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騎士を目指す少女  作者: 琥珀
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プロローグ

それは、一瞬で私の目を惹きつけた。一目見ただけで、私の目は釘付けになった。



「ライアスさん。私、騎士になりたい。」



精練された剣裁きは美しかった。剣と剣がぶつかる音と、翻るマントが、やたら頭に残った。美しかった。格好良かった。


自分も、そうありたいと思った。


***********************




「いいか、騎士ってのはまず強くなきゃいけないんだ。」


ライアスさんは人差し指をたて、少し咎めるように言う。


「そして頭も良くなきゃいけない。」


そう言って、中指もたてた。

そして、困った顔で私を見る。


「おまえの場合、二つ目は大丈夫かもしれんが、一つ目がなぁ。」


私から視線を外し、顔を上げた。そして目をぎゅっと閉じ、眉間にしわを寄せる。その状態で唸っていたがしばらくして、パッと目を開けた。


「ま、まずは殿下に相談だな。」


再び私を見て、わしゃわしゃと頭をなでた。その手は大きくて、ごつごつして、心地よかった。私は嬉しくて、でも照れくさくて、ちょっと下を見て笑った。


***********************



「この子を助けたい。」


傷だらけの娘を抱え、モルス殿下はそう仰った。


視界にちらつく炎。

耳をつんざくような、老若男女の悲鳴。



「助けたいんだ、ライアス。」


迫ってくる炎に、他を助ける余裕などない。まして王子であるならば、その御身はどれほど大切なものか。

だが、その言葉を口から出すことはなかった。

俺は、その真っ直ぐな眼差しと、炎が霞むほど光を宿した目から、逃げることは出来なかった。



***********************




「騎士になりたい?」


モルス殿下は首を傾げ、不思議そうに私を見る。嬉しそうには見えなかったので、そう言ってしまったのを、ちょっと後悔した。



「拾ってきた身としては、穏やかに暮らしてくれればそれで十分なんだけど。」



やはり騎士になるのは駄目なのだろうか。不安になって下を向いた頭を、今度は細くて、柔らかい手が優しく包んでくれた。



「でも、君を縛りつけるのは良くないよね。僕は、君がやりたいことをやってくれたら、それでいいと思っているから。」



顔を上げると、モルス殿下は優しく微笑んでいた。その笑顔が大好きだったから、嬉しくて、でもやっぱり恥ずかしくて、目をそらして笑った。


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