僕は夢を見た(41) 王都へ
王都の宿屋の部屋の中にいる僕。
ベッドで横になっていた。
体を起こし、背伸びをする。
よしひろう:「うーん。」
その時、僕の部屋をノックする音が聞こえた。
ドアを開けてみるとセナだった。
朝食を食べに行こうと誘いに来てくれたのだ。
よしひろう:「おはよう。」
セナ:「おはよう。」
笑顔で挨拶をする二人。
宿屋の食堂で食事をしながら会話する。
よしひろう:「いよいよ今日だね。」
セナ:「あぁ。いよいよだ。」
セナを見るとかなり緊張しているみたいだった。
よしひろう:「試験は丸一日あるの?」
セナ:「午前は筆記試験、午後は実技試験だ。」
よしひろう:「結果はいつ分かるの?」
セナ:「実技試験の後だと聞いている。」
よしひろう:「僕の褒賞金授与式が午前中だから、陛下も結構忙しいんだね(苦笑)」
セナ:「そう言われれば、そうだな(苦笑)」
今日の試験の準備のため早々に食堂を離れるセナ。
僕はパンを3個程ポケットに忍ばせて食堂を後にする。
紅の部屋の前まで来てノックをしてみる。
紅:「はい?」
と言ってドアを開ける紅。
忍ばせておいたパン3個を手渡す。
紅:「これが最後の食事になるかもしれないね。」
と寂しそうな顔で苦笑いを見せる。
よしひろう:「時間が来たらまた来るから」
と言って自室に戻る僕。
陛下に何と言って赦してもらおうか思案するも、なかなか良い答えが見つからない。
気持ちが焦り、時間だけが過ぎていく。
僕の部屋をノックする音が聞こえた。
扉を開けるとセナだった。
セナ:「では、行ってくる。」
よしひろう:「行ってらっしゃい。」
よしひろう:「ヘマするなよ~」
と言った僕の言葉に拳を上げて大丈夫だというポーズを取りながら去っていくセナ。
そろそろ僕も動く時間だ。
鏡を見て身だしなみをチェックする僕。
昨日買った籠手と合わせて見てバッチリな姿に惚れ惚れする。
紅を呼びに部屋の前まで行きノックする。
紅が部屋から出てきた。
目を見ると覚悟ができているのが理解できた。
宿屋を出て城へと向かう僕と紅。
堂々と大通りを通っていく二人。
城の前の詰め所でアスター隊長から渡された褒賞金授与式の案内状を守衛に見せる。
守衛:「よしひろうさん、この度はご苦労様でした。」
守衛:「ところでそちらのご婦人は?」
よしひろう:「「烈風」の紅です。」
と答える僕。
「え!?」と、騒然となる詰め所。
慌てて城内へと駆け込んで行く。
しばらくすると騎士が数名城内から飛び出してきた。
紅を両サイドから抱えるように捕縛する騎士達。
紅は騎士達に連れられ城内の何処かへ姿を消した。
守衛:「「烈風」の紅まで捕まえるとは!素晴らしい働きです!」
そう言いながら城内の謁見室まで僕を誘導する。
謁見の間の前に着いた。
戦いとはまた違った緊張感で冷や汗が吹き出る僕。
よしひろう:「(噛みませんように)」
ひたすらそう願う。
目の前の大きな扉が開かれた。
眼前には陛下が玉座に座っている。
左右には貴族や騎士達がズラリと並んでいた。
前へと歩き出す。
陛下の方を見ると、その横にはエリーの姿もあった。
エリーのお姉様だろうと思われる方々の姿も。
騎士の一人がここまでだと言わんばかりに手を指し示す。
そこまで進み片膝を付いて跪く僕。
陛下:「此度のそなたの働き、実に見事であった。」
陛下:「さらに「烈風」の首領まで捕らえるとは。」
陛下:「褒賞金を受けとるがよい。」
と配下の者に命じる陛下。
配下の者が黒盆を僕に差し出してくる。
金貨が入っているであろう袋が2つ乗っていた。
よしひろう:「畏れながら陛下にお願いがございます。」
陛下:「何か?言うてみよ。」
よしひろう:「褒賞金は辞退いたしますので、「烈風」の紅の恩赦を賜りたく。」
周囲にどよめきが起こった。
よしひろう:「何卒、恩赦を。お願いいたします。」
陛下はしばらく考え、そして配下の者と何やら相談を始めた。
エリーに目をやると心配そうな視線を投げ掛けてきた。
陛下が部下の騎士に何かを命じたようで、騎士が小走りで謁見の間を後にした。
しばらくすると手を縛られ両脇を騎士に抱えられた紅が謁見の間に連れてこられた。
その場で平伏する紅。
陛下:「紅とやら、この者は褒賞金を捨ててでもお前を助けたいと申し出た。」
陛下:「その価値がお主にあると思うか?」
紅:「私は数多くの過ちを犯しました。」
紅:「そのお金だけの価値は私にはありません。」
紅:「ですが、もし、赦されるのであれば、この命に替えてでもこのご恩に報いたいと存じます。」
頷く陛下。
陛下:「よしひろう。この者に恩赦を与える。」
陛下:「この者の褒賞金を除いた金を受けとるがよい。」
陛下:「紅とやら、お前にはこの王都を出てエアリスに行く事を命じる。」
陛下:「二度と王都へ入る事は許さん。」
陛下:「よしひろうよ、もし紅に二心あれば、討ち果たすべし。よいな?」
よしひろう:「はい!」
その場で紅は縄を解かれた。
再び陛下に平伏し感謝の言葉を述べる紅。
目から涙が溢れ落ちていた。
謁見の間全体に響き渡る拍手と喝采。
その場を一礼し退室する僕と紅。
城の城門前にある詰め所で紅の持っていた武器が返された。
紅:「よしひろうさん、心から感謝します。」
紅:「新しい人生をくれたあなたに心からの忠誠を誓います。」
再び紅の目に涙が溢れていた。
よしひろう:「なんだか、照れるな…」
よしひろう:「ぼくのことは呼び捨てでいいよ。」
よしひろう:「紅さんの方が歳上そうだし(笑)」
紅:「歳の話は無しよ!まぁ、26歳なんだけどね。」
とおどけて見せる紅。
よしひろう:「エアリスの街に来るのならご近所さんだね。」
紅:「そうなるね。よろしくお願いします。」
と丁寧にお辞儀をする紅。
よしひろう:「それじゃ、エアリスで。」
と紅と別れる。
その際、お金を少し持たせてやった。
何をするにもお金が必要だからだ。
万事うまくいった。
心から安堵する僕。
その頃、セナは筆記試験を受けていた。
それこそ必死に。
セナが帰ってきたのは夕暮れ時だった。
よしひろう:「どうだった?」
という僕の問いにガッツポーズで返すセナ。
満身の笑顔だった。
そう、合格したのだ。
晴れて今日から騎士を名乗る事ができるのだ。
宿屋の外の食堂で豪勢な食事を摂る僕とセナ。
今日は僕の奢りだ。
酒も進む進む。
今日は2人の女性にとって、新たな人生の門出だ。
その場に居合わせることが出来た自分を光栄に思う。
セナと別れ宿屋の自室へと戻る。
横になったとたん意識が薄れていく。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
慌ててそれを止める僕。
僕の新たな人生の門出はまだ来ない。




