宇野宅で……
菜須よつ葉side
『ゴールデンウィークお友達連れて帰っていらっしゃいよ。もちろんお泊まりもオッケイよ』
と母に言われていたうのっち。
何だかんだ言いそびれていたが、母からの催促が酷くなってきたし重い腰をあげたうのっち。
「竣、紅羽。ちょっと聞いてもいいか?」
「どうした?」
「宇野君、なぁに?」
「お前らゴールデンウィーク忙しいか?」
「バイトが数日入っているくらい」
「私も」
「母さんが、友達連れてこいって煩くてさぁ……嫌じゃなかったら家でお泊まり会なんてどう?」
「俺は構わないよ」
「おぉ! サンキュー竣」
「私も大丈夫だよ」
「おぉ、紅羽もサンキュー」
「これで毎日煩い催促が回避される!!」
「お前、どれだけ溜め込んでたんだよ、早く言ってくれたらこんなに悩まずに済んだんじゃないの?」
「竣、そこはサラッと流しておいてくれよ」
こんな会話で盛り上がっていたとき、紅羽がうのっちに問いかけた。
「宇野君、お佳にも声かけようか? あっ、宇野君から伝える?」
竣は紅羽の言葉に
(紅羽……)
と仕方ないなぁ……と内心思っていた。
「先輩と過ごすの邪魔したら悪いだろ。良いよ、わざわざ言わなくて」
といううのっちだったが竣が
「知らせないのも変だろ?」
「私が声をかけておくよ。返事は伝えるわ」
紅羽が、話をまとめた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
竣と紅羽は最寄り駅で待ち合わせをしていた。ふたりで手土産を買うために前もって話し合っていた。何が良いかふたりで店内をクルクル何周もしていた。
「これが良いかな?」
紅羽がひとつの菓子折りを選んだ。
「あぁ、そうだな。そうしよう」
会計に行きふたりで半分づつ出しあった。
そして竣のスマホにうのっちからラインが入った
『車できたから駅前のロータリーに居て』
ラインを見た竣は紅羽に
「車で来たらしい。ロータリーに居てだって」
「そう。じゃあ急ごう」
ふたりで駅前のロータリーに着くと、1台の車の助手席からうのっちが出てきた。
「竣!」
竣を呼び手を振っているうのっち。
「アイツ小学生か!」
「あはは……宇野君らしいね」
静かに歩いていくふたり。
「今日はサンキューな!」
「否、ありがとうな」
「宇野君、お招きありがとう」
そんな会話をしていると、運転席から一人の女性が声をかけた。
「ちょっと、たくちゃん! 私も仲間に入れなさいよ」
「母さん、とりあえず家に帰ってからにしよ」
「じゃあ早く車に乗りなさいよ」
そう言われたうのっちは後部座席の扉を開けて竣たちに声をかけた。
「乗って」
竣と紅羽は後部座席に乗り込んだ。そのとたん
「まぁ、イケメンくんとかわいい子ねぇ。本当にたくちゃんの友達なの?」
「母さん、帰ってからゆっくり話したら良いだろ!」
ちょっとムッとしたうのっちだったが敢えて何も言わなかった。言ったらどうなるのか見当がついていたから我慢したのだった。
うのっちのお母さんは、160cmくらいで少しふっくらしている。オレンジ系の明るい色の上着を羽織っていてそれがよく似合う。穏やかな雰囲気で、けれどお喋りが大好きそうな、いかにもうのっちの母という顔と雰囲気をした賑やかなお母さんだ。
家につき、車を降りて宇野宅にお邪魔する。
次話「うのっちの母」に続きます。




