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アンモビウムの白い花が並ぶ花壇が見えていた。背中には鋭い痛みが走って、チカチカと眩しいような暗いような不思議な感覚が交互に襲い、アンモビウムはぼやけて溶けていく。
体が温かい気がした。誰かに支えられているという事しかわからない。それ以外、感じるのは純粋な恐怖だった。
すがりついた誰かは、いつもどこか寂しげな人だった。
寂しそうだと気が付いたのは、いつからだろうか。いつの間にかアンブロシアーナは、その寂しそうな背中を追いかけていた。
どうして忘れてしまったのだろうか。
とても大切な事なのに。
布越しに感じる小瓶の中身をアンブロシアーナは思い出す。
忘れてはいけない。思い出さなければならない。
――痛い
背中に突き立てられたダガーに意識と理性が霞む。
――どうしてこんな事をするの?
憎い、ただ憎かった。初めて抱いた憎悪が、恐怖ごとアンブロシアーナの意識をさらっていく。
忘れたくなってしまったのはこの時だ。
アンブロシアーナは、この痛みも苦しみも忘れたかった。
痛みと血と、幸せだった時間も、あの誓いも全て遠くに置いてきてしまっていた。
――思い出して。彼がまたひとりぼっちになってしまう




