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自分がなぜ異世界転生ものを読みたがるのか判別できた記念エッセイ

作者: あのにます

 面白い小説の記憶がある。

 タイトルも覚えてないし、展開も覚えてない。

 ただ面白い小説を読んだという感覚だけがある。


 面白い小説を求めて本を読む。

 色々読んだが見つからない。


 小説じゃなかったのか?

 範囲を広げて探してみる。


 みんなが面白いという映画を見る。

 非常に感動するがこれじゃない。


 今期覇権と噂のアニメを見る。

 とっても面白いけどこれじゃない。


 子どものころ読んだ絵本を読む。

 新たな発見があったが、これじゃあない。


 いつか見た記憶、いつか味わった感動を探している。




 小説家になろうの作品は面白い話を読んだ過去を探させる作品が多い。

 初体験に二度目はないので同じ作品を何度も読んでも全く同じ感動は味わえない。

 だから私は似たような話や、制作陣そのままの続編や新作を求め続けてしまう。


 なろうはそういう面白かった作品を懐かしむ作品、過ぎ去った体験を思い返そうとする作品が多いと思う。

 私はいくつか理由を考えていて自分の中では納得している。



 考えた理由の一つは過去作を考慮して書く意識を持つ必然性がないことだ。

 例えば文芸誌の新人賞でデビューしようと思ったら、その文芸誌の過去の新人賞は読む。

 読んだ上で自分なりに差別化を図るはずだ。


 漫画だろうが映画だろうが、自分が意識すべき作品はある程度絞られていてそれを無視して作品を出すことは難しい。

 いや、難しかった。ネット小説という採用枠不明の世界が出来て誰かを意識して作品を書くという意味でのライバルは消えた。


 ライバルへの対抗意識がなくなったおかげで、人は独自性を考えずに好きな話を書けるようになった。

 そう思う。

 競争原理が消えて今日も世界は平和になった。



 もう一つ考えた理由がある。

 それはネット小説というニッチ産業の本質が市場にないものへの渇望にあるということだ。

 市場に無いものは特殊性癖ものなど色々あるが、その大元が過去であることは想像にかたくない。

 おおよそ金を対価に得られるものとは未来の為のものだ。

 少し先を生き延びるための食事、生活を便利にする家電、将来の為の資格など、現在から未来をすごすためのものばかりである。


 金で買えないにも関わらず過去へ向かう欲望は多い。

 楽しかった幼少期をもう一度味わいたいとか、辛くて無意味だった過去を変えたいとか、人間とはできもしないことを求めるものである。

 そういった欲望を娯楽作品の内には求められる。

 なろうに過去をやり直す作品が多いのはそういった欲望に忠実だからだと私は思う。

 逆にドラマやアニメなどが過去をやり直す作品で溢れかえってないのは、手垢がついたネタだからというだけでない。

 過去を改変する話よりも現実を何とかして未来を明るくする話の方が建設的な話に見えるからだと私は考える。



 異世界転生ものを初めて読んだ時、思い起こされた感動を私は探していた。

 ステータスがあるという性質から子供の頃ドラクエやFFで遊んだ時の感動かと始めは思っていたが私の場合は違った。


 デジモン(無印)だ。


 デジモンを見た時の感動を私は探していた。

 ゲームの中で冒険し成長する物語は当時の私にとっては衝撃的で感動的だった。


 この過去の感動を味わいたいが故に作品を求める感覚はデジモンを見直しても埋められはしなかった。

 デジモンを超える作品を見ない限り決して埋まらないと思う。

 多分デジモンを超えた作品をみてもそれを超える作品を見たい欲望に上書きされるだけだろう。


 こう書くと過去を思い出すことは無意味に見えるが、デジモンのことを思い出せて私は良かったと思っている。

 自分の中の欲望がはっきりしたからだ。

 デジモンを超える作品が世に現れるまでの無聊を慰めるために、私は異世界転生ものを読んでいる。



 ちなみに飯ものを読んでいる理由は小説なのだが、こちらはタイトルがマジで思い出せない。

 3日くらい冒険して絶食だった子供がスープを飲ませて貰って吐くシーンがあった作品のような気がするのだが、タイトルも思い出せないし、読んでみたら違う話だったりしそうだ。




 もしなろう作品を読んだ時、私と似た感覚がある人は過去を思い返すことをお勧めする。

 デジモンに思い至って私はすっきりしたからだ。

 そうでなくても自分の求めるものを知っておくことは良いことだと、私は思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 子供の頃いいと思ったものはずっとそうあるということでしょうか。 [気になる点] タイトルも展開も覚えていないのに、面白かったという感情だけが残っているというのは、それはもう、面白いものとは…
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