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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
53/160

海で。四人それぞれの想い

香月よう子side

 そして、旅行当日。朝八時。

 四人は、中央ターミナル駅の改札に集合した。


「特急電車で二時間半か。ちょっとした小旅行だよな」

「四人掛けの席、取れたの?」

「ああ、バッチリ!」

「それなら退屈しないね」


 四人は話しながら、予定の特急電車に乗った。

紅羽とお佳。竣とうのっちが隣り合わせで、向かい合って座った。


 飲み物とちょっとしたお菓子も買って乗り込んだので、修学旅行よりリラックスして、四人とも話に興じる。

 それぞれ、バイトの話や、夏季休暇の過ごし方、また休暇中に出された課題の進捗状況など、話題は尽きない。


 そして、十時半に、目的地へと無事着いた。


「ホテルのチェックインは三時だから、駅のロッカーに荷物は預けておこう。不用心だから、お金は最小限だけ持って。水着やタオル忘れるなよ」


 そうやって、駅前に広がる海へと四人はやって来た。


「ああ、気持ちいい潮風!」

 紅羽が、嬉しそうに言った。

「海の家で着替えようぜ。着替えたら、また四人で落ち合おう」


 そうして、海の家の着替え室へと入った。


「ねえ……、お佳。このビキニ、恥ずかしくない?」

 着替え終わった紅羽が、自信なさそうにお佳へ言った。

「大丈夫! ちょっと露出が物足りないけど、そのピンクの花柄にふりふりリボンの水着、紅羽に良く似合ってるわ」

「露出、て……」

 紅羽は絶句したが、濃紺(ネイビー)のセクシー系ビキニに着替えたお佳が太鼓判を押す。


そして、紅羽とお佳は、海パン姿の竣とうのっちに合流した。


「おお! お佳はさすがのナイスバディだな!」

 うのっちが、単刀直入に正直な感想を言った。

 お佳は、3サイズのメリハリがきいていて、スリムな手脚もすらりと長い。

セクシーな濃紺の水着を堂々と着こなしている。


 そんなお佳に隠れるようにして、紅羽が立っている。

「紅羽の水着も可愛いよ」

 竣が言った。


 紅羽はお佳より3㎝ほど背が低く、無駄な肉はついていないが、胸が小さく、実はそのことを気にしている。

 だから、ビキニも露出面積が少なく、リボンのフリルでカバーしている水着を選んだのだ。


「もう! 恥ずかしい……」

 紅羽は真っ赤になって、依然、お佳の後ろに隠れている。


「ほらほら。紅羽も恥ずかしがってばかりいないで、泳ぎに行きましょう!」

「だな」


 そうして、四人は海に入った。


「わあ。結構、海水温、高いね。冷たくない」

「それに、砂浜も綺麗だな」

「そりゃあ、南の海水浴場で有名なところだからな」 


 そうやって、四人は、海でのひとときを楽しんだ。


 お昼ご飯は、海の家で、おでんを食べた。


「何で、この暑いのに、海の家っておでんが人気なんだろうな」

「海で食べるおでん、てのがいいんでしょ」

 和気あいあいと、四人で食べるおでんはすごく美味しかった。

 デザートに、アイスクリームも食べた。


「ああ。楽しい! みんなで過ごす海っていいわね」

 お佳が、心底嬉しそうに、そう笑った。

 その笑顔を見て、竣とうのっちは、この旅行を計画した甲斐があったな、と密かに思っていた。


「紅羽。あっちの岩場の方に行ってみないか?」

 竣が、紅羽を誘った。

「うん! 行く」

 そうして、自然に紅羽と竣、お佳とうのっちのカップルに別れた。


「すごいね、この岩場」

 紅羽が足元に気をつけながら、竣の後を追う。

「紅羽、転ばないようにな」

 竣がそう言った矢先に、

「痛っ……!」

「紅羽! どうした?!」

 紅羽がうずくまっている。

「足の裏、貝殻で切っちゃったみたい……」

「足、見せて」

「え? い、いい!」

「恥ずかしがってる場合じゃないだろ。甘く見て、破傷風にでもなったら大変だ」

 竣は、紅羽を岩場に座らせ、切った右足の裏を見る。

「傷はそれほどでもなさそうだけど、血が出てるな」

 竣が呟く。

「早く海の家で処置した方がいいけど、すぐには歩けないだろ? ここで座って、血が止まるのを待とう」

と、竣が言った。

 

 それで、紅羽の隣に竣が座った。

「ごめんね……。迷惑かけて」

 紅羽がしゅんとしていると、

「迷惑なんかじゃないさ。それより、傷口痛まないか?」

 竣が優しくフォローする。

「うん。思ったほど痛くない」

 気丈に紅羽が言った。


 血が止まるまでの暫くの間、二人は並んで座り、いつしか無言になっていた。


(どうして、私…… こんなにドキドキするの?)


 紅羽が、自分のこれまで感じたことのない感情に戸惑っている。


 一方、竣も、ビキニ姿の紅羽が隣にいるのかと思うと、どうしても不純な想いに囚われそうになることに、必死で自分を抑えていた。


(紅羽…… 素直だし、やっぱり可愛いよなあ。

 今までオトコがいなかったのが信じられない。

 まあ、その点、宇野に感謝しなきゃならないのかな)

などと、竣は感慨にふけっていた。


 一方、お佳とうのっち。


「お前、海に来て、肌は焼かないのかよ?」

「焼かないわよ。紫外線はお肌の大敵なのよ。そんなことも知らないの? 顔も体も日焼け止め対策はばっちりよ」

「ちぇ。海で女の子の体にローション塗る、て男のロマンなんだぞ」

「何、馬鹿言ってるの。仮にそうでも、私のボディに、あんたなんかの手、触れさせるもんですか」

「相変わらず、きっついなあ。お前って」

 うのっちが苦笑する。


でも、本当に、この旅行にお佳を連れてきて良かったと、うのっちは思う。

(性格はきついけど、根はいい奴だし、どんなオトコがこいつの彼氏になるんだろうな)

 うのっちは考える。

(俺じゃダメかな……)

 そんなことを一瞬、考えた自分に、うのっちは激しく動揺した。

(俺…… こいつのこと……)

 うのっちは、初めてまともに、自分のお佳への感情と向き合っていた。




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