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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
40/160

偶然の出逢い

香月よう子side

 八月葉月に入り、紅羽の「La() Violleta(ヴィオレツタ)」でのアルバイトも板についてきた頃。


 午後6時にバイトが終わると、紅羽は真っ先に駅前の本屋に立ち寄った。

 今日発売の新刊があるのだ。

 それをいち早くゲットしようと、紅羽はウキウキと店内で、目当ての本を探した。


「あ、あった!」


 平積みにされていたのだろうが、もう最後の一冊しかない。

 急いで、その本に手を出した時。

 同時に本に手を出した者がいた。


「あ、あのごめんなさ……」

 そこまで言いかけて、あっと紅羽は小さな声をあげた。


「一条さん」

 相手も驚いている。

 それは、「文士会」の同期、小田(おだ)()梨華(りか)だったのだ。


「一条さんもこの本買いに来たの?」

 絵梨華がそう問いかけた。

「う、うん……」

 正直に本音で答えた紅羽。

「困ったわね。私も今日発売のこの本、すごく楽しみにしていたの」


 それは、(とも)()(じゆん)氏の「太閤を継ぐもの 逆境から始まる豊臣秀頼への転生ライフ」だった。


 二人で気まずく顔を見合わせていると、

「紅羽」

「竣……!?」

 そこに、男物のエプロンをかけ、十冊程の単行本を手にしている峻が立っていた。


「竣のバイト先て、ここだったの?」

「ああ。やっぱりバイトも好きな所でしたいからな」

と、竣は言った。

 そう言えば、普段から竣とは、本の話題で盛り上がることも多いことを、紅羽は改めて思い出していた。


「その本がどうかしたのか?」

「う、うん……私も、小田さんもこの本を買いに来たんだけど、もう一冊しかなくて……」

そう紅羽が答えると、

「ちょっと、ここで待ってて」

 竣は、店の奥にひっこんで行った。


「一条さんて、こういう本好きなの?」

 絵梨華がそう問うた。


「うん。私は、自己紹介の時に言ったように、雑読なの。

純文学でも、恋愛モノでも、ファンタジーでも、面白そうな本には、何でも手を出すわ」

「へえ。いい趣味じゃない」

「でも、自分では書けなくて……」

「「清流」夏号の「都会の雨」読んだわよ。処女作なんですって? 良く書けてると思うわ」

 絵梨華がにっこりと微笑んだ。

茶色にカラーリングしている艶のある髪は、涼し気に後ろで編みこんである。身長は紅羽と同じ162㎝位。

 そして、今時の女子大生ファッションに身を包んだ絵梨華のその笑顔は、紘子(こうこ)先輩とも、またお佳の笑顔とも違う魅力に溢れている。


「あ、有難う……」


 そんな会話を交わしていると、すぐに竣が戻って来た。

「はい」

 竣が一冊の本を紅羽に渡した。

「これ……?! この新刊じゃない!」

「俺も買ったんだよ。譲るよ」

「で、でも……」

「いいから」

と、竣は紅羽にその本を手渡した。


「ねえねえ。一条さん。彼のこと紹介して」

 絵梨華が目を輝かせながら、そう紅羽に言った。


「あ、彼、私と同じ教育学部のクラスメート」

「高遠竣だよ。君は?」

「私は小田おだ絵梨華えりか。鳴治館の一年生。経済学部。一条さんと同じ「文士会」メンバーよ。宜しくね!」


 絵梨華は何かを期待するような瞳をして、竣の顔を見つめていた。



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