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話をしようか

雛子の言葉を、薫は否定することもなければ肯定することもなかった。

「さ、早く帰ろ」

そういって、雛子へ手を差し伸べただけ。

家に帰ってからも、二人の間でそれ以上夢の話が話題が登ることもなく、時は過ぎていった。

「夕飯はどうする?雛ちゃん」

「…なんか、お腹空かなくて」

夢の中では食事をとった直後だったからだろうか。空腹を感じない。

「そっか。…じゃあ、コーヒー淹れるよ」

「…はい」

部屋のソファに腰掛けながら、薫の背中を見上げる。

「さ、どうぞ」

差し出されたコーヒーは、ふんわりとした泡の乗ったカプチーノ。

コップの横にちょこんと乗せられたシナモンスティックは、店から持ってきたものだろうか。

「スパイス入りの方が身体が温まると思ってさ。シナモンは好みで加減してね」

「…美味しい」

くるりとカップの縁をスティックで一周して、ごくりと飲みこむ。

落ち着く香りだ。

薫もまた自分の分のコーヒーを手に席に着く。

「話……しようか」

何を、とは雛子も聞かなかった。

湯気の向こうの顔を見上げて、雛子がこくりとうなづく。

「その前に…一つ聞いていいですか」

「なぁに?」

「……今日の夜、私は夢を見るんでしょうか」

その問いに、薫は微笑んでカップを置いた。

「見ないよ。もう、見ない」

なぜ断言できるのか、どうしてわかるのかと。

そんなことを聞くまでもなく、雛子もまた、カップから手を離す。

「話を、続けましょうか」

「うん。……随分長い話になると思う」

とても、とても長い。



「最後の魔女と呼ばれた少女と、孤独な獣の物語だ――――」


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