再会の誓い
香月よう子side
そうして、午後の国語と英語の試験も無事終了した。
「出来どうだった?」
「うん。数学と国語はバッチリ!……と思うんだけど、英語の長文読解とヒアリングはちょっと……」
そう言って、紅羽は不安そうな顔をした。
「二教科バッチリなら、大丈夫だよ!」
竣は、紅羽を励ましてくれる。
「これからどうやって帰るの?」
竣が尋ねた。
「大学前のバス停から、中央ターミナル駅まで出て、そこから私鉄で二時間半」
「二時間半?! 県外?」
「うん。隣の県」
「僕は市内だけど、中央ターミナル駅までは同じ。一緒に帰らない?」
「喜んで!」
紅羽は、満面の笑みで答えた。
バスで15分で中央ターミナル駅には着いた。
「お別れだね」
竣が、どことなく翳りを帯びた声で言った。
「あ、LINEの交換しませんか?」
紅羽は勇気を出して言った。
「あ……。それは嬉しいけど。やめておこう」
その答えに、紅羽はなんとなく淋しさを覚えた。
しょせん、自分は竣にとって、今日一日の他人なんだと……。
しかし。
竣は言ったのだ。
「入学式で逢おう」
「え?」
「僕達は、絶対に合格する。合格して、入学式の席で再会しよう。その時、改めて自己紹介するよ」
竣は、紅羽の少し下がった優しそうな茶色い瞳を見つめ、力強く言った。
「ええ」
紅羽も、竣の黒い大きな瞳を見つめ、答えた。
そうして、紅羽と竣は、お互いの名前以外は名乗らずに、絶対合格そして再会を誓い、別れたのだった。