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夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
ラクサーシャの地下迷宮
57/58

僕は夢を見た(55) 歴然たる力の差

女の声:「でも、二つ間違いがあるので教えて差し上げますわ。」


そう言って現れたのは見た目が14、5歳に見える少女だった。

腰まである銀色の長い髪。

透き通るような白い肌。

薄い透けて見える白いドレスを身に纏う。

瞳の色は真っ赤。

その美しい容姿に思わず見とれてしまう。


少女:「私の名は「レギオナ・メルクリウス」。」

レギオナ:「名乗ったところで生きて帰れませんのに。可笑しな話だわ。」


そう言ってクスリと笑うレギオナ。


よしひろう:「二つの間違いって?」

レギオナ:「まず一つ目。」

レギオナ:「先程のはゾンビではありませんわ。」

レギオナ:「私の忠実な下僕、グールよ。」


銀狼達の顔色が変わった。

体を震わせ始めるジェレミー。


レギオナ:「そして二つ目。」

レギオナ:「ここは地下40階ではなくてよ。」

レギオナ:「ここは地下92階。」

ジェレミー:「92階だと!?」

レギオナ:「アハハハハハ」


レギオナの高笑いが広間にこだまする。

ジェレミーが慌てたように僕の雑嚢を勝手にまさぐる。


よしひろう:「勝手に触んな!」

ジェレミー:「うるせえ!!!!」


僕の雑嚢からリターンの巻物を勝手に取りだし「リターン」を唱えようとするジェレミー。


ジェレミー:「リ…」


次の瞬間、レギオナが一瞬でジェレミーの前に移動し、ジェレミーの口の中に拳を突っ込んでいた。

前歯が粉砕され口から血を流すジェレミー。


よしひろう:「い、いつの間に!?」


ジェレミーの持つ赤い魔方陣の巻物を取り上げ、掌の上で燃やすレギオナ。


レギオナ:「これでもう逃げられないわ(笑)」


恐怖に歪むジェレミーの顔。

そのジェレミーの顔を自分の顔の近くまで引き寄せ、首筋にかぶりつく。

ジェレミーの体がみるみる干からびていく。


ジェレミー:「んーーーーー!」


口を塞がれている為、声にならない声を上げ、白目になるジェレミー。

血液を吸われているのだ。

血液を全て奪われミイラのようになるジェレミー。

その様子を見ていた銀狼の2人がその場から走って逃げ出した。


レギオナ:「逃げたところで上の階にはライカンスロープが待ち構えているのにねぇ…」

レギオナ:「あら?あなた方は逃げないのね?」

よしひろう:「なんでリターンの魔方陣が92階にあったんだ?」

レギオナ:「落ちてたから拾ったまでのこと。」

レギオナ:「ほんの余興よ。たまに上層に上がってはこうやって遊んでるの。」

レギオナ:「あなた達も私を楽しませてちょうだい。」

レギオナ:「私の下僕を皆殺しにしたのですもの。」

レギオナ:「新しい下僕が必要よね。」


剣を構え直し、エルマを庇う位置に立つ僕。

意識を集中し、いつ攻撃されてもいいように常にスルーの状態を保つ。

レギオナが瞬間的に僕の目の前に現れた。

ジェレミー同様に拳が僕の顔目掛けて放たれていたが、スルーのおかげですり抜ける事ができた。

拳を避け剣を突き刺そうとした瞬間、レギオナの持つダガーがそれを阻む。


「ガキン!」

レギオナ:「あなた、おかしな術を使うのね。」


剣を滑らせレギオナの喉を狙うがそれもダガーで簡単に阻まれた。


「ガキン!」


剣を構え直し、袈裟斬りをしかけるも、それもアッサリとダガーで阻まれる。


「ガキャ!」


僕の持つ剣がボロボロと崩れた。


よしひろう:「何!?何が起きたんだ!?」

レギオナ:「もう終わり?」


瞬間、レギオナのダガーが僕の腹に向けて突き立てられた。


よしひろう:「ゴフッ!」


あまりの痛さにその場に倒れ込む僕。

鎖帷子のおかげで打撲程度で済んだのだろう。

いつもならここで目が覚めるところなのだが、今回は違った。

それに、もしここで僕が目を覚ましてしまったら、エルマを確実に死なせてしまう。

目覚める訳にはいかない。

踏ん張れ俺!


レギオナ:「あら?鎖帷子?楽に死ねたものを。」


この隙を狙ってエルマがファイヤーボールを放つ。


「ドゴォォォォーーー!」


レギオナを中心に火柱が上がる。

しかし、レギオナは微動だにしない。

レギオナは火柱が収まるまで平然としていた。


エルマ:「効かない!?ならば!!」

エルマ:「我が息吹よ集うて突発たる一撃とならん。」

エルマ:「アロー!」


瞬時に避けるレギオナ。

厳しい表情になるエルマ。


エルマ:「我が力の源たるマナよ、連なりしその力は見敵必殺たる光の一撃とならん。」

エルマ:「マジックアロー!!」


エルマの杖から6本の光の矢が放物線を描くようにレギオナ目掛けて放たれた。

再び瞬時に移動して避けるレギオナ。

その避けた先に向け直角に曲がって光の矢が突き進みレギオナに命中した。

命中した箇所が抉れ、部分的に骨まで見えるくらいのダメージを与えた。

が、すぐに組織が再生され、元の状態に戻っていく。

その頃、やっとの思いで立ち上がる僕。


エルマ:「これでもダメなの!?」


エルマの表情が恐怖に変わっていく。

しかし、それも一瞬の事で、すぐにいつもの強い眼差しに戻った。


エルマ:「ヒロ!離れてて!!」

よしひろう:「何をする気だ!?」

エルマ:「スーパーノヴァの異名が伊達じゃないところを見せてあげる!」


エルマが再び呪文の詠唱を始めた。


エルマ:「天空を焦がす陽の光。夜を拭いしその力をもって眼前を照らす火輪とならん。」

エルマ:「サンライト!!!」


エルマの杖から眩い光がほとばしる。

目を開けていられないくらいの強烈な光と身を焦がすような熱。

まるで目の前に太陽があるかのようだ。

その光と熱をもろともせずにエルマに近づいていくレギオナ。


レギオナ:「そのような造られた日の光など効かなくてよ…」

エルマ:「うおぉぉぉ!」


雄叫びを上げるエルマ。

エルマの魔法がより一層強くなっていく。

レギオナの体がボロボロと崩れさりながらも再生されていく。

エルマの魔法の威力とレギオナの再生力とが拮抗していた。

レギオナの顔からは肉が剥ぎ取られ、骨と眼球のみとなっていく。


レギオナ:「その魔力が尽きた時があなたの最後よ。」


そう言って右手でエルマの首を掴む。

レギオナから少し離れていた僕の服が熱で焼けていくのが感覚で分かった。

目を塞ぐ腕が、足が、体全体がジリジリと焼かれていく。

あまりの眩しさで直視できない。

あまりの熱さで近づけない。

何か打つ手はないのか必死で考える。

このままではエルマの魔力が尽きるのも時間の問題だろう。


よしひろう:「何かないのか?!くそっ!!」


一瞬、脳裏に青空を飛ぶ僕とエルマの姿がが横切った。


よしひろう:「そうか!日の光か!!」

よしひろう:「飛翔!」


レギオナの影目掛けて飛翔する。

光と熱をまともに受けながらも、レギオナの腹部を後ろから左手で抱き締める。

そして、右手をエルマに差し出す。

熱で焦げていく僕の右手。


よしひろう:「エルマァァァ!俺の手を掴めぇぇぇ!!」

エルマ:「ヒロ!」


エルマの左手が僕の右手に触れた瞬間。


よしひろう:「リターン!」


籠手に隠していたリターンの巻物を発動させる僕。

まさかこんな所で予備のリターンが役に立つとは…

瞬間、地表へと帰還した僕とエルマ、そしてレギオナ。


本物の日の光を浴びて仰け反り絶叫するレギオナ。


レギオナ:「ギャァァァァァーーー!」


地下迷宮入り口付近が騒然となる。

その恐ろしい断末魔にある者は走って逃げ、ある者は恐怖で凍りついた。

レギオナは全身から煙を吹き出し、灰と化していった。

そしてその体は完全に崩れ去った。

耐えきれずに血反吐を吐き倒れ込む僕。

エルマが駆け寄ってきて僕に回復のポーションを飲ませてくれた。

両手の火傷と腹部の痛みがみるみる回復していく。

エルマも回復のポーションを飲み、左手の火傷を回復させた。

そして…

その場に残されたのは拳大の深紅の魔封石とレギオナの持っていたダガーだった。

何が起きたのかと人集りができる。

深紅の魔封石を大切そうに抱き抱えるエルマ。

僕はレギオナの持っていたダガーを手に入れた。

無事に地上に戻れた安心感からか泣き崩れるエルマ。

僕は大の字になって日の光に感謝した。

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