表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
51/160

海へ旅行に

香月よう子side

「海に行かないか?」


 そう提案したのは、竣だった。


 駅前のカフェ、皆、バイトのない日に、四人でつるんでいる時だった。


「海? 近くにメリケンパークがあるじゃない」

「そういう近場のしかも泳げない場所じゃなくてさ。こう、海水浴が出来る海。できたら、一泊二日くらいする遠出の旅行」


「いいわね! 四人で海に旅行なんて、凄く楽しそう」

 紅羽が目を輝かせて言った。


「でも三人共、バイトはどうする?」

「いざとなったら、なんとでもなるさ」


それで、一気に旅行の話で盛り上がる四人。


「でも、予算ていくらくらいかかるのかしら……」

「大体、このくらいあれば、何かあった時も困らないだろう」

と、竣が平手で五本指を立てた。


「ああ、パソコン買わなくちゃいけないのに……」

 紅羽が眉をひそめると、

「せっかくの夏季休暇、バイトで終わるのは味気ないだろ。紅羽は普段も熱心に勉強してるんだし、そのくらい自分へのご褒美だと思うぞ」

と、うのっち。


「そうよ! そうよ。うのっちもたまにはいい事言うじゃない」

「たまには、は、余計だ」

 いつものお佳とうのっちのやりとり。

 それだけ見れば、花火大会の時のお佳の憔悴ぶりは、微塵も感じられない。


しかし、そもそもこの旅行を提案したのは、誰であろう、お佳の為だった。

 ひと夏の良い想い出が出来れば、その間だけでも、お佳は大地の事を考えずに済むだろう。

 それは、先日、竣とうのっちが二人で密かに考えたアイデアだった。


 また、それとは別に、紅羽と竣の仲をもう少し接近させてやりたい。

 旅行、という非日常を体験したら、ロマンティックな海辺で、この二人の仲も少しは進展するだろう。

 黙っているが、うのっちはそう考えていた。


「……じゃあ、今から俺が宿と切符取るから、二日後。中央ターミナル駅改札、八時集合な」

と、竣が言った。

 三人が頷く。


「ねえ、紅羽。これから新しい水着買いにいこ!」

「み、水着?!」

「そうよ。どうせ紅羽のことだから、スクール水着しか持ってないでしょ」

 お佳は、したり顔で言う。


「……ま。それはそれで、いいと思うぞ」

 ぼそっと呟いたうのっちの言葉を、お佳は聞き逃さない。

「もうやーね! うのっちは。マニアックなんだから!」

「マ、マニアック?」

「ああ。紅羽はわからなくていいことよ」

 このやりとりで、場の空気が少し微妙になった。


しかし、お佳は気にすることなく、紅羽に言った。

「こうなったら、善は急げ。紅羽、今から百貨店に水着買いにいこ!」

「え、うんうん……」


 ノリノリのお佳に、紅羽が反対する理由もない。

 紅羽は、お佳に従って、席を立った。


(水着、て、どんなんだろう……

やっぱりビキニかな。ううん、私にはセパレーツが精一杯!)


 意気揚々としているお佳に対し、紅羽は若干の不安を胸に抱え、お佳と一緒にカフェを出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ