救世主の王子様
香月 よう子side
「君。ペンケースがないの? これ、使って」
隣の席の男子が、一本の鉛筆と小さな消しゴムを差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます……!!」
紅羽は、意外な展開に、御礼を言うのが精一杯だった。
そうこうしている間に、試験官が入室してきた。
試験用紙が配られる。
そして、すぐに試験が始まった。
科目は、数学。
紅羽の得意な科目だ。
動揺している場合じゃない。
集中しなきゃ!
紅羽は、一心不乱に問題に取り組んだ。
そして──────
無事に、数学の試験は終了した。
紅羽は、隣の男子を見た。
「あ、あの……。ありがとうございます! ペンを貸して頂い……」
そこまで言いかけて、「あっ!」と思わず声が出た。
それは、試験前に、廊下の角でぶつかった男の子だったからだ。
「やっぱり、君だったのか」
そう言いながらも、彼も驚いたような顔をしている。
「悪かったね。僕とぶつかったせいで、ペンケースを落としたんだろう?」
「あ、あの。あれは私の不注意で……」
紅羽は、しどろもどろになっている。
「今から、昼食休憩だけど、良かったら一緒に食べない?」
「え? いいんですか?」
「勿論! 僕は、高遠竣。君は?」
「一条紅羽です」
「紅羽ちゃんか。可愛い名前だね」
そんな風に、紅羽は竣と出逢ったのだった。