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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
43/160

竣とうのっちの男子会

香月よう子side

夏季休暇も半ばに入ったある夕方。


 鳴治館大学から徒歩十二分。

 学生向けマンション「大和ハイツ」104号室。


「ここだな」

 竣が、インターホンを押した。


『はい?』

「俺だよ」

『竣か。ちょっと待てよ』

そうして、ドアから顔を出したのは、うのっち。


「まあ、上がれよ」

「おお」


 竣は、六畳1Kのうのっちの住む部屋へと入った。


「お前なあ。いくら男の一人暮らしでも、これは酷いと思うぞ」

 部屋の中を一見した竣の感想。

 狭い部屋中に、本や衣類が散乱している。


「ああ、気にするな。女を連れ込むような真似はしないから」

「とりま、これだけ買ってきた」

 竣は、部屋の中央のテーブルに、コンビニで買ってきた差し入れを取り出した。


「おお! 助かるぜ」

 

 それは、夕食用に「冷やし中華」二人分。1.5リットル「コーラ」に「爽健美茶」。つまみに、「ポテチ」などのスナック菓子。  

そして、うのっちから頼まれていた「ボディシャンプー」と「ボックスティッシュ」。


「お前、コンビニでこんなもん買うなよ。せっかくのバイト代が台無しだろ」

「う…、わかってるよ! でも、本当、近頃のコンビニて、何でも揃ってるだろ」

と、うのっち。


「とりあえず、飯食おうぜ」

「ああ」


 そして二人は、竣の買ってきた冷やし中華を食べた。


「バイトどうだよ?」

「引っ越しのバイトな。あれ、時給は高いけど、やっぱ、堪えるぜ。このくそ暑い中、力仕事だからな。お前こそ本屋のバイト、どうなんだ?」

「ああ、好きな本でやってるから、苦にはならないけど、これも結構な力仕事だぜ。学生バイトはそうゆうの、やらされるからな」


 二人は、食べながらも会話が弾む。


「……で、小田絵梨華。どうなったんだよ?」

「ああ、きっぱり拒否った。俺の好みじゃない」

 あっさりとそう返答した竣に、

「お前の好みは、紅羽だもんな」

と、うのっちが茶化す。


「前から聞こうと思ってたんだけどさ。……高校時代、お前と紅羽って、どういう関係だったんだよ?」

 竣が、生真面目にそう問うた。


「ああ。ただの昔なじみのクラスメートだよ。お前が勘繰るような仲じゃねぇ」

「でも、お前が紅羽に、虫がつかないよう目を光らせてたんだろ」

「ま、紅羽はああいうタイプだから、周りからは「高嶺の花」扱いされてたけどな」

 答えるうのっち。


「お前だって好きなんだろ? 紅羽のこと」

 そのストレートな竣の問いに、

「好きだよ」

と、うのっちはさらりと答えた。


「俺達、ライバル同士てことか?」

 竣のその問いに、

「俺はお前のライバルにはならねーよ」

「どうしてだよ?」

「お前の方が、紅羽に相応しいからな」

と、うのっちは言った。


「どういう意味だよ」

 訝しむ竣に、

「俺は、紅羽に幸せになって欲しい。それだけだよ」

そう、うのっちは、答えた。


 いつもお茶らけているうのっちが、その時だけは真剣な顔をしていることに、竣は気付いた。


(俺よりも、こいつの想いの方が深いのかもしれない) 


初めて竣が、紅羽に対するうのっちの想いを受け止めた瞬間だった。


 しかし、竣は言った。

「お前、お佳のことはどう思ってるんだ?」


 竣のその問いに、うのっちはむせる。


「なんで、ここであいつの話が出てくるんだよ?」

 ごくごくと爽健美茶を飲みながら、うのっち。


「いや。普段から、案外いい組み合わせかも、と思ってるからさ」

「はあ? あいつもそれこそ「高嶺の花」だろ。第一、あいつ本人が、俺の事なんか気にも留めてないだろ」

「そうでもないかもしれないぜ?」

「何でだよ」

「あいつのじゃじゃ馬をいなせるのは、お前くらいのもんだろ」

「そうかあ? 紅羽並みの美人で、いいとこの「お嬢」のあいつがだぜ。俺なんかに目をくれるかよ」

「お前は、自己評価が低すぎ」

「お前が言うなよ」


 そうして、男同士の友情の夕べは更けていくのだった。



 

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