ねぐら
まどろみに身を任せ、鳥を眺めるのも悪くない。
ここから歩み寄れないけど、ばれないように。
せっかくの静けさを台無しにしないように。
見えなくならないように、羽ばたかせない。
あの美しい翼を見たかった。
あの愛らしい曲線に触りたかった。
でも、近寄らない。
気づかせない。
舞い上がりそうな脈拍は、萎れた羽に隠して。
だらしない格好はそのままに、冗談じみた志を暖めて。
あの汚ならしい嘴に罰を与えたかった。
あの誇らしい足に罰を与えられたかった。
でも、気づいていない。
気づかせない。
漏れ出しそうな弱音は、破れた翼で覆って。
羽ばたかないように、飛び去らないように。
近寄らないで、身を潜めて、探さないで。
穴が開いた大空にむしり取られた羽が舞い散る。
金切り声の合図で、急転直下の塒の終わり。
追いつけないのは重々承知。
むしり取られた羽で飛べ!
みすぼらしい柔肌の鳥は、蹴落とされた塒を目指し急降下する。
まだ気づいていない。
まだ気づかせない!
暴かれないように、むしり取られた羽で飛べ!