もう一組の花火大会
菜須よつ葉side
四人で来た花火大会。
紅羽と竣が前を歩いていた。その後ろをいつものようにおバカな事を言う、うのっちをお佳が突っ込むといういつものような風景が繰り広げられていた。
「うのっち、去年は花火大会来たの?」
お佳がある含みを持って聞いてみた。
「去年って受験生じゃん、花火大会なんて担任が許してくれなかったよ」
うのっちが懐かしそうにお佳に話した。
「うのっちぐらいなら先生の目を盗んでできたんじゃないの?」
「真面目な高校生だったんだよ」
「じゃあ、今は真面目じゃないんだぁ。へぇ~」
「そこを突っ込むなよ」
そんなことを話ながら竣たちと合流しようと前を見たが、二人の姿が見当たらない。
「あれ? 紅羽たちがいない」
そう言いながらスマホを取り出したお佳。
「お佳、止めておこう。ふたりにしてやろう」
そう言って、うのっちはお佳が連絡しようとしたのを止めた。
「良いの?」
お佳は、うのっちに確かめる。
「俺は、紅羽が幸せだったらそれで良いんだよ」
強がっている風でもなく、うのっちの心からの言葉だと言うのが伝わってきた。
いつもふざけてばかりいるように思っていたけど、実はここぞというときはしっかりしているのかも知れないな。と密かに思ったお佳だった。




