僕は夢を見た(53) 一つ目の巨人
音に驚き扉の近くに駆け寄る僕とエルマ。
扉をソーッと開けて見る。
50mほど離れた吹き抜けの中心部にそいつはいた。
身の丈5mほどもある緑色をした一つ目の巨人。
太くがっしりした四肢。
エルマ:「サイクロプス!」
よしひろう:「!?」
あまりの巨大さに足がすくむ。
扉を閉めて作戦会議をする。
よしひろう:「アレには魔法は効くのか?」
エルマ:「知らないわよ、そんなの。」
よしひろう:「だろうと思った。」
エルマ:「やってダメなら効かないってことでしょ?」
よしひろう:「いっそ撤退するという案もあるが?」
エルマ:「魔力は十分残ってるわよ?」
よしひろう:「それはヤル気十分と受け取っていいんだな?」
エルマが目を細めてニヤリと笑う。
よしひろう:「それじゃあ、僕がアイツを引き付けておくから、魔法で一発決めてくれ。」
エルマ:「了解。」
扉を開け、サイクロプス目掛けて飛翔する。
相手に気付かれる前に距離を縮めるのだ。
が、飛翔した瞬間に目が合ってしまった。
よしひろう:「ヤバイ!?」
サイクロプスが手にする大きなこん棒が僕目掛けて打ち払われた。
籠手でガードしようにもこん棒が相手では役に立たなかった。
螺旋階段を支える円柱に吹き飛ばされ、背中を強打する僕。
そして地面に墜落した。
よしひろう:「グハァッ!」
口の中が血のような味のもので充満する。
よしひろう:「いつもならこの辺りで目が覚めるのにな…」
エルマが呪文の詠唱を終え、ファイヤーボールを放つ。
「ドゴォォォーーン!」
サイクロプスを包む炎の柱。
焼けて消し炭になっていく…
かと思いきや、全く効果が無い!
エルマ:「嘘!?」
サイクロプスはエルマの方へ向かって歩き始めた。
軽いパニック状態になるエルマ。
僕はなんとか踏ん張って立ち上がった。
サイクロプスがエルマ目掛けてこん棒を振り下ろそうとしている。
よしひろう:「くそっ!」
なんとかしなければいけないという思いばかりが募る。
再び飛翔し、サイクロプスの背後に回る。
右のクナイをサイクロプスの首に巻き付けるように放つ。
次に左のクナイをサイクロプスの右手に巻き付けるように放つ。
そして全力でサイクロプスの後方目掛けて飛行した。
海老反りになり仰向けに倒れ込むサイクロプス。
サイクロプスに巻き付いたワイヤーに引っ張られ僕も地面に叩きつけられる。
よしひろう:「痛っ!」
サイクロプスがワイヤーを外そうともがく度に僕の体が引きずられる。
僕はサイクロプスより先に立ち上がり、止めを刺すために走った。
よしひろう:「狙うのは目だ!」
目に剣を突き刺そうとした瞬間、サイクロプスが左手で目を庇う。
瞬間的な判断で目の先の喉を目掛けて剣を突き立てた。
よしひろう:「閃!」
声を発することなく光の粒子と化すサイクロプス。
「コロン」
という音と供に人が扱うサイズの棒が現れ、濃い紫色で拳大の魔封石が跡に残された。
よしひろう:「勝った……」
呆然とする僕とエルマ。
エルマ:「やったわね!初のドロップアイテムよ!!」
と言って人間用のこん棒を僕に見せつける。
そして大切そうに濃い紫色の魔封石を取り上げた。
エルマ:「お手柄だわ。ありがとう。」
そう言って僕の事を抱き締めてくれた。
よしひろう:「(これでもう少し胸が大蹴きけりゃ大満足なんだが…)」
エルマ:「ん?何か言った?」
よしひろう:「いや、何も(苦笑)」
エルマが僕に「こん棒」を渡してくる。
エルマ:「これはあなたのものよ。」
よしひろう:「ありがとう。」
その見た目のみすぼらしさに思わず首を傾げてしまう。
よしひろう:「一旦戻ろうか?」
エルマ:「ええ。賛成よ。」
ここへ戻ってくる時のために、青い魔方陣を千切り張り付けておく。
そして出発の際に千切った片割れの赤い魔方陣を取り出した。
エルマと手を繋ぎ魔法を発動させる。
よしひろう:「リターン!」
目映い光が二人を包み、一瞬で地上へとっ戻った。
さっそく地下迷宮入り口の受け付けに行く。
今日は混んでるみたいで、受け付けに長い行列ができていた。
最後尾につく僕とエルマ。
しばらくすると、僕らの後ろから3人組の男がやってきた。
僕らの後ろにつくのかと思いきや、最前列へと進み、偉そうな口調で言った。
3人組の男:「俺らちょっくら忙しいんでな、先いかせてもらうわ(笑)」
そう言って強引に受け付けの最前列に割って入った。
列の後方から苦情が発せられた。
「俺たちも並んでるんだぞ!」
「後ろに並べよ!おい!」
「ふざけるな!!」
3人組のリーダーと思われる男が怒鳴り声を上げる。
「俺はチーム銀狼のジェレミー様だぞ!!」
ジェレミー:「文句のある奴は出てこい!!」
周囲がシーンと静まりかえる。
僕も腹が立っていたので前へ進み出ようとしたのをエルマが肩を掴んで押し止めた。
エルマ:「あの人達、銀の指輪をしているわ。」
エルマ:「あなたで勝てて?」
よしひろう:「うーーーーー……」
悔しいが力では勝てない。
心の中で呟いた。
よしひろう:「(死ねばいいのに…)」
人の死を願うという事はいけない事だと理屈では分かっていても、そう願わずにはいられない時だってある。
そういう所が僕の弱さであり、考えが幼い所だろうか?
悶々とそのような事を考えているうちに僕たちの順番が来た。
魔封石を鑑定してもらう。
手際よく魔封石を選り分けていく受け付けの人。
小さいのは全部で138,000Gになった。
次に拳大の大きい魔封石を見せる。
受け付けの人:「これは見事ですね。」
受け付けの人:「今着けている指輪は何ですか?」
エルマ:「陶器よ。」
受け付けの人:「それではこれに交換しましょう。」
そういうと銅製に宝石が嵌め込まれたDランクの指輪を2個渡してきた。
陶器製の指輪を返し、新たに銅で宝石の付いた指輪を受けとる。
よしひろう:「レベルアップしたみたいで嬉しいな?」
エルマ:「ええ、ここに来てまだ4日しか経っていないのにね?(笑)」
よしひろう:「このまま道具屋に行かないか?」
エルマ:「ええ。行きましょう。」
道具屋に入り、使い果たしたポーションの補充をする。
魔力回復 5,000×3=15,000
治癒 5,000×1=5,000
リターンの巻物 10万×2
を購入。
次に武器屋に行き、ドロップした「こん棒」を鑑定してもらう。
武器屋の主:「うーん、鑑定料に5000Gかかるが鑑定するかい?」
よしひろう:「お願いします。」
武器屋の主:「それじゃ、明日までに終わらせておくから、明日にでも来てくれ。」
武器屋を後にして宿屋へと向かう僕とエルマ。
よしひろう:「一応、目的は達成したってことでいいのかな?」
エルマ:「そうね。」
エルマ:「でも、まだ3日残ってるし、せっかくだから探索を続けない?」
よしひろう:「いいよ。リターンも張ってあるし、使わなきゃもったいないもんな。」
宿屋の食堂で夕食を摂る。
今日は念願成就の祝杯だ。
よしひろう:「豪勢にいこうぜ。」
エルマ:「ええ(笑)」
食事も終わり、エルマと別れ宿の自室へと戻る。
よしひろう:「疲れた…」
ベッドに横になると意識が薄れていく。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。




