僕は夢を見た(44) 地下迷宮への旅
エアリスの街の騎士宿舎内にある自分のロッカーの前に立つ僕。
時刻は早朝。5時頃と思われる。
着替えは済んでおり、他の必要と思われるものを小さなリュックに詰め込んでいた。
ランタン、火打ち石、便箋。
よしひろう:「さて、行くか…」
騎士宿舎を出て上空へ飛翔し、王都へと向かう。
王都へ着いたのが7時頃だった。
まだ集合時間まで間があったので宿屋前の食堂で朝食を摂ることにした。
カリカリベーコンにスクランブルエッグ、小さなロールパン2個で490G。
食堂内は人でごった返しておりザワザワとしていた。
食べていると知らない男が話しかけてきた。
知らない男:「お兄さんも冒険者っすか?」
よしひろう:「はひ。」
食べ物を頬張りながら頷く僕。
知らない男:「お兄さん、強そうなんで、俺らのパーティーに雇われちゃくれませんか?」
よしひろう:「あー、あいにく先客がいるもんで(苦笑)」
知らない男:「そうですか…残念だなあ。」
知らない男:「ちなみにいくらで雇われたんで?」
よしひろう:「タダで(苦笑)」
知らない男:「タダで!?」
驚きの表情を見せる知らない男。
よしひろう:「魔法学校に通う友達に頼まれて地下迷宮に行くんすよ。」
知らない男:「って事は、「ラークシャサの地下迷宮」に行くんですね。」
知らない男:「奇遇ですね!俺達も生徒に雇われてそこに行くんですよ。」
よしひろう:「おぉ~」
思わず笑みが溢れる。
知らない男:「誰に雇われたんです?」
よしひろう:「エルマ」
知らない男:「エルマ!?」
大声で聞き返す知らない男。
店内のざわつきが一瞬で静寂になる。
知らない男:「スーパーノヴァってあだ名はご存知ですか?」
よしひろう:「期待の超新星とか?」
首を横に振る知らない男。
知らない男:「お兄さん、背中には気を付けて…」
僕の肩にポンと手を当てて去っていく知らない男。
あの…そんな事を聞かされるとメッチャ気になるんですけど…
食後のコーヒーを飲んでいると、そろそろ待ち合わせの8時が近づいてきた。
会社で叩き込まれた「10分前行動」のせいか、早めに動かないと落ち着かないのだ。
慌てて待ち合わせ場所の城門前に行く。
周囲を見渡しても衛兵以外、誰もいないようだ。
よしひろう:「間に合った」
安堵する僕。
それから程なくして8時を告げる鐘が鳴り響く。
よしひろう:「あれ?来ないんだが…」
女の子は支度に時間がかかるとは聞いていたが、地下迷宮に行くのに眉毛でも描いてんのか?
30分を過ぎた辺りで昼食用に買っておいたサンドウィッチに手を付ける僕。
1時間が過ぎようとした時、エルマが’現れた。
エルマ:「待たせたな。」
僕は時間に遅れて来た怒りより先に、エルマの容姿に驚いた。
銀地に青色の下地塗装がされていて、所々金色のモールドが施されているハーフプレート姿。
純白のマントを身に纏い、そのマントの裏地も青。
左手には盾を持ち、右手には魔法の杖が握られていた。
魔法の杖の先端には青い拳大のクリスタルが嵌め込まれている。
そして、背中には全身が隠れるほどの荷物を背負って…
よしひろう:「なんで剣士の格好をしてるの?」
エルマ:「我が家にはこれしか無くてな。」
よしひろう:「つーか、何?その荷物。」
エルマ:「必要な物全て持ってきた。」
エルマ:「格好で魔法の威力が変わる訳ででもないからな。」
よしひろう:「仰る通りで…」
美人は何を着ても似合うというが、正にこのことか…
よしひろう:「時間も時間なんで、早速出立しませんか?」
エルマ:「ああ。私はどうすればいい?」
よしひろう:「僕におぶさるように。」
エルマ:「こうか?」
と僕の肩に後ろから手を回すエルマ。
エルマのお尻の辺りで手を組んで支える僕。
よしひろう:「しっかりとしがみついとけよ。」
よしひろう:「飛翔!」
エルマを連れて空高く舞い上がる。
水平に移動し始めると同時に自身の体も水平にして、エルマが楽な態勢をとってやる。
ちょうど馬に跨がるような感じだ。
エルマ:「こ、これは!気持ちいいな!!」
エルマ:「エリーから聞いてはいたが、これほど素晴らしいとは!!」
初めて空を飛び、感動するエルマ。
自分が誉められているような気持ちになる僕。
よしひろう:「地下迷宮の場所はどっちだ?」
エルマ:「西だ。西への街道沿いに進んで。」
よしひろう:「了解。」
よしひろう:「もっと高く飛ぼうか?」
エルマ:「うん。頼む。」
300m位の高さまで上昇すると、人が胡麻粒のように小さくなる。
飛行し始めて3時間くらい経った頃、エルマが休憩しようと提案してきた。
促されるまま高度を下げ、地下迷宮へと続く道の街道沿いにてしまい着地する。
エルマ:「お茶にしよう。」
よしひろう:「うん。」
エルマ:「湯を沸かすから、焚き火の枝を集めてくれ。」
そう言うとエルマは森の奥へと入っていった。
よしひろう:「小便か?」
エルマ:「貴様にはデリカシーというものが無いのか!」
顔を真っ赤にして怒るエルマ。
よしひろう:「あまり遠くには行くなよー」
エルマ:「わかっている!!!」
僕はエルマがいないうちに焚き付け用の枝を一抱えほど集めた。
戻ってきたエルマが焚き火用の鉄で出来た台をリュックから取り出した。
次にヤカンを取り出す。
さらに水筒も。
いったいあのリュックにはどんだけの品物が収まっているのやら。
焚き火台の下に木の枝を並べると、エルマが杖を手に取り呪文を詠唱し始めた。
エルマ:「神より与えられし叡知の火光、その力、今ここに顕現せん。」
エルマ:「ファイヤー」
エルマの杖の先端にマッチの火のようなものがポッと現れた。
それを木の枝に付け火を起こす。
よしひろう:「ファイヤーってそんなに小さいのか?」
エルマ:「目いっぱい力を絞っているからな。」
エルマ:「全力だとこの辺り火の海だ(笑)」
よしひろう:「へー」
半信半疑な僕。
お茶を済ませ、再び地下迷宮に向かって飛行する僕とエルマ。
段々と陽が落ち、赤みを帯びていく空。
夕日の眩しさを遥か彼方にある雲が和らげてくれている。
エルマ:「なんて綺麗なんだ…」
エルマ:「エリーにも見せたのだろう?この景色を。」
黙って頷く僕。
僕の体勢では見ることはできなかったが、エルマが泣いているような気がした。
陽が完全に落ちて夕闇が迫ってくる。
星が瞬き始めた。
そして、完全に夜となった頃、ラークシャサの地下迷宮の町へとたどり着いた。
宿屋と思われる建物の前に降り立つ僕とエルマ。
エルマ:「それじゃ、ここで別れましょう。」
そう言うとエルマは町の外れの野原の方へ歩いていく。
よしひろう:「エルマ?どこへいくの?」
慌ててエルマの後を付いていく。
エルマは野原に着くとリュックを降ろし、テントらしき物を取りだし組み立て始めた。
よしひろう:「まさか野宿する気か!?」
エルマ:「そうよ。」
よしひろう:「宿屋があるのに?」
エルマ:「私の家、貧乏だから。」
よしひろう:「ちょ、ちょっと待て!」
か弱い女の子に野宿なんてさせられるはずがない。
よしひろう:「宿代は俺が出してやるから!」
エルマ:「施しは受けないわ!」
よしひろう:「俺達は友達だろ?」
エルマ:「それとこれとは話が違うでしょ!」
よしひろう:「エリーからお前の事頼まれてるんだから!」
エルマ:「エリーも関係無いでしょ?」
よしひろう:「あー!もう!!」
エルマを無理矢理リュックごと宿屋へと連れていく僕。
よしひろう:「宿代は明日からの働きで返してくれ。」
エルマ:「わ、分かったわ…」
やっと野宿を諦めてくれたみたいだ。
まったく無茶をするお嬢様だ。
よしひろう:「シングルを2部屋、1週間借りたい。」
宿屋の主:「6万3千Gになります。」
お金を支払い鍵を2つ受けとる。
そのうちの1つをエルマに渡す。
よしひろう:「お金はもう払っちゃったんだからな、野宿は無しだぞ。」
エルマ:「分かったって言ってるでしょ!」
自分の借りた部屋へと入り、ベッドに横になる僕。
明日からの迷宮探索は大丈夫なんだろうか?
不安で不安で…
意識が薄れていく。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
慌ててそれを止める僕。




