女神の微笑み
香月よう子side
「あなたたちも教育学部の学生よね?」
その時。
ハッと振り向くと、艶のある茶色のロングの巻き髪に、紅羽よりやや長身のスレンダーな肢体、それは綺麗に整った美貌の持ち主がそこに立っていた。
「さっきのオリエンテーション、随分、二人仲良さそうだったけど、おつきあいしてるの?」
「え、ええ、えええ??? そんなことない! ね、竣」
「あ、ああ。まだ、な……」
「まだ、てことはこれからつきあうの?」
「え!? そういうわけでは……」
紅羽はしどろもどろになっている。
「君、誰?」
竣は、落ち着きを取り戻すと、彼女に尋ねた。
「ああ、ごめんなさい。紹介が遅れて。私は、岡田佳。隣の市の静真女子学院出身、十八歳。教育学部一年生よ」
紅羽は、改めてまじまじと彼女を見つめる。
主張しすぎない奥二重の瞳。茶色がかった虹彩がとても綺麗だ。
(こんなに綺麗な娘がいるんだなぁ……)
紅羽は、しみじみと思った。
「なんだ。同じ教育学部新入生か。僕は、高遠竣。市内の光星高校出身、十八歳」
「私は、一条紅羽。隣の県の祥啓高校出身、十八歳よ」
「私のことは、「お佳」て呼んで。すたれかかってる時代劇みたいだけど、昔からそう呼ばれているの。その代わり、あなたたちのことも「竣」「紅羽」て、呼んでもいい?」
佳は物怖じしない、屈託のない表情でそう言った。
「勿論! ね、竣」
「ああ」
二人とも同意する。
「あー、良かった! 私の学校、エスカレーターで、外部進学者はほとんどいないの。だから、お友達が欲しかったの。これから仲良くしていきましょう」
佳は嬉しそうに笑った。
その微笑みがまた、女神のような美しさだと、紅羽は思った。




