僕は夢を見た(49) 迷宮の休日
ラクシャーサの地下迷宮の町の宿屋の自室で目覚める。
時間は早朝。
今日はエルマの提案で地下迷宮の探索をお休みして各自、思い思いの事をしようと決めていた。
かといって一人で朝食を取るのも寂しい。
なのでエルマを誘ってみることにする。
エルマの部屋をノックする僕。
エルマ:「どなた?」
よしひろう:「よしひろうだけど。」
よしひろう:「朝食に付き合わないか?」
エルマ:「ええ。いいわ。少し待ってて。」
暫く待っていると部屋からエルマが出てきた。
初めて会った時に着ていた黄色いドレスを身に纏っていた。
エルマ:「お待たせ。行きましょうか。」
よしひろう:「ああ。」
宿屋一階の食堂で朝食を受け取り、席につく。
今日のメニューはカリカリベーコン、スクランブルエッグ、ソーセージにパンだった。
僕は飲み物を取りに行った。
エルマの分と合わせてオレンジジュースを2杯テーブルの上に置く。
エルマ:「ありがとう。」
僕とエルマは朝食を食べ始めた。
ベーコンを口に放り込みながらエルマに話しかける。
よしひろう:「この後だけど、昨日手に入れた魔封石を換金しに行こうと思ってるんだ。」
よしひろう:「エルマも一緒に来ないか?」
エルマ:「行くわ。」
エルマ:「私たちの初めての探索結果ですもの。」
エルマ:「でも、大して期待しないほうがいいわよ。」
よしひろう:「なんで?」
エルマ:「倒したのが雑魚ばかりじゃない。」
よしひろう:「言われてみれば、そうだよな…」
食事を終え、地下迷宮の入り口にある受け付けへと向かう僕とエルマ。
探索に行く人、探索から帰って来た人でごったがえしていた。
順番待ちの列に並び、待つこと数分。
僕達の順番が来た。
雑嚢から昨日手に入れた魔封石を取りだし、受け付けの親父に渡す。
手際よく魔封石を取り分ける受け付けの親父。
受け付けの親父:「全部で5000Gだ。」
よしひろう:「え?そんだけ?」
受け付けの親父:「ああ、それだけだ。」
受け付けの親父:「お嬢さんと兄ちゃんがペアを組んでいるのか?」
よしひろう:「はい。」
受け付けの親父:「初めてか?」
よしひろう:「はい。」
受け付けの親父:「それじゃ、これを渡しておく。」
そういうと陶器製の茶色い指輪を二つ渡してきた。
受け付けの親父:「Fクラスの印だ。」
受け付けの親父:「指にはめるのも良し。ネックレスにして首から下げておくのも良し。」
よしひろう:「ありがとうございます。」
そう言って地下迷宮の受付から離れる。
エルマに指輪を1つ渡した。
エルマ:「ね?言った通りでしょ?」
と微笑むエルマ。
よしひろう:「この指輪は何?」
エルマ:「そうね、簡単に言うと冒険者のレベルを表す物よ。」
エルマ:「この陶器製のが最下位のFランク。」
エルマ:「その次が銅製のEランク。」
エルマ:「その次が銅製に宝石が嵌め込まれたDランク」
エルマ:「さらにその次が銀製のCランク。」
エルマ:「その上が銀製に宝石が嵌め込まれたBランク。」
エルマ:「まだ上に金製や金製に宝石が嵌め込まれた特Aクラスがあるけど…」
エルマ:「実質的には銀製の宝石付きが最上級かな。」
よしひろう:「つまりは。」
エルマ:「私たちは「駆け出し」の初心者って意味よ(笑)」
エルマ:「指に嵌めておくのも恥ずかしいわ。」
エルマ:「でも、まぁ、持っておくことね。」
よしひろう:「そっかー。頑張らないとな。」
エルマ:「私たちの目的は指輪じゃなくて、魔封石だということは忘れないでよ。」
頷く僕。
よしひろう:「そうそう、道具屋に行こう。」
エルマを連れ、道具屋へと行く。
そこで買い物をした。
魔力回復ポーション 5,000 ×4
地下72階までの攻略本 20,000 ×1
リターンの巻物 100,000 ×3
魔力回復のポーション4本をエルマに渡す。
よしひろう:「勿体無いとか思わずにじゃんじゃん使ってくれ。」
よしひろう:「命には変えられないからな。」
エルマ:「ありがとう。」
と言って微笑むエルマ。
エルマ:「夕食を一緒に取りましょう。」
エルマ:「18時に宿屋の食堂で。」
よしひろう:「うん。」
道具屋の前で別れる二人。
僕は次に鍛冶屋へと向かった。
どうも最近切れ味が鈍ってきたような気がしたからだ。
鍛冶屋の主に剣を見せる僕。
鍛冶屋の主:「王家の紋章入りとはまた凄い物を持って来なさる。」
僕の剣を見て驚きを隠さない鍛冶屋の主。
よしひろう:「最近切れ味が悪い気がするんですよ。」
鍛冶屋の主:「大分使い込まれているようだねぇ…」
鍛冶屋の主:「ちょっくら研ぎ直してやれば元に戻るだろ。」
そう言って研ぎ石で研ぎ始めた。
よしひろう:「この剣、剣としてはどのくらいのレベルなんですか?」
鍛冶屋の主:「王家の紋章入りとはいえ、その辺りにある普通の剣と変わらないよ?」
そう聞いて少しがっかりする僕。
鍛冶屋が剣を研いでいる間、僕は道具屋で買った地下72階までの攻略本を読み漁っていた。
よしひろう:「地下20階にはトロールが居るのか…」
そうこうしている間に陽が傾き、剣が研ぎ終わる頃には夕方になっていた。
鍛冶屋の主:「終わったよ。」
よしひろう:「お代はいくらです?」
鍛冶屋の主:「王家の紋章入りだったからな。」
鍛冶屋の主:「5,000Gにまけといてやるよ。」
5,000Gを鍛冶屋の主に払い、店を後にする。
約束の18時はもうすぐだ。
宿屋の前に着くとエルマが店の前で待っていてくれた。
エルマを突然抱き抱えるとその場で飛翔する僕。
高く高く舞い上がる。
驚いて僕にしがみつくエルマ。
エルマ:「急にどうしたの?」
よしひろう:「なぜかは分からないんだけど、無性に飛びたくなったんだ。」
落日をじっと見守る僕とエルマ。
下を見ると町に灯りがつき始めていた。
陽が完全に落ちた頃、宿屋の前に舞い降りた。
よしひろう:「夕食にしよう。」
エルマ:「ああ。」
宿屋の食堂の席に座ると給仕が注文を聞きに来た。
僕はビーフシチューとパンを注文する。
エルマも同じものを注文した。
よしひろう:「明日の地下20階にはトロールが出るみたいだ。」
そう言いながら道具屋で買った攻略本をエルマに見せる。
エルマ:「こんなに高い本を買ったのか!?」
そう言いながらも食い入るように読むエルマ。
エルマ:「この本、借りてもいいか?」
よしひろう:「もちろん。」
笑顔で了承する僕。
給仕が運んできたビーフシチューを食べながら夢中になって本を読むエルマ。
普段なら「行儀が悪いぞ」とチャチャを入れるのだが、今はソッとしておくことにした。
食事も終わり、それぞれの自室へと戻っていく。
よしひろう:「明日も頑張ろうな!」
エルマ:「ああ!もちろんだ!」
自室のベッドに横たわる。
実に有意義な休日だった。
意識が薄らいでいく。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
慌ててそれを止める僕。




