新たな季節の訪れの前に2
結局ルーファスがクリス様も呼んでいいと折れてセリーヌ主催のお茶会を開催することに了承した。
ただそのすぐ後にウォルハルト公爵家が忙しくなってバタバタしていたり、私が領地に行かなくてはならなくなったりで中々予定が合わなかったりで、お茶会の開催は恐らく私が領地から帰ってきてしばらくしてからだろうと考えていた。
そんなこんなでただ穏やかな時間を過ごしていただけかと言われたらそうでもなく、大なり小なり変わった出来事もあったのだ。それはそれで楽しく過ごすことはできたのだが。
1つだけ大きく印象に残った出来事があった。
それは1日の授業が終わり、生徒が寮に戻ろうとしていたりサロンにお茶を飲みに行こうとしていたり、剣の稽古や魔法の稽古をしに訓練場に向かったり、はたまたその辺でお喋りに花を咲かせていたり…と思い思いに過ごしていた時、私はヘレナと2人で教室に残りお喋りをしていた。
パメラが職員室に呼ばれていた為、パメラが帰ってくるのを待っていたのだ。
「グリアベル様?ちょっとよろしいかしら?」
私は自分を呼んだ声の方へ振り返った。
私を呼んだのは4、5人の女生徒だった。たしか真ん中に立っていたのは侯爵家の令嬢だった気がする。
私は特別仲がいいのはヘレナとパメラだが、他のクラスメイトともそれなりに仲良くしていたし、さすがに入園して何か月も経ってるわけだから全員の名前は覚えている。……ということは他クラスか…。
そう思いながら彼女達を観察モードに入っている。ヘレナは隣でオロオロしていた。
「ちょっとついてきてほしいところがあるの」
真ん中の令嬢が嫌な笑みを浮かべて私を誘う。
「わかりましたわ」
「リーナス様!お待ちになって!私も行きます」
「エルグリン様はお呼びじゃないわよ!」
ついて行くことに了解し5人の後ろを歩きだしたら、ヘレナが涙目になりながらついて来てくれようとしていた。
昔自分もいじめられて怖い思いをしているにもかかわらず、私の身を案じてついて来てくれようとする姿になんて優しい子なんだ!!と胸が温かくなった。
もはやヘレナがヒロインじゃなかろうか?という錯覚に襲われた。
「ありがとう、でも大丈夫よヘレナ。ちょっと私いってくるわね」
「リーナス様!!!」
悲痛な叫びをあげるヘレナを安心させようと優しく微笑み、言われた通り彼女達について行った。
「あなた、クリストファー様の婚約者候補だからって調子にのってない!?」
はーい、これデジャヴーー!?なこの状況。
空き教室に連れてこられて私は5人の令嬢に囲まれて睨まれております。
ほんと女性っていつの時代も恐ろしいですわね、ヘレナはよく私の嫌がらせに耐えていたよ。
…とぼんやり考え事をしているとセンターに立ってる侯爵令嬢が思いきり私の肩を押した。
「何?私のことを無視してますの?」
すごい形相で睨んでくる…こんな顔してなければ普通に綺麗な顔立ちなんだろうけど…。
「…せっかく綺麗なお顔立ちしてるのに怒った顔をしていてはもったいないと思ったまでです」
私は思ったことを素直に言った。
「ば…ばかにしてますの!!?」
侯爵の令嬢は顔を真っ赤にして怒りだした。火に油をそそいだか…?
「あのですね、私婚約者候補だからって調子にのってるかという質問ですがね、逆に私が調子に乗ってるように見えますか?」
「は!!?」
そう言葉を発すると、こいつ頭おかしいんじゃないの?っていう目で見られた。
「よく考えてもみてください。婚約者ではなく婚約者『候補』ですわよ?将来が安定してるわけでもありませんし、約束された未来でもありません。ですので他の貴族の婚約者持ちのご令嬢以上の努力をしなければならないのですよ、王太子妃になったとしてもならなかったとしても…」
「王太子の婚約者候補…実に素敵な肩書だと思われてます?そう思われてるとしたらとても浅はかな考えだと思いますわ。私からすればきちんとした婚約者のいるご令嬢の方の方が羨ましいですわ。少なくとも私よりは約束された未来があるんですもの…よほど婚約破棄などしないかぎりは…」
婚約破棄という言葉に思わず怯える一同。
もっと言ってしまえば羨ましいとも思ってないがな。前も言ったように結婚願望ないんだもの。
「この様なことをして婚約破棄等されるリスクを背負うよりは私なら慎ましく生活を送りますけどね?その点についてはいかが思います?」
ニヤッと本来の悪役令嬢のごときあくどい笑みを浮かべれば、5人全員ひいいいっと恐怖に震え逃げて行った。
「おーーほっほっほ!!私、腐っても悪役令嬢なのですわ!!そんなどこの馬の骨とも分からない三下の令嬢なんかに負けませんわよ!!」
1人になった教室でノリノリで「悪役令嬢」の続きをやっている私。
やっばい!!悪役令嬢楽しい!!ひゃっほう!!
…と浮かれていた時期が私にもありました…。




