとロビンの話を聞いて私も落ち込んでいるのだと思ったのだろう背中をさすってきた。

ロビンも心配そうに私の方を見た。

「ごめん、リーナスだってつらかったよな」

おそらく死んだことだろうが私は何も返事しない。



少しして思いきり立ち上がると2人はびっくりして私を凝視していた。



「今から音楽室にいきません?」


「「え??」」


私の思いもよらぬ発言にぽかーんとした2人だったが、先に我に返ったクリス様が焦ったように言った。

「リィー!もう夜なんだぞ?一応学園の敷地内とは言え早く寮に戻った方がいい」


「私は今すぐ音楽室に向かいたいのです。クリス様?ロビン?参りましょう?」

ここで本来の我儘キャラを発動する。


「先生に見つかったらマズいんじゃないの?」

すっかり本来の調子を取り戻したロビンも私を止める。


「ふふっお忘れ?ここにはこの国の最高権力者のクリス様もいるのよ?」


「必殺技と権力は最終手段で思いきり使え…と亡くなったおじい様が言ってた様なきがするけど気のせいかもしれないですわ」


「どっちだよ!!?」

悪女さながらにんまり微笑むとロビンがツッコミを入れる。

そんな様子を見たクリス様が苦笑いした。


「リィーって結構突拍子もないこともするんだよね。分かった、行こう」

私の手を引き校舎の方へ向かって歩くクリス様。その姿を見たロビンはため息をついて私達の後を追うのだった。







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