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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
受験
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桜吹雪舞い散る中で

香月よう子side

(ふう。終わっちゃったなぁ)


9時半からの「入学式」は、11時頃、無事終了した。


式は、


・学長先生のお話

・代表学生による新入生誓いの言葉

・父母会会長のお話

・終わりの言葉


ざっと、こんな感じだった。


 憧れだった「鳴治館大学」の入学式。

 真剣にお話に聞き入っていたら、あっという間に終わってしまった。


(さて、これからお昼にしようかな)


 午後一時からは、各学部棟で、予定表を受け取ったり、学部長先生のお話があるという。


教育学部棟に移動する前に、紅羽は、昼食を摂ることにした。


 自宅外生の紅羽の経済事情は、決して豊かではない。

 これからの住まいも、マンションではなく、経済的負担の少ない学生寮だ。

 既に、自宅から学生寮へは引っ越してきている。


 だから、入学式の日といえども、寮で小さなお握りを二個握り、マイボトルのお茶と共に持参してきていた。

 

(どこで食べようかな)


 紅羽は、キョロキョロ辺りを見回し、そして、桜並木の下の木のベンチに座って、食べることにした。


(ああ……桜が本当に、綺麗……)


 紅羽は、頬を桜色に上気させながら、ピンク色に染まる空を見上げた。

 桜は丁度、ほぼ満開で、はらはらと儚げにその花びらが舞っている。


お握りを食べ終わってからも、紅羽は暫し、その場に佇み、桜並木に見とれていた。


(それにしても)


と、紅羽は思う。


(あの男の子、受からなかったのかな)


 式場で、辺りを見回したが、すぐに式が始まってしまい、見つけることは出来なかった。


(もう、逢えないのかなぁ……)


 そう思ったら、なんだか急に淋しさを紅羽は覚えた。

 涙が流れてきて、紅羽の頬を一筋伝った。


(もう一度……逢いたかったなぁ……)


 その時。


 一陣の風が吹き、ざあっと桜の花吹雪が舞った。

 それは、薄桃色の羽衣を羽織った天女が舞い降りてくるかのように、なんとも幻想的な美しさだった。


「紅羽ちゃん」


 桜の花びらが舞う中で、背後から声がした。


「え……?」


 振り向くとそこには。

 紺のスーツに身を包んだ、紛れもなく竣が立っていた。


「やあ。やっぱり、また逢えたね」


 竣がにこやかに歩み寄ってくる。

 紅羽は、信じられない想いで、竣を見守っていた。


「泣いたら、可愛い顔が台無しだよ」

「な、泣いてなんかないもん……!」


 紅羽は泣き顔を見られたことが恥ずかしくて、横を向き、こしこしと右手で右の瞼をこする。


「さ、探したのに、見つからなかったから、もう逢えないかと思ってた……」

 俯いたまま、紅羽は小さく呟いた。


「言っただろう? 「僕達は絶対合格する」て」

 竣は、柔らかく笑んでいる。


「改めて自己紹介するよ。県内の私立光星(こうせい)高校出身、十八歳。高遠たかとおしゅん。よろしく」

「隣の県の県立祥啓(しょうけい)高校出身、十八歳。一条いちじょう紅羽くれはです。よろしく」


 そして、二人は笑って握り拳でお互いタッチした。


「とりあず、LINEの交換しよう」

「うん!」


 はらはらと桜吹雪舞い散る中、二人は感動の再会を果たしたのだった。



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