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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学2年生
124/160

美しいライバル

香月よう子side

挿絵(By みてみん)





 新学年になってから初めての部活動の時間「アセンブリー」。


 お佳の入部しているピアノ部は、「鳴治館大学ピアノ部・新入生歓迎演奏会」を開いた。

 一コマ90分のアセンブリーの時間内に終わるよう、出演者は八名。曲も短めの選曲が多い。


 その中でお佳は、「副部長」として、第一奏者を務めた。

 曲は、得意なショパン。「スケルツォ第三番」。

 それは、盛大な拍手喝采を受けた。


 トリは、「部長」の「医学部三年・高梨(たかなし)大輔(だいすけ)」。

遥人には及ばないものの、ラヴェルを得意とするやはりテクニシャンで、ラヴェルの「水の戯れ」を水際で水と遊んでいるような、清涼感溢れる趣き深い演奏で披露した。


 終演後、アセンブリーの終了時間まで約30分。

 新入生と部員の交流会が図られた。

 新入生の疑問や不安に応えるべく、部員が丁寧に、優しく接する。


「岡田先輩」


 その時。

 ある新入生が、お佳に声をかけた。


「はい?」

「あなたのショパン、美しいけど、間違ってると思います」


 その一言で、その場が凍り付く。


(誰だ? 岡田さんにそんなことを言うのは?!)


 皆が一度に注目したその新入生は、中性的でやや小柄なスレンダーの肢体。およそ無駄な肉は全くついていない。ショートカットの黒髪で、鼻梁がすっと通り、肌も透き通った美しい学生。ミリタリー系パンツルックで、ぱっと見では、男性か女性か見分けがつきにくい。


「あなたは……?」

「医学部一年の中井(なかい)優斗(ゆうと)です」 

 およそ新入生とは思えない落ち着き方で、優斗は続ける。

「あなたのショパンは、言ってみれば「演歌」です。情には訴えかけるけど、基本的なテクニックは間違いが多い。そんな基礎的なことをおろそかにするクラブですか? この大学のピアノ部は」


場がざわめく。


 その時。


「そこまでだ、優斗」


 間に入ったのは、遥人だった。


「お前は……。もめ事を起こすなとあれ程言っていただろう」

遥人が溜息をつきながら、言う。

 

「兄さん」


(兄さん……?!?)


場に更なる動揺が走る。


「……ああ。紹介するよ。僕の二歳年下の弟……」

「中井優斗です。一浪したので一年ですが、本来は岡田先輩と同じ年です」



明らかにお佳に敵意の見える目で、優斗は言った。

 それは、ピアノ部にとっても、お佳にとっても一波乱を予感させる鮮やかな登場だった。

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