パーティーの続きをやりましょう
「しっかし、まさか魔力の歪みが現れるとは思いませんでしたわ。」
このなんとも言えない空気をどうにかしたくて話題を変えてみた。
「魔力の歪み…ですか?」
セリーヌは首を傾げる。
「魔力の歪みというのは空気中に存在している魔力のバランスが保てなくなってるときに起こる現象なんだ」
ルーファスはよく分かっていないセリーヌに説明する。
「えぇ…そうなんです。もっと詳しく言えば大気中に存在しているのは魔力…というより魔力の源の『エネルギー』なんですけど、4属性(火、水、風、土)と言われる魔力がそれぞれエネルギーとして存在してるんです。」
私の言葉にルーファスとセリーヌが耳を傾ける。
「普通なら多少属性のバランスが乱れてもなんの影響もありませんし、例えば海なら水の属性がどうしても多いし森なら土や風の属性が多い…とこの様に普通の自然界でもどうしても属性が偏ってしまうのです。…ですがあのような魔力の歪みで魔物の様なものが生まれるのは余程エネルギーが偏っていたんじゃないかしら…?」
「うちの庭に何か問題があるのかしら…?」
セリーヌの目が不安そうに揺れる。
「いえ、最近のレポートを見るとその魔力の歪みが近年多くなってるらしいのです…まだ回数自体は少ないのですが、昔から比べると色んなところで歪みが目撃されるようになったらしいですが…」
そう言いながら考えてみるが、歪みが近年増えた肝心な理由が分からないため、話はここまでになってしまった。
「……リーナス、君はすごいな…」
「…へっ…?」
「リーナスと喋っていると王宮の学者と話してるようだ」
確かに今喋ったことは学園で習うレベルの話ではなかった。が、魔法に興味を持っていた私は色んな本を読み漁った結果それなりの知識を得ることが出来たのだと思う。
少なくとも前世の読書量と比べたら遥かに今世のが多いし、この世界にはスマホやゲーム機など一切ないわけだから自然と読書量も増えるってもんだ。
…ん?てか今ルーファス、私を名前呼びにしてなかった?さっきまで「グリアベル嬢」だったのに。
てか笑顔で私の頭撫でてくるんですけど!?何こわいんだけど…。
「リーナスお姉さま!!物知りでほんと素晴らしいですわ!」
セリーヌはセリーヌで私の手を両手で掴みながら目を輝かせている。
え!?お姉さま呼ばわり!?いつからそんなに打ち解けたの!!?
兄妹揃って絶対零度の視線を投げかけていたのに、今や善望の眼差しを向けてくる。
明日槍降るんじゃない?え?デジャヴ?
頭の整理が追い付かなくて白目を向きかけていた私は、ルーファスが熱の籠った目でこちらを見つめていたこともセリーヌがルーファスに「クリストファー殿下に負けないでください!お兄様!」なんてこそっとルーファスに囁いたことも全く気付かなかった……。
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夜のパーティーでは真っ赤なドレスに身を包んだパメラに会った。
「リーナス様!お茶会ではリーナス様をお見掛けできなかったので休まれたのかと思いましたわ!」
「まさか!私は一応グリアベル家代表として参られましたの。ただお茶会では少し気分が優れなくて、ウォルハルト様のご厚意でお部屋をお借りしてましたの」
…ということにしといた。
まさか敷地に魔力の歪みが発生して色々とてんてこ舞いだったなんて言えないしね。
ルーファスとセリーヌは他の招待客の応対をしているようだった。
そのことに何故かホッとした。
ん…?あの美しい金髪は……げっ
クリス様がルーファスとセリーヌの方へ向かって歩いていた。
私やパメラに背を向ける形でクリス様は立っているので、まだ私がいるということはバレていないだろう。
この前の中庭の一件以来、私の中のクリス様に対する好感度は決して下がってるわけではないが少し苦手意識が出てきたような気がする。
無表情で無視されることはさすがに堪えてたが、あんなにグイグイ来られても?いきなりどう対応していいか分からないのである。前世の恋愛経験の少なさが警戒心を生んでいた。
…あれ?てことは好感度下がってるというのか?
パメラやヘレナは学園生活の中で明らかにクリス様と距離を取りたそうな私になんとなく感づいたのか、以前のようにベタベタいかなくなってもなんとなく察してくれてる様だった。
中庭の一件以来何度かクリス様にカフェテリアや廊下で声をかけられた。
最初はクリス様から接してきたことや私がクリス様呼びしてたことに2人は興奮していたが、当の本人である私はあんまり嬉しそうではなかったことで空気を読んでくれたらしい。
今回もパメラはクリス様を見かけた瞬間気配を消した私に何も言わなかった。
それどころか一緒に気配を消して、自分のせいで私が見つかったってことにならないように気を使ってくれていた。
やっぱりパメラは根はいい子だっていう勘は当たってたわね。
「リィー」
壁の花と化していた私をこんな風に呼ぶのは1人しかいない。
内心ため息をつきながら、声のした方へ振り返った。




