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セーラー○ーンの世代です

「まぁ、バカ息子とでも言いたいんじゃないかな?」

言われる筋合いはないけど、と軽く肩を竦める薫。

「もう一個入ってたみたいだけど、それは何?」

「…開けてみます」

何やら薄い箱のようなものに入れられているようだが、これはなんだ…?

「…これ……」

「どうしたの?なにか妙なものでも……え」

覗きこんだ薫の目からあわててそれを隠すが、一歩遅かった。

「み、見ました…!?」

「見てない、僕は見てないよ雛ちゃん、派手な下着のセットなんて!」

「思いっきり見てるじゃないですか!っていうか変な表現するのやめてください!これは下着じゃなくて、ネグリジェです!」

そう、決してエロ下着ではない。

「これ、昔流行ったアニメのコラボ商品ですね……。こっちは本当に下着セット…。セーラー○ーンだ……」

「え?あの美少女戦士ってやつ?そんなにエロかったっけ…」

「だから卑猥な言い方しないでくださいって!あくまでコラボして似せてるってだけで実物は違いますよ」

「よかった…。子供向けアニメでそのビキニアーマーみたいな服装はさすがに……」

「夢を壊すのはやめてください!これでも子供の頃は憧れてたんですよ!?

このネグリジェ、セーラームンに出てくる月のお姫様のドレスに似せて作ってますね…。こっちの下着は完全なセーラー○ーンの制服モチーフだし…。うわ、ブラとショーツに、ミニスカートまで……」

「へぇ~。月のお姫様かぁ。……やっぱ結構な卑猥さだと思うけど……」

後半なにかボソリと言っていたようだが、聞き逃した。

「悔しいですけど、ちょっと嬉しい……。買おうと思ったときには販売終了だったんです」

お姫様のドレスを模したネグリジェを体に当てると、なんだか子供の頃に戻ったようだ。

あの雄次郎からのプレゼントというのがいかんともしがたいが、服に罪はない。

「でも、仮面ラ○ダーといいセーラー○ーンといい、なんかアニメコラボのものが多いですね」

「あれでしょ。子供の時に欲しかったけど買ってもらえなかったものを大人になってから大人買いするってやつ。

結構金額に糸目を付けない人が多いから……」

「納得です」

確かにこのセットも、結構な値段がついていたはずだ。

ネックレスといい、本当にもらってしまっていいのだろうか。

「あ、メッセージカードが入ってる……」

『僕の可愛い義娘へ!

これで僕のバカ息子を誘惑してあげてね!美少女戦士で月に代わってお仕置きしてあげちゃって!孫の誕生を心待ちにしてます(はーと)  PS孫は多ければ多いほど嬉しいです★   パパより』

 ぐしゃ。

「…ひ、雛ちゃん……!?」

「何でもありません、ええ何でもありませんとも!」

つい苛立ちのままカードを握りつぶしてしまった。

いけないいけない、モノに罪はないと先ほど自分で自分を納得させたばかりではないか。

「なにか碌でもないことでもかいたあった……?」

「……」

「うん、なんとなく想像はついたよ…御免ね、雛ちゃん」

しょぼん、とすっかり薫が意気消沈してしまった。

「でも、ネグリジェって確かパジャマみたいなものなんだよね?さっき雛ちゃん本気で嬉しそうだったし、それだけでも着てみたら?……本当は僕以外の男が贈ったものなんて着せたくないんだけど……」

「ダダ漏れの本心は聞かなかったことにします……でもそうですね、ちょっとだけ着てみたい、かな……」

下着セットはともかく、ネグリジェは言ってしまえばパジャマだ。人に見せられないものではない。

「うんうん!気に入ったら、いっそそれは廃棄しちゃって僕が同じのをもう一着買ってくるから!」

「そこまでしなくても……でも、折角だから今、着てみていいですか」

こくこくと無言でうなづく薫。

なんだか今日は着替えさせられることの多い日だなと思いながらも悪い気はしない。

部屋の鏡で着替えた自分の姿を見てみれば、ゴスロリドレスを着た時よりもはるかにテンションは上がった。

「どうですか……?」

「うん、お姫様感あるね」

「……なんですかそれ」

「すっごく似合ってるってこと!やっぱり悔しい!僕がプレゼントしたかった!」

「雄次郎さんと変に張り合うのはやめてくださいね?」

「そこは男として譲れないと思う。…雛ちゃん!今度僕と洋服を買いに行こう!ね!?」

後ろから前から、ぐるぐるまわって雛子の姿を確認しながらそわそわとした様子の薫。

まるで子供のようだ。

「今日はそれで寝るの?」

「さすがにちょっと……」

気分は上がるが、とっておきの時に着るものであって普段着ではないだろう。

「……そういえば薫さん、いつまでうちに泊まるつもりですか?」

「え」

「あれからずっと夢は見てないし、そろそろ家に帰っても……」

なんだか半同棲生活のような日々がほぼ一週間続いてしまっているが、これではいけない。

「そんな、なんでそんなこというの!?雛ちゃん!!」

「いや、だってこんな生活してるから雄次郎さんが妙な誤解してこんな下着セットなんて……」

確実に、既に一線超えていると誤解されている。

「それはいつか誤解じゃなくさせる予定だけど…じゃなくって、ほらさ!いつ何があるかわからないし!」

「でも……」

もう、安心ではなかったのか。

「僕としては正直このままなし崩し的な感じで……」

「薫さん?」

「……冗談です。でもね、心配なのは本当だから、少なくとも年内いっぱいはいさせて?ね?」

「そこまでいうなら……」

あくまで仕方なく了承した、そんな態度をとりながらも、内心では少し嬉しかった。

一人ではない暮らしに慣れきった今、薫の去った後の生活が少しだけ寂しく感じる。

……そんなことを言えば、すぐにでも薫がここへ引っ越してきそうで絶対に言えないが。

「ついでにこの下着セットも……」

「いっそ薫さんが来てみたらどうですか?」

「僕!?」

「セーラー○ーンだと、最後の方は男性が女性に変身する場合も……」

「ビキニアーマーに!?」

「だから人聞きが悪い!」


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