表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
ラクサーシャの地下迷宮
44/58

僕は夢を見た(43) 初見は最悪だった

エアリスの街の城門前に立つ僕。

王都から戻ってきて数週間くらいは経っただろうか。

いつものように街の中心の広場にある求人板へと向かう。

途中、八百屋でリズの親父さんに挨拶をする。


よしひろう:「ちーっす。」

リズの親父さん:「おう!おはよう!」


挨拶をしながら僕にリンゴを一個投げて寄越すリズの親父さん。


よしひろう:「親父さん、ありがとう!」


お礼を言いながら僕は歩みを進める。

求人板の前に着き、一通り依頼の内容を眺めてみる。

特段変わった依頼は無いようだ。

害虫駆除やモンスター退治のような報酬額の高い美味しい依頼はクレハがこなしているので僕には回ってこない。

クレハは姉御肌で人から頼まれると嫌とは言えない性格なため、街の住民からも好かれ、今では無くてはならない存在と化していたのだ。

それに引き換え僕ときたら…

賞金の5000万Gを貰ってからというもの…

働かなくていいという事がこんなに人を堕落させるとは。

もう「何かに選ばれた」ことや、「妖艶な美女の言葉」などすっかり忘れてしまっており、自堕落な夢のような生活を送っていたのだ。


よしひろう:「今日も平和だな…」


そう呟きながら空を見上げる僕にアスター隊長が声をかけてきた。


アスター隊長:「よしひろう。エリザベート様から君宛に手紙だ。」


渡された封書には「至急」と書かれていた。

その為、隊長自らがわざわざ僕の所まで届けに来てくれたのだ。


よしひろう:「ありがとうございます。」

よしひろう:「怪我の具合は大丈夫なんですか?」

アスター隊長:「ああ、まだ少し痛むが寝てばかりではおられんのでな(苦笑)」


そう言って手を振りながら騎士宿舎へと戻って行くアスター隊長。

僕はその後ろ姿を眺めながら、男ならああいう風な男になりたいものだと少しだけ思った。


よしひろう:「さてと…」


とエリーからの手紙に目を通す。

---

親愛なるヒロへ

お願いしたい事があるので至急お会いしたく。

エリー

---

よしひろう:「短っ!」

よしひろう:「しかもこれじゃ何が何だか分かんないじゃん…」

よしひろう:「手紙を出した日付は…と…」

よしひろう:「きょ、今日!?」


今朝出した手紙が5、60kmも離れたこの街にもう届くとは。

皇女様の権力の強さをあらためて実感した。


よしひろう:「ならば行かざるをえないだろう。」


エリーのことだから、明日か明後日に会いに来ると思っているはず。

そこへ今日颯爽と現れる僕。

あまりの早さに驚くエリー。

その顔が見たくて早速、王都へ向かうことにした。


よしひろう:「飛翔!」


上空へと舞い上がる。

一路、王都へと向けて飛行を始める。

王都への街道に沿って進むこと2時間弱。

エリーの居る城の前に到着した。

時間は丁度正午になったあたりだろうか。

衛兵にエリーから貰った通行証と今朝届いた手紙を見せて、エリーと会えるよう取り計らってもらう。

衛兵から暫くここで待つよう促され、待つこと20分。

衛兵が戻ってきた。


衛兵:「こちらへどうぞ」


衛兵に促されるまま付いていく。

エリーの部屋は城門から向かって左側の建物の5階だ。

5階の待合室に通される。


衛兵:「エリザベート様が来られるまでこちらでお待ちください。」

よしひろう:「はい。」


そう言って待合室の椅子に腰かける僕。

周囲を見渡すと高そうな壺や置物がずらりと並んでいる。

その中に妙な形をした猫の置物があったりして、興味をそそられる。


よしひろう:「へぇ~」


と関心していると…


謎:「おい!貴様!!」


と突然声をかけられてビクッとした。

声のした方向に目をやると、そこにはエリーに匹敵する程の美少女が居た。

歳の頃は13、14歳ってところだろうか。

金髪で青い瞳。

ゆったりとした薄黄色のドレスを纏っている。


謎の美少女:「貴様だ!!」

よしひろう:「へ?俺のこと?」

謎の美少女:「貴様以外に誰がいる?」


他人様から初めて「貴様」などと言われて狼狽える僕。

それに何故か怒ってるみたいだし…


よしひろう:「な、なんでしょうか?」

謎の美少女:「貴様のその身なりはなんだ?」

よしひろう:「え?」

謎の美少女:「姫様の御前にその身なりとはいったいどういう事かと聞いている!」


自身の身なりを再確認する。

僕はいつもの普段着であるTシャツ、半パン姿だった。


よしひろう:「急いで来たもので…つい…」

謎の美少女:「馬鹿か貴様は!」


と言いかけたところにエリーが現れた。


エリー:「まぁ!ヒロ!!」


と言って僕に駆け寄り抱き締めてくるエリー。

僕の胸に顔を埋めるエリーの頭を撫でようとしたその時、強い殺気を感じてゾクッとした。


謎の美少女の方へ目をやると、今にも殴りかかって来そうな程、怒っているのが見て分かった。


よしひろう:「エ、エリー?あの子は?」

エリー:「あ、いけない、忘れてた。」


そう言って謎の美少女(激怒中)の横に立って紹介を始めるエリー。


エリー:「この子は「エルマ」」

エリー:「私の一番のお友達。」

エリー:「エルマって呼んであげてね。」

エリー:「そうそうエルマにもヒロの事を紹介しなきゃね。」


そう言ってエリーは僕の横に立つ。


エリー:「この方は「よしひろう」さん。」

エリー:「私は「ヒロ」って呼んでるわ。」

エリー:「私の大切なお友達。」

エリー:「エルマもヒロって呼んであげてね。」

エルマ:「エリー様がそう仰られるのなら…」

エリー:「「様」は付けない約束でしょ?」

エルマ:「はい。エ、エリー。」


そう言いながらも僕にガンを飛ばしてくるエルマ。


よしひろう:「(あの…メッチャ怖いんですけど…)」


心の中でそう呟く。

エリーに促されるまま部屋の中へと入る僕とエルマ。

小さなテーブルに着席する三人。

すると、メイドが紅茶とケーキを持ってきた。

それぞれの前に紅茶とケーキを置いていくメイド。


エリー:「どうぞ、召し上がれ。」

よしひろう:「いただきまーす。」


小さな小瓶に入っていたミルクを紅茶に入れ、スプーンでクルクルかき混ぜる。

途中、カップにスプーンが当たりチンチンと音が鳴る。

それを見ていたエルマの顔色がさらに悪くなるのがなんとなく分かった。

もう耐えられないというオーラを出しまくるエルマ。


よしひろう:「ズズズ」


暑かったので啜るように紅茶を飲む僕。

エルマの足が「ガツッ」っと僕の足を強く踏みつける。

驚いてエルマの顔を見ると目が座っていた…


エリー:「エルマ、このヒロが先日話をした協力者よ。」

よしひろう&エルマ:「え!?」


顔を見合わせる僕とエルマ。


エルマ:「とても冒険者や剣士には見えないんだが…」

エリー:「ヒロはね、あの「旋風」を倒して、「烈風」を改心させた勇者よ?」


腕を組みうんうんと頷く僕。

クレハは自分から改心したがってたから僕の手柄じゃないんだが、ここは黙っておこう。


エルマ:「こいつがあの噂の勇者だって?」

エルマ:「信じられんな…」

よしひろう:「この僕を雇うんだ。いくら出す?」

エリー:「そこは私のお友達でしょ?お金なんか要らないわよね?」


ニッコリと微笑みながら「無料で」を示唆するエリー。


エルマ:「私が必要なのは拳大の魔封石だ。」

エルマ:「それ以外の魔封石やドロップアイテムには興味無い。」

エルマ:「私が必要な物以外はヒロが取るということでどうだ?」


そう言うエルマを見ると先程までの怒りは収まっており、真剣な眼差しで交渉してきていた。

僕にとってもまんざら悪い話でもなく、また地下迷宮の探索自体にも興味が湧いてきていたのでそれで了承することにした。

自堕落な毎日を過ごすのにうんざりしていたというのもある。


よしひろう:「うん。それでいいだろう。」


右手をエルマに差し出す。


エルマ:「よろしく頼む」


エルマも右手を差し出してきて握手する二人。

横ではエリーが嬉しそうに拍手をしていた。


エリー:「これで安心だわ。」

エリー:「勇者とスーパーノヴァ、最強の組み合わせね。」

よしひろう:「スーパーノヴァ?」

エルマ:「期待の超新星という意味だ。」

よしひろう:「そ、そうなのか?(なんか意味が違うような気がする)」


エルマ:「まず、聞きたい事がいくつかある。」


真剣な眼差しでエルマが問いかけてきた。


エルマ:「ヒロは馬に乗れるか?」

よしひろう:「いや、乗れない。」

エルマ:「地下迷宮まで200kmくらいあるが、どうやってそこまで行くつもりだ?」

エルマ:「徒歩だと数日かかるが…」

よしひろう:「飛んで行く。」


こいつはアホなのか?という表情で僕を見るエルマ。


エルマ:「私は馬で行くつもりだが…」

よしひろう:「背負ってやるよ。一緒に飛んで行けばいい。」


横ではうんうんとエリーが頷いていた。


エルマ:「エリー、こいつ頭がおかしいんじゃないか?」


と僕を指差すエルマ。


エリー:「ヒロは空を飛べるのじゃ。」


嬉しそうにエルマに説明するエリー。


エルマ:「フライの魔法はかなりの高位魔術師しか使えないはず…」

エルマ:「まあ、いい。」

エルマ:「では、明日はヒロに乗せてもらって地下迷宮へ行くことで決定だな。」

よしひろう:「地下迷宮の近くに宿屋はあるの?」

エルマ:「あるよ。道具屋、武器屋、防具屋、酒場とか一通りある。」

エルマ:「地下迷宮の入り口の周りは一つの町と呼べるくらいだ。」

よしひろう:「(へぇ~、そりゃ楽しみだ)」

エルマ:「滞在期間は一週間と考えているからかなりの大荷物になるが大丈夫か?」

よすひろう:「大丈夫だよ。たぶん。」

エルマ:「そうか…私も極力荷物を減らすようにするわ。」

エルマ:「ちなみに聞くが地下迷宮まで何日かかる?」

よしひろう:「200kmくらいだろ?8時間弱ってところだな。」

エルマ:「そんなに早く現着できるのか!?」


驚きの表情を隠せないエルマ。

明日の段取りも終わり、エリーの部屋を後にした。

建物を出て、守衛の前に立つエルマと僕。

時刻は夕暮れ。


エルマ:「明日の朝8時、宿屋の前で落ち合おう。」

よしひろう:「わかった。」

よしひろう:「それでは明日!」

よしひろう:「飛翔!」


上空へと舞い上がる僕。

エルマはそれを見て驚いているようだった。

そのままエアリスの街へと飛行する。

美しい夕焼け空を眺めながらの飛行だ。

陽が段々と落ちていき、夕闇が迫ってくる。

エアリスの街に着いた頃には夜になっていた。

騎士宿舎のロッカールームで忍者スーツに着替える僕。

クナイのベルトを装着し、剣を腰の左側に差し込む。


よしひろう:「エルマ、見た目は超が付くほど可愛いんだけどなぁ…」


などと考えているうちに意識が薄らいでいく。


目が覚めた。

横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。

慌ててそれを止める僕。

最近、仕事に行くのが憂鬱でたまらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ