僕は夢を見た(42) 王都へ
王都の宿屋の自室で目覚める僕。
今日はエアリスに帰る日だ。
あぁ、またセナの温もりを感じられる。
そう思うとドキドキが止まらない。
なんて考えているとドアをノックする音が。
扉を開けるとセナが待っていた。
一緒に宿屋の食堂に朝食を食べに行く。
バイキング方式なので好きな物を好きなだけ取って食べる。
セナ:「昼ご飯無いんだから、たらふく食べとくのよ!」
ベーコンを口いっぱいに頬張りながらそう言うセナ。
よしひろう:「マジか!?」
僕も負けじとハムサンドを口の中に放り込む。
もう食えないというくらい食べた二人は宿屋をチェックアウトした。
馬に水を積み込むセナ。
セナ:「夜までにはエアリスに着くわよ!」
飯抜きの強行軍にモチベーションがだだ下がりの僕。
よしひろう:「へーい…」
そこに声をかけてきた女性がいた。
紅:「おはようございます。」
よしひろう:「え!?紅!?」
セナ:「知り合いか?」
よしひろう:「ええ、まぁ。」
よしひろう:「紹介します。「烈風」の紅さんです。」
そう聞かされて咄嗟に剣に手を掛けるセナ。
よしひろう:「ちょっと待った!」
と慌ててセナに事の経緯を説明し恩赦を賜った事を伝える。
なるほどと一応納得するセナ。
それにしても女って化粧の仕方一つでここまで変わるとは…
前回会った時はかなりけばけばしかったのに、今日は清楚そのものだ。
紅:「お二方、エアリスまで行かれるのでしょ?」
セナ:「はい。エアリスまで行きますが?」
紅:「私も同伴させてもらえませんか?」
紅:「何分、女のひとり旅は危なくて。」
セナ:「か…構いませんよ。」
紅:「ありがとうございます。」
紅:「申し遅れましたが、私はクレハと名を変えました。」
クレハ:「よろしくお願いします。」
ということで、馬にはセナとクレハが乗り、僕が歩く事になった。
がっかりだ。
よしひろう:「クレハさん、なんで名前変えたの?」
クレハ:「紅のままだと生き辛いでしょ?(苦笑)」
そりゃそうだ。
紅と聞けば「烈風の」の通り名が付いて回る。
クレハ:「だから通り名は「紅のクレハ」でいこうと思ってるの。」
なかなかに格好いい通り名だなと正直思った。
僕にも格好いい通り名が欲しい。
そうこうしているうちに王都とエアリスの街の中間地点まで辿り着いた。
一番盗賊やら追い剥ぎが出やすい地点だ。
案の定森の中から無頼漢が現れた。
追い剥ぎだ。人数は20名ほど。
男:「女と金を置いて行きな。」
そういうと剣をちらつかせながらこちらへと向かってくる。
セナ:「クレハさん!」
セナがそう言うと状況を理解したクレハが馬上から飛び降りた。
賊の一団の中央に向け馬を縦横無尽に走らせる。
そして賊を撹乱しながら切り伏せていくセナ。
僕も剣を抜き賊めがけて切り込んで行った。
相手の剣を籠手で防ぎつつ剣を急所目掛けて突き立てる。
新しい籠手の使い勝手は上々だ。
クレハも剣を抜き踊るように敵を仕留めていき、瞬く間に5人を倒していた。
それを見ていた賊の一部が状況が不利とみて逃げ始める。
そのクレハの前に1人の槍使いが立ちはだかる。
槍をビュンビュンと振り回し威嚇する男。
男:「この間合いに入ってきたら死ぬぜ(笑)」
クレハを見ると目が据わっていた。
よしひろう:「(クレハさんの顔、めちゃめちゃ怖いんですけど…)」
クレハ:「面倒くせーな…」
そう言うとクレハは剣を鞘に収め、居合いの格好をした。
男:「ナメてんのか!」
と男が槍を突き出す瞬間、クレハが動いた。
クレハ:「烈風斬!!」
クレハの剣の間合いより遥かに遠かった男の体が槍の柄ごと切り裂かれた。
男:「グハッ!」
何が起きたのかすら分からず絶命する男。
僕&セナ:「!?」
セナ:「今の何?剣から何か飛び出したみたいだったけど…」
クレハ:「斬撃波よ。」
クレハ:「鋭い風圧で相手を切り裂く。」
セナ:「あなたそんな事ができるの?」
クレハ:「私が出来るわけじゃないわ。」
クレハ:「この剣だからできるの。」
クレハ:「この剣、魔法の剣なのよ。」
よしひろう&セナ:「へぇー」
感心することしきり。
クレハ:「私の前の通り名が「烈風」だった理由を分かってくれた?」
うんと頷く僕とセナ。
この世界には魔法の武器があるのか…
僕も欲しいな…
よしひろう:「ねぇ、その剣、ちょっと使わせてもらってもいい?」
クレハ:「いいよ。」
あっさりと了承して剣を僕に渡してくるクレハ。
剣を受け取り、腰の左側に装着し、居合い切りのポーズをとる僕。
クレハ:「まずは集中して。」
クレハ:「そして念じるんだ。」
クレハ:「切り裂けって。」
剣が鞘の中でカタカタと震え始めた。
クレハ:「そう、それでいい。」
クレハ:「そして、一気に剣を抜き払うんだ。」
よしひろう:「烈風斬!」
ありったけの力で剣を抜き、払う僕。
一瞬周囲が静まり返る。
そのうち木々がミシミシという音を立てながら倒れ始めた。
街道横の雑木林を数十本一気に斬り倒してしまったのだ。
クレハ:「あんた、馬鹿力じゃないの!?」
クレハ:「こんなに切っちまってどーすんだ?」
よしひろう:「ちょっと…やりすぎちゃったかな?(苦笑)」
クレハに剣を返す。
呆れるように僕を見るクレハ。
セナ:「とりあえず、この場から離れよう。」
セナ:「こんなところを人に見られると厄介だ(苦笑)」
セナはクレハを馬の後ろに乗せ、さっさとこの場を立ち去っていく。
それの後ろを追いかける僕。
エアリスの街に着いたのは夜も更けた頃だった。
クレハを宿屋で降ろし、騎士宿舎へと帰るセナ。
よしひろう:「セナ、おやすみ。」
セナ:「おやすみ」
笑顔でそう答えるセナ。
よしひろう:「クレハさんもおやすみ。」
クレハ:「「クレハ」って呼んでくれ。」
クレハ:「お前は命の恩人なんだから。」
クレハ:「ありがとう、よしひろう。」
クレハ:「それから、おやすみ。」
そう言うと宿屋の中へと入って行くクレハ。
僕は城門前の石に腰かけた。
よしひろう:「楽しい旅だったな…」
そう呟いて満天の星空を眺める。
意識が薄らいできた。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
すかさずそのアラームを止める僕。
もう少し夢を見ていたかった。




