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未来へ繋がる絆  作者: 香月 よつ葉
大学1年生
118/160

ミッドナイト・ガールズ・トーク~後編~

香月よう子side

 紅羽は瞬間、目を見張った。


 紅羽も、お佳とうのっちのコンビは最高に良い鉄板だと思っている。

 しかし、今、お佳は遥人先輩と付き合っている。

 もしお佳が、遥人先輩を好きになる前にうのっちの存在に気づいていれば、何の問題も起きなかっただろう。

 でも、恋愛に「もし」「たら」「れば」は意味をなさない。そのくらいのことは紅羽にもわかる。


「私は、遥人先輩が好きよ。なのに……肝心な時に限って、大地さんだけでなく、うのっちの存在も胸を過ぎるの……。今頃になってうのっちに対する想いが、私の先輩に対する気持ちの妨げになっているのかと思うとそんな自分は信じられないし、理解できない。まるで二股かけてるみたいじゃない。そんな自分は自分でも許せない」


 お佳が続ける。


「遥人先輩とお付き合いを始めた冬期休暇の頃は、先輩の存在が大きくなるばかりで。それで、出されていた課題にも集中できなくて。休み明けに案の定、成績C評価だったでしょ。それから。……ヴァレンタインデーの日。先輩に……抱かれそうになって。でも、私は先輩について行けなかった。ホワイトデーの日もそうだわ。それで、大地さんのことを打ち明けたけど、でも、先輩は私を責めたりせずに、ただ「待ってる」て言ってくれた。私の気持ちが、いつか完全に先輩のものになるその時まで」


 そこで、お佳はまた暫く口を閉じた。


「一番不可解なのは、自分のうのっちへ対する想いよ。「愛してる」なんて自覚はこれっぽちもない。「仲間」「同志」だと思ってる。……でも。私が一番辛かった時も、そうでない時も、うのっちは黙って私を見守ってくれていた。……そのことに気づいたの」


 紅羽には、何も言うことが出来なかった。

 

 自分の竣に対する想い、出来事なんて、お佳が味わった感情・体験と比べれば、まるで「おままごと」の範疇だ。

 だから、知ったような風のアドバイスなど何の役にも立たないことを紅羽は自覚している。

 そもそも紅羽には、「恋愛問題」に関して的確でスマートな助言などをすることは不可能と言って良い。そのことも紅羽は知っている。

 

「でも、先輩とお付き合いしているのに……。うのっちのことに気を取られるなんて……。先輩に申し訳なくて。いっそ先輩とお別れしようかとも悩んだ。こんな曖昧な想いでおつきあいするなんて不誠実この上ないもの。出来ることなら私は全てをリセットして、先輩のこともうのっちのことも吹っ切って全てを忘れてしまいたかった。学年度末試験の頃ずっと、そんな風に心が揺れて……。だから私は、落第寸前のギリギリの単位しかとれなかったの」


お佳は宙を見つめ、深く息を吐いた。


「今のままじゃあまりにも情けなさすぎる。それに私は、元々、可愛げのない女よ。なのに……、遥人先輩もうのっちも、私のどこがいいのかしらね」


 そう自嘲気味に笑うお佳に、紅羽は思わず語気を強めた。


「そんなことない! お佳には普通の人は持ってない、望んでも持てない長所(もの)が沢山あるわ。先輩も宇野君もうわべだけじゃなく、それを見抜いているのよ。お佳の存在価値をね。だから、自暴自棄にだけはならないで。きっと、時の流れに委ねれば、落ち着くところへ……最善の道を歩んでいけるわ。だから……」

「紅羽が泣くことないでしょ?」

「だって……」

 

 涙目の紅羽に、お佳は軽く笑った。

でも、お佳が心の奥底の本当の本音を話してくれた。

 それだけで紅羽には充分だった。


今夜、二人女子会「ミッドナイト・ガールズ・トーク」に興じることが出来て本当に良かったと思いながら、いつしか深い眠りへと落ちていく二人だった。


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