ライバル出現?!
香月よう子side
「おーい! 宇野!」
廊下の後ろの方から、竣がうのっちに声をかけた。
「おい! 宇野!」
「あ、ああ。竣か」
「なんだあ? その覇気のない声は。お前らしくないぞ」
うのっちの肩に手を乗せながら、竣が言った。
「なあ。竣……」
「何だよ?」
「お佳。最近、変わったと思わないか?」
「お佳か?」
「ああ」
うのっちは浮かない顔をしている。
「お佳。そうだな。最近、ものあたりが柔らかいような……気も」
「そうだろ? あいつらしくない、ていうか……」
うのっちは言った。
「あいつ。好きな奴ができたんじゃないかと思う」
「なんだって?!」
竣は、心底驚いたような声を出した。
「あれだけ手酷い失恋してまだ間がないぞ。それなのに好きな奴、て」
「間がないって言ったって、もう二か月くらいになる。それに早く立ち直るために新しい恋は、一番有効だ」
「確かに……それは言えるな」
竣は頷く。
「でも。誰に」
「それは……」
「心当たりあるのか?」
「いや……。あるようでなくて、ないようである」
「なんだそれ」
二人はそのまま会話に詰まった。
お佳の新しい好きな奴、て……
竣にはどうしても想像がつかなかった。
しかし。
その数日後──────
キャンパス内を教育学部棟へと歩いている竣。
(お! お佳じゃないか)
前方のベンチに一人、お佳が座っている。
「おーい、おけ……」
声をかけようとして、途中で口籠った。
誰か男子学生がお佳の側に寄り、インスタントの珈琲カップを渡した。
二人で何か喋り始める。
(なんだ、あいつ……あんな表情)
それは、竣が今まで見たことのないお佳の表情だった。
何か苦手なものを相手にしているかのような苦笑の中に、何とも言えない親しみが込められている。
お佳が、竣とうのっち以外の男に心を開いているところに、竣は初めて遭遇していた。
「お佳」
「あ、竣!」
お佳がようやく竣の存在に気づいた。
「彼は?」
「あ、彼も教育学部一年のクラスメートです。竣、こちらは、教育学部の3年の中井遥人先輩」
「どうも。教育学部一年の高遠竣です」
「やあ、後輩君」
遥人は柔らかい笑みを湛えて、竣を見た。
「お佳。3コマ目、始まるぞ」
「あ、もうお昼休み終わりね!」
お佳が慌てて立ち上がる。
「遥人先輩、珈琲ごちそうさまでした」
「ああ、またね。あ、それから次のアセンブリー忘れないで」
「はい、是非。それでは失礼します。いこ、竣」
「ああ」
そうして、二人はその場を辞した。
「お佳、今のは?」
「ああ。この前、ぶつかった時に落としたものを拾うのを手伝った先輩よ」
「それにしても……」
「何?」
「いや……。何でも」
本当は、ストレートにお佳の気持ちを聞きたかった。
でも。
その時。
うのっちが言っていたお佳の「新しい恋」とはこれか!と思った。
お佳は遥人に出逢って変わった。
それにうのっちは影響を受けている。
うのっちは遥人の存在を知っていて言ったのだろうか。
だとすれば。
うのっちにとっては、越えがたいライバルが出現したな、と竣は思った。




