僕は夢を見た(10)
ムカデに噛まれたところで目が覚めたのが夜中の3時。
気持ちを落ち着かせるためにお茶を一杯飲む。
こんな時間から起きておくのも何なので2度寝を決め込んだ。
もう一度ベッドに潜り込んで目を瞑る。
意識がだんだん遠くなる…
…気がつくと依頼のあったムカデ退治の山の中腹辺りに立っていた。
ムカデのいた洞窟へと登っていく。
洞窟の前辺りまで来ると洞窟の前で木に隠れるようにして入り口を見つめるリズの後ろ姿があった。
よしひろう:「リズ」
声をかけるとビクッとして振り向くリズ。
顔を見ると半泣き状態で鼻水まで垂らしていた。
可愛い顔が台無しだななんて考えていると
今度はリズから質問攻めにあった。
リズ:「今までどこにいたの!?」
リズ:「どうやって外に出たの!?」
リズ:「あのムカデは何!?」
返事に困る僕。
よしひろう:「まぁ落・ち・着・け」
リズに簡単に説明する事にした。
驚いたり、興奮したり、命にかかわるような事があれば別の世界に転移できる事。
寝ればまたこの世界に戻ってこれる事。
リズは分かったような分からなかったようなそんな顔をしている。
そして独り納得したような感じでこう言った。
リズ:「兄ちゃん、魔法使いか!」
よしりろう:「……そうだ!魔法使いだ!」
面倒だったので魔法使いということで納得してもらった。
さて、次はムカデ退治だ。
リズと二人、うんこ座りをしながら今後の方策を練る。
よしひろう:「リズ、これでいいな?」
リズ:「わ、わかった!やってみる!」
よしひろう:「じゃ、道具を用意するからここで大人しくまっているんだぞ。」
よしひろう:「もじ、ムカデが出てきたら逃げるんだぞ」
指をぐうの字にして返事をするリズ。
僕は山を降り、街に戻った。
そして道具やで新たな道具を買い込んだ。
松明×2
壺に入った油20リットル
2000G弱の出費。
松明と油壺をもって依頼主の山に向かう僕。
夢の中だからだろうか、不思議と重くはなかった。
洞窟の前まで来るとリズが待ってましたとばかり駆け寄ってきた。
よしひろう:「作戦開始だ」
まずは洞窟の入り口付近に油をまく。
まくのは半分くらいの量。
入り口から離れたところで松明に火をつける。
よしひろう:「いいな、僕が洞窟に入ってムカデをおびき寄せるから」
うんうんと頷くリズ。
よしひろう:「合図をしたらこの松明を投げて油に火を着けるんだぞ」
リズ:「まかせろ!」
両手でグーの字を作るリズ。
火のついた松明を1本リズに渡す。
よしひろ:「じゃ、行ってくる。」
もう一本の松明を片手に油の入った瓶を脇にかかえて恐る恐る中へと入っていく。
心の中で「僕はあんなに早く飛べるんだ。ムカデなんか怖くない。飛べるんだ」と念じる僕。
しばらく進むとあのムカデがいた。
まだこちらには気づいていない。
ムカデにむかって壺の油をぶちまける僕。
ワサワサと足を動かし始めたムカデ。
僕に気づいたようだ。
こちらに向かって来る!
きびすを返し入り口に向かって走り出す僕。
よしひろう:「飛べるんだ!」
自然と声が出ていた。
飛ぶように走る僕。
数メートル後を猛烈なスピードで追ってくるムカデ。
入り口を出た瞬間!
松明が飛んできた。
一瞬炎につつまれる自分。
よしひろう:「ひぃ!あちあちあち!」
僕は入り口から数メートル離れた場所に着地。
後を見ると炎に包まれたムカデがのたうち回っていた。
い、一応成功したみたいだけど…
リズの方を見るとゴメンなさいのポーズをしていた。
まぁ、それはいいとして…
火のついたムカデが暴れまわるせいで、周囲の枯れ草に火がつき始めていた。
ヤバイ。火事になる!
よしひろう:「リズ、回りの火を消せ!火事になる!」
周囲に燃え広がった火を足で消す二人。
ムカデはというと殻の隙間から沸騰した汁を出しながら動かなくなっていた。
よしひろう&リズ:「終わったぁぁぁ」
とへたり込む二人。
なんだか笑いが込み上げてくる。
リズ:「兄ちゃん、さっき飛んでなかったか?」
よしひろう:「気のせいだろ」
よしひろう&リズ:「あはははは」
もう一度洞窟の中に入り、もうムカデがいないことを確認した後に家主さんにムカデの遺骸を見てもらった。
依頼書にサインしてもらい、帰路につく二人。
疲れ果ててはいたものの依頼の成功のせいか会話が弾む。
リズ:「デカかったなー、あのムカデ」
よしひろう:「ここのムカデはあんなにデカいのか?」
リズ:「いや、あんなのは始めて見た。」
求人板の受け付けで依頼書のサインを見せて報酬の70000Gを受けとる。
経費とかで5000Gくらいかかってるけど…
リズを見るとそんなケチくさいことは言えないな…
よしひろう:「リズ、ほらお前の取り分だ」
と35000Gをリズに渡す。
屈託のない笑顔がかえってきた。
リズ:「ありがとう、兄ちゃん!」
リズ:「またいい依頼があったら二人でやろうぜ!」
そう言いながら帰っていくリズ。
お互い手を振って別れた。
疲れた…
あー、意識が遠退いていく。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
念の為にセットしておいた2回目のアラームだった。
慌てて仕事の支度をする僕。
今日も仕事だ。
自身の学の無さが情けない。orz




