紅羽の想い
香月よう子side
「ふうー……」
誰に言うわけでもなく紅羽は、一息ついていた。
学生寮の自分の部屋のユニットバスの中。
狭く、快適とは言い難いが、それでも普段から綺麗に掃除しているバスの湯船の中に、体を沈めている時間は、何とも言えず心地良い。
(楽しかったなぁ……今日は)
茉莉から誘われた「映画Wデート」。
映画は、封切られたばかりの王道恋愛映画だった。
あまり映画に詳しくない紅羽にも、無理なくストーリーに入り込むことが出来、二時間半後にはハンカチを握りしめ、泣きに泣いていた。
その後のパウダールームでのメイク直しがまた大変で、竣たちに笑われてしまった……!
それから、ファミレスで軽い夕食を摂りながら、映画の感想を四人で語り合うひととき。
それは、楽しい時間だった。
(茉莉ちゃんの彼氏の渉くんも、いいひとだったなあ)
背が高く、優しそうな彼は、終始さりげなく皆に気遣い、四人が気持ちよく時間を過ごせるような気配りが出来る。そんな人だった。
(茉莉ちゃん……幸せそうだったなぁ)
さすがに高三からのおつきあいというだけあり、茉莉はごく自然体で渉に接し、そして何気に甘えていた。
二人が無理なく、順調なおつきあいをしていることが、よくとってみれた。
(竣……)
その時。
紅羽の脳裏には、一瞬、竣の存在が過ぎった。
紅羽はカっと赤くなり、湯船にザブンと頭から沈んだ。
(竣…… 私のことどう思っているの……?)
天然無自覚の紅羽にも、そんな想いが段々と募っていく。
そんな秋の夜の一日だった。




