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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
18/160

鳴治館大学文士会

香月よう子side

それから数日後の木曜日のお昼休み。

紅羽は、やはり竣たち三人と一緒に学食でお昼ご飯を食べていた。


「ねえ、次の「アセンブリー」て、クラブ活動時間のことでしょ? みんな、何かサークル入ったの?」

佳が皆の顔を見ながら、言った。


「俺は、体育会硬式テニス部」

と、竣が答えた。


「よりによって体育会?! 竣って熱血漢なのねー」

感心したように、佳が言う。

「中高六年間やってたからな。今更、ミーハーなサークルでやりたくはないよ」


「私もテニスだけど、そのミーハーなサークルの方。「デジャヴュ」ていう。他大学合同サークルで、活動は週末土曜日午後だから、「アセンブリー」は関係ないの。だから、「サティア」でお茶しながら、講義の予習でもするわ。紅羽は?」


「私は……「鳴治館大学文士会」ていう文芸サークル」

「紅羽、また文芸部かよ!」

うのっちが声をあげるのを、横目で見る竣。


「そういうお前はどうなんだよ?」

「俺? 俺は、今のところ未定。講義も結構しんどいし、「アセンブリー」の時間は、「LL教室」で映画でも観とくぜ」


そう答えたうのっちに、

「え? 「LL教室」て、映画を観られるの?」

と、紅羽が食いついた、


「ああ。もっとも、昔の品王方正な映画ばっかみたいだけど、所謂「名作」てヤツは完備してるみたいだぜ」

「へえ。空きコマとか利用できるね!」

「だな」


そういう会話を交わした後、うのっちは「LL教室」へ、佳は学内のカフェ「サティア」へ、紅羽と竣は、「サークル棟」のそれぞれの部室へと向かった。




『鳴治館大学文士会』

そのプレートが下がっている部室の前に、紅羽は佇んでいる。


あの入学式のオリエンテーションの後、背の低い茶縁眼鏡の女子学生に掴まって、「文士会」に入部することになったけれど。


(ああ、どうしよう……。確かに高校時代、文芸部だったし、本を読むのも好きだけど……)


そう、紅羽が逡巡していると、


「紅羽ちゃん?!」

後ろから声をかけられた。

振り向くと、あの女子学生が立っていた。



「よく来てくれたわね! さ、入って」

と、愛想よくそう声をかけられ、部室に入ると、既に数人の学生が、部屋の中央のテーブルを囲み、談笑している。


「やあ、一条さん。来てくれたね!……これで、新入生全員揃ったかな」

そう言ったのは、あの「後藤(ごとう) (けん)」部長。


「じゃあ、今年度初の「文士会」のミーティングを始めます」

と、後藤は言った。


「まず、新入部員の紹介です。今年は、男子一名、女子三名が現在のところ入部希望書を提出してくれています」


よく見ると、紅羽の横に三人の学生が立っている。


「そっち右からそれぞれ、簡単に自己紹介してください」


「あー、医学部一年の松永(まつなが)彰吾(しようご)です。好きなジャンルは、純文学。その方面で賞を狙ってます。宜しく」

そう挨拶したのは、黒縁の眼鏡をかけたいかにも医学部生な長身男子。いわゆる真面目系。


「あ、私、経済学部一年の小田(おだ)()梨華(りか)です。好きなジャンルは、ラノベなら何でも。よろしくお願いします」

その次は、今時のファッションに身を包み、綺麗にメイクもしたどちらかと言えばイケイケの女子学生。何故、文士会に入部する気になったのかは謎。


「私は、文学学部一年の長谷川(はせがわ)(ここ)()です。好きなジャンルは、童話、ファンタジー系です。よろしくお願いします」

そう言ったのは、地味目の女子学生。でも、メイクを施していないその肌は、透き通るように綺麗だ。


短い挨拶の中にも、皆の個性が見て取れた。


そして、皆の視線が紅羽に集中する。


「あ……私……、教育学部一年の一条紅羽です。好きなジャンル、というより平たく何でも読みます。よろしくお願いします」


紅羽が挨拶を終えると、その場の数人の先輩から小さな拍手が涌いた。


「じゃあ、改めて自己紹介します。僕が、部長の文学部三年の後藤 健です。読むのも書くのも純文学が好きだから、そこの松永くんのライバルになるのかな? そして、彼女が……」

と、後藤は、脇に立つ後藤より更に小柄な学生を見た。


「副部長の教育学部三年の小仲(こなか)紘子(こうこ)です。好きなジャンルは、恋愛モノを主に読み書きしています。宜しくね」


そう、挨拶したのは、あの茶縁眼鏡の女子学生だった。

入学式の時と変わらない愛嬌たっぷりの笑顔だ。


そのお日様のように明るい笑顔を見ていると、なんだかこの部でもうまくやっていけそうな気がする紅羽だった。



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