クリスマス・プレゼントには?
香月よう子side
師走も第二日曜日の午後。
紅羽は、街に出ていた。
クリスマスパーティーで渡すつもりのクリスマスプレゼントを買う為だった。
プレゼント交換をするという話は特に出てはいないが、そこはやはり「クリスマス」。それに、普段仲良くしている仲間への感謝でもある。
紅羽は、大型雑貨店「LAFT」に来た。
「LAFT」の中はもうクリスマスムード一色だ。
イルミネーション輝く大小のツリー、パーティーグッズ、色とりどりのクリスマスカード……etc
そんな中、紅羽はマグカップを探し始めた。
この寒い時期、温かい飲み物をいれる普段使いのカップは、何個あっても邪魔にはならないだろう。
センスはやはりさりげにアピールしたい。
でも予算もあるし……
色々手に取り、あれこれ探していたら、
「あ! これ素敵!」
紅羽は思わず小さく呟いていた。
しかも、柄違いで五種類もある。
どれもいいのだが迷った末、その中で四種類を選んだ。それぞれ中身がわかるように、包装紙の上に、竣には青、うのっちには緑、お佳には赤のリボンシールを貼ってもらった。ついでに自分の分はピンクにした。
その後。
セルフカフェで、温かい紅茶とスコーンを頂きながら、紅羽は逡巡していた。
この約一週間程、ずっと悩んでいることだ。
しかし、紅羽は遂に決心した。
そして、別の店へと向かった。
そこは……
一方、その頃。
「おい! 宇野。お前がここがいい、て言ったんだろ!」
「ああ。OLの姉貴が、この店の品ならリーズナブルで間違いない、て」
さっきから「CANAL 4℃」の店頭でぼそぼそと、あからさまに挙動不審な竣とうのっち。
「お客様。どのようなお品をお探しですか?」
二十代半ばくらいの若い女性店員がそう声をかけてきた。
「恋人の方へのクリスマスプレゼントでしょうか?」
それは見事な営業スマイルだ。
しかし、二人は「恋人」の一単語に、ボン!と顔を真っ赤にさせ、
「あ、あの……。恋人じゃないんですけど。同じ年の女の子に、ペンダントを……」
と、しどろもどろになっている。
「ご予算はどのくらいで?」
竣とうのっちが顔を見合わせ、
「税込み一万五千円未満で……」
と、竣が答えた。
「それでしたら、こちら十金のピンクゴールド、イエローゴールド、ホワイトゴールドでこのようなお品がございます」
店員が、予算内の品だけを全て選び出し、その中でも7、8本を提示した。
「どう思う? 宇野」
「うーん、紅羽にはこのピンクっぽい金のチェーンで、お佳にはホワイトのがいいと思う」
「だな」
しかし、トップスがハートだったり、三日月だったり、雫型や、ジルコニアの一粒石だったり……。
二人にはさっぱりお手上げだった。
それでも、安くはない買い物だ。
何より、あの二人に本当に似合う品をプレゼントして、心から喜んで欲しい。
その一心で竣とうのっちは、一つ一つ、丁寧に見ていった。
その一方で──────
お佳は、百貨店「LUMNOUS」の地下二階・文具コーナーに来ていた。
本革製のブックカバーを買う為だった。
色々な種類があったが、お佳の目をひいたのは、十種類以上カラーバリエーションのあるカラフルなブックカバーだった。
自分の分も含めて四種類、やはり色違いで購入した。
その時。
(紅羽と竣はともかく、うのっちに本革のブックカバーなんて、猫に小判ね)
と、そんなことが心に浮かび、一人クスクス笑う。
「楽しそうだね、岡田さん」
その時、急に背後から声をかけられた。
「先輩……どうしてここに……?」
そこには、いつからそこにいたのか遥人が佇んでいた。
「僕は、愛用の万年筆がちょっと調子が悪くなってね。修理を依頼しに来たんだよ」
遥人はいつものように柔らかく微笑む。
「ところで、岡田さんはクリスマス。やっぱりあのメンバーで過ごすの?」
「え? ええ……。イヴに、みんなで……」
「じゃあ、25日は空いている?」
「え?!」
「クリスマスを僕と一緒に過ごさないか?」
自分より10㎝高い遥人を見上げる。
その瞳は、柔らかな色を湛えているだけで、それ以上のことは読み取れない。
「君のマンションまで車で迎えに行くよ。午後二時に」「せ、せんぱ、い……」
「じゃあ、25日。楽しみにしている」
そう笑んで、お佳の返事も聞かずに遥人はその場を後にした。まるでそれが当然のことのように。
後には、呆然と佇むお佳だけが残された。




