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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
90/160

聖夜のプレゼント交換

香月よう子side

「かんぱーい!」


 四人の声が揃った。


 部屋の一角を堂々と占めている大きなオーディオ機器から「マライアキャリー」の「All(オール) I(アイ) Want(ウォント) For(フォー) Christmas(クリスマス)」を初め、部屋中に定番のクリスマスソングがエンドレスで流れている。


 あれから時間通りに竣とうのっちが訪れ、早速四人で部屋の中央の炬燵を囲み、シャンパンで……と言いたいところだが、そこは未成年。お(コチ)(ヤマ)だけどシャンメリーで乾杯をした。


「それにしても、本当にクリスマスムード満載だな。この部屋の飾りつけといい、音楽といい……」

「紅羽のミニスカサンタといい、だろ? 竣」

「あはは」


 うのっちとお佳は気楽に笑うが、紅羽は真っ赤になり、脚が炬燵の中に隠れていて心底良かったと思う。

 そして何故だか、竣まで赤くなっている。


 その照れを隠すように、竣が言った。


「このトルティーヤ、美味そうだな」

「あ、それは紅羽が作って来たのよ」

「それにこの七面鳥の丸焼き! すげえな!」

「それは、お佳のお母様が届けて下さったの」

「俺、クリスマスに本物の七面鳥(ターキー)なんて初めてだよ」

「そうよねー。普通は鶏もも肉のローストか、ケンタのチキンがせいぜいよね」

「みんな、本命のクリスマスケーキも待ってるんだから、食べ過ぎは程々にね」


 お佳の言葉にも関わらず、料理は見る見るうちになくなっていく。

 そして、クラスメートの恋バナ、教授への愚痴、それぞれのサークル活動、そして理想の教師像に対する熱い想いなど……とにかく話題が尽きない。


みんな、食べて、飲んで、喋って……それは大騒ぎだ。



 そして────── 



 料理の皿もほぼ空になった頃。

 お佳と紅羽が、空いた料理皿を一旦キッチンへ下げた。

 そして、お佳が冷蔵庫からケーキの箱を二つ、炬燵テーブルに運んできて、箱からケーキを取り出した途端、


「美味しそう……!」


 甘い物には目がない紅羽が、開口一番にそう言った。


 お佳のお母様の手作りというクリスマスケーキは、新鮮な大粒の苺でふんだんに彩られ、マジパンのサンタクロースに柊の葉、「Merry(メリー) Christmas(クリスマス)」のプレートが飾ってある5号サイズの生クリームのホールケーキ。そして、チョコレートクリームの本格的なブッシュドノエルだった。


それを器用にお佳がケーキナイフでカットして、四人のケーキ皿に取り分けると言った。


「飲み物は何がいい? 温かいものでもいいわよ。作るから」

「じゃあ俺、ホットのカフェオレ。シュガー抜きで」

「あ、俺は砂糖たっぷりな!」

「お佳、ストレートの紅茶お願いできる? プレーンで」

「オッケー。任せて」 


 そうして、ホットのカフェオレ、ダージリンの温かい紅茶もテーブルに並び、


「メリークリスマス!」


 四人が改めて、乾杯した。


「あ……」

「どうしたの? 紅羽?」

「あ、あのね……」

紅羽は、持ってきたトートバッグから、例のものを取り出して言った。


「これ……。ささやかだけど、みんなにプレゼント」


「え? それなら私も」

「俺らだって!」

三人の声が被る。


「みんな考えることは同じよね」

 お佳が苦笑し、言った。

「じゃあ、まずは紅羽から」

「うん」


 紅羽はシールの色を見て、間違わないようそれぞれにプレゼントを手渡した。


「……『Vielen(フィーレン) Dank(ダンク)』……「ありがとう」、か」

 竣が呟いた。

「俺のは、『Guten(グーテン) Morgen(モーゲン) !』「おはよう!」だよな」

「ねえねえ、ドイツ語? 私のは?」

 一人だけフランス語選択のお佳が、マグカップに描かれている文字を竣に見せる。

「『Die(ディ) Liebe(リーベ)』「愛」だよ」


 紅羽の選んだプレゼントは、白地に黒のドイツ語がシンプルに描かれているマグカップだったのだ。


「私もお揃いで買ったの。私のは『Die(ディ) Traum(トロイム)』」 

「「夢」、か」

「四人、柄違いかあ。いいもんもらったな」



 みんなして盛り上がっているところに、

「やっぱり考えることは同じね」

と、次にお佳が三人にプレゼントを渡す。


「うわあ。本革のブックカバー! 贅沢!」

「読書が益々楽しみになるな」

「随分とカラフルだけどこれもオソロの色違いか?」

「そうよ。見ての通り紅羽がフューシャピンク。竣がコバルトブルー。うのっちはイエローグリーン。私は、レッドを買ったわよ」

「お佳も流石のセンスだな」

「私を誰だと思っているのよ」

 お佳が芝居がかって、鼻をツン!と高くする。


そして、竣とうのっちが同時に目を見合わせて、いよいよ切り出した。


「これ……俺らから」


濃紺(ネイビー)のリボンがかけてある小さな四角の箱を、紅羽とお佳、それぞれの目の前に差し出した。


「うわっ! 「Canal 4℃」? 随分と頑張ったじゃん」

アクセサリーなどそういうことにも(さと)いお佳が、リボンを解く前からそう言った。

「こんなロマンチックなクリスマスプレゼント、初めて……」

 うっとりとしたように、紅羽。


「とにかく開けてみてくれよ」


 その竣とうのっちの言葉にも、紅羽はリボンを解くのを散々勿体ながったが、結局、紅羽もお佳もそれはそうっ…と大事にリボンを紐解き、丁寧に包装紙をはがした。


 そして、水色の小箱の中に入っていたモノは……


「これ、ほんとにあんた達が選んだの?」

 お佳がそう訝るほど、そのホワイトゴールドの馬蹄形ペンダントは、お佳の趣味に叶っていた。

「私のもすごく可愛い……!」

 紅羽のペンダントは、大きなオープンハートの中に、ジルコニアの石がちょこんと乗ったピンクゴールドだ。


「ねえ! 竣。宇野君。早速身に着けてもいい?」

「ああ。俺がつけてやるよ。後ろ向いて」

竣の言葉に、紅羽は何の躊躇いもなくセミロングの黒髪をそっとかきあげ、白いうなじをみせた。

その紅羽らしからぬ(なま)めかしさに、竣は一瞬、ドキリとする。


「うわぁ。やっぱり可愛い!」

 しかし、そんなことは知らぬげに、お佳が貸してくれた鏡で胸元を何度も確かめる紅羽。

「うん。合格点!」

お佳もひどく満足げに鏡を見ながら、ペンダントに触れる。


そんな二人の心から嬉しそうな様子に、


(店頭で一時間以上、粘りに粘った甲斐があったなぁ)


と、紅羽とお佳以上に満足している竣とうのっちだった。


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