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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学2年生
148/160

ロマンティックなイヴを二人で

香月よう子side

 挿絵(By みてみん)





 外は、微かに雪が舞っている

 街は明るい声に彩られている

 どこからともなく

 ”MERRY CHRISTMAS !!”


 聖なる一日

 心弾む一日


 今日は

 ”WHITE CHRISTMAS”


 

「佳。何がいい?」

 黒い革張りのメニューを遥人は、お佳の目の前に提示する。

「私は……カクテルのことは、詳しくはなくて……」

 お佳は、声を落として答える。

「でも、アルコールは大丈夫だったね?」

「はい。二十歳になってから紅羽と何度か飲んでみました」

「オレンジジュースは好きだったかな?」

「はい」

「だったら……」


 暗い照明の下でも光る黒いサテン地のリボンブラウスにマーメイドラインロングスカート姿のやけにスレンダーな若いホステスに、遥人は何事かオーダーした。


遥人と過ごす二度目のクリスマス……正確には、恋人と過ごす初めての「クリスマス・イヴ」をお佳は遥人と共に過ごしている。


 ここは、「クラウン・アソシアプラザホテル」の15階、メインバー「エストマーレ」の一角。

日常の喧騒を離れたクラシカルな空間。

「大人のための隠れ家」と称しても過言ではないそこは、夜を楽しむ大人の雰囲気に包まれている。 


 程なく、二人の前に二杯のカクテルが供された。

 お佳の前には「ミモザ」……それは、鮮やかな黄金色(こがねいろ)のミモザの花に似たシャンパンベースのカクテル。

「遥人先輩のカクテルは……?」

「ああ。「スプリッツァー」白ワインをソーダで割ったカクテルだよ」


「乾杯」

 二人のグラスが重なり合う。


「美味しい……オレンジジュースみたい」

「この世で最も美味しく、贅沢なオレンジジュースだからね」


 そうして、最高にロマンティックなイヴを二人は過ごしていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆



「綺麗……」


 お佳が、アソシアホテルの48階の客室の窓辺から遥か眼下に広がる景色を見下ろしている。

 小さく煌くビルのネオン。

 車のテールランプがゆっくりと動いていく。


「佳」

「先輩……」


 遥人が後ろからお佳を抱き締め、うなじに口づける。


「シャワーを浴びておいで」

 遥人がお佳の耳元で囁く。


お佳は、「はい」と答えると、遥人の腕から逃れようとした。

しかし、遥人はなかなか腕の力を緩めない。

「先輩……シャワーが浴びられません」

 拗ねたようにお佳が呟く。

 仕方なさそうに、ようやく遥人はお佳を解放した。

 お佳はバスルームへ、遥人はダブルベッドへと消える。


シャワーの水音が響く。


シャワーを浴びながらお佳は、まだドキドキと高なる胸の鼓動を意識する。

遥人とこうして「夜」を過ごすのは、何度目になるだろう。

 あの夏の日からしかし、まだ数えられる程度にしか、お佳は遥人と肌をあわせていない。

それでも、お佳は今ではバスローブだけを纏い、ベッドへと向かうことが出来る。


そっと、ベッドの中に入ると、たちまち遥人に抱き寄せられる。


 息づく吐息

 熱い口づけ……


「佳」

「先輩……」


 そう呟いたお佳に、

「ベッドの中では、「先輩」はやめてくれと言っただろう」

 遥人が窘める。


「は、ると…さん……」

お佳にはその呼び方はしかしまだ慣れない。

 頬を紅潮させ、目を閉じながらお佳は呟く。


 それでも、厳かで華やかな「聖夜(イヴ)」の一晩(ひととき)をお佳は、遥人と共にたおやかに流されていく。


 それは、あの熱帯夜の夜のように熱い夜だった。

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