僕は夢を見た(8)
あれから何度夢を見ただろう。
今回も同じように城門の前に立つ自分。
求人板を見て出来そうな仕事を見つけてはこなしてきた。
溝さらい、庭掃除、畑仕事の手伝い等々
仕事の後は決まってリンゴを買って食べる。
そのおかげかリズとその親父さんとも仲良くなったし、手持ちのお金は5万Gほどになっていた。
夢の中なので別に働かなくてもいいのだが、何故か働きたい気分になるのだ。
真面目すぎる自分が少し嫌になる。
今日も求人板に向かって歩みを進める。
八百屋の前でリズが立っていた。
僕に気づいたのか小走りでこちらにやってきた。
リズ:「兄ちゃんを探してたんだ」
上目使いでにっこりと笑いながらそう言ったリズを正直可愛いと思った。
夢の中だから抱き締めても問題ないよな?
と、悪魔の囁きが脳裏をよぎる。
よしひろう:「(ダメだ、ダメだ、ダメだ)」
頭を左右に振り必死に抵抗する自分。
深呼吸をしてなんとかこの誘惑を乗り切った。
よしひろう:「どうしたの?」
リズ:「いい話があるんだ!付いてきてよ」
いい話?なんだろう?
リズの可愛さに負けて了承してしまう僕。
よしひろう:「ほぉ!行く行く。付いていく!」
するとリズが僕の手を握ってきた。
僕の手を引きながら歩くリズ。
女性と手を繋いだのは何年ぶりだろうか。
暖かくて柔らかくて心地よい感覚…
着いた場所は求人板の前だった。
リズ:「兄ちゃん、これ見なよ!」
リズの指差す依頼書を読んで見た。
-- 求む。ムカデ駆除 --
家の裏山にムカデが住み着いて困っています。
駆除をお願いします。
謝礼金額は 7万G
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よしひろう:「ムカデ駆除!?」
よしひろう:「ムカデってあの足がいっぱいはえてるヤツか?」
リズ:「そうそう、それ(笑)」
よしひろう:「しかも7万!」
よしひろう:「7万も貰えるってことは、それだけ無数にいるって事じゃじゃいか!?」
リズ:「この依頼、二人で組んでやらないか?」
よしひろう:「ムカデくらいお前一人でなんとかできるだろ?」
リズ:「ウチ、虫嫌いだし。ムカデなんか見たら気絶するわ!」
リズ:「ウジャウジャいたらどーすんだよ!」
よしひろう:「じゃ、お前何すんだよ(苦笑)」
リズ:「依頼見つけてやったんだし。頼むよう。お金が必要なんだよぅ」
またあの上目使いで今度は懇願してきやがった。
こ、これは…断れん…抗えん
女の子の上目使いにはとことん弱い僕。
今まで女性と全く縁のなかった僕はこういう事には防御力ゼロといても過言ではない。
よしひろう:「い、いいよ。や、やろう!
」
鼻の下が少し延びているのうな気がした。
依頼書を求人板から剥がし、受け付けに持っていく。
受付嬢:「はい。受け付け完了です。」
受付嬢:「場所はですね、街から出て北東の道へ進むと山の麓に数件の家がありまして」
受付嬢:「向かって右端の家です。詳しくは家主のトメさんに聞いてください。」
よしひろう:「わかりました。行ってみます。」
依頼の受け付け完了。
よしひろう:「リズ、依頼を受けてきたぞ」
リズ:「よっしゃー!行ってみよー!」
あー…でも、なんだか意識が遠くなってきた…
よしりろう:「リズ、ちょっと家で待っててくれ。準備ができたら呼びにいくからさ。」
不思議そうな顔をしながら頷くリズ。
リズ:「じゃ、待ってるからなー!」
そう言って小走りで家に戻っていくリズの姿をみながら手を振って見送る僕。
どんどん意識が遠くなる。
目が覚めた。
女の子の手を握った夢を見たせいか幸福感に包まれていた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
今日も仕事かぁ。
ムカデ、俺も苦手なんだよなぁ。




