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「嘘…本当にまた同じ夢…?」
その日。
今日は確実にパジャマに着替えて眠りについたはずだったのだが、気づけばまた、雛子はあの空間で目を覚ましていた。
だが昨日と全く同じかと言えばそういうわけでもなく、昨日雛子の前で崩れ去った謎のガラスはもうそこにはない。
そこからさっするに、恐らく同じ夢というよりその続きを見ているといった方が正しいようだ。
「昨日はあの扉が開く寸前で目がさめて…」
結局顔が見えなかったのだ。
今日は果たしてどうだろうか。
そう思い、台座を降りて立ち上がろうとした雛子は、次の瞬間ぎょっとのけぞった。
「だ…誰!?」
前回の夢には存在しなかった小さなゲストが、まるで雛子が起きるのを待ちわびていたかのように台座の隅に肘をかけて眠っていたのだ。
まだあどけない寝顔を見せる少年。
いかにも待ちくたびれて眠ってしまったという様子だ。
着ているものは、いかにもお貴族様といった金糸の刺繍が入った上下。
さながら小さな王子様といった装いだが、よく子供が七五三などで着用する貸衣裳などとは明らかに質が異なる。
その小さな耳には紫色の石がはめ込まれたピアスがつけられ、黄金の髪の下から時折きらりと耀いている。
「うわぁ…綺麗な子」
残念ながら身近に子供が居ない為どれくらいの年令かはよくわからないが、恐らくは小学校の低学年程度だろう。
金髪の子供など普段滅多に見る機会のない雛子は、思わずまじまじと眠る子供を眺めてしまう。
白人特有の透けるような白い肌。その頬は、幼い子供特有にふっくらと赤く染まっている。
うっかり持ち帰りたくなるような愛らしさだ。
「さ、触ってもいいかな…」
見るからにもちもちとした肌が誘惑を誘う。
微かな寝息が聞こえてくる辺り、よく眠っている。
「ちょっとだけ…」
つん、とほっぺをつつくと、思った通りの感触が。
嬉しくなり、つい調子にのって今度はそのサラサラな髪をそっと撫でる。
ーーーおぉ。
最早感嘆しか漏れない。
しかも、頭を撫でた瞬間、眠ったままの顔がうっすらと笑ったのだ。
こりゃたまらん。
なんだろうこの夢は。
想像していた展開とは大分違ってきているが、これはこれで滅茶苦茶癒される。
今は閉じているこの瞳の色はなに色だろう。
サファイアのような青?それともピアスと同じ紫?
どちらにせよ、成長が実に楽しみだ。
これ以上変に弄って起こすのも可哀想だと、少年から目を離した雛子は、他に何か変わった所はないだろうかともう一度よく辺りを見渡す。
硬質な雰囲気の部屋の中は、これといって前回と代わり映えはしない。
強いていうとしたら、前回よりも少し部屋の空気が温かく感じるのだが…。
それは気のせいか、それともこのゲストの登場による変更点なのか…。
前回の最後、開きかけた扉も今はぴったりと閉じているようだ。
今のところ誰かがこの部屋にやって来る気配はない。
ここを抜け出して扉の先を見に行ってみようか?
でも…。
「この子…。一人で置いていったら可哀想かな…」
目覚めた時、そこに誰もいなくなっていたらさぞやがっかりするのではないかと想像し、少し悩む。
かといってわざわざ起こすというのも…。
「ん…っ」
そう思いしばらく少年をながめていた雛子だが、少年が微かに声をあげ、身動いたのにどきっと胸が高鳴る。
ーーーお、起きるかな。
「わ……のま……ょ……様…」
「ん?」
何かを喋っている。
寝言だろうが、何だろう?
しかし綺麗なソプラノボイスだなとへんなところに感心しながら、もう一度よく喋らないかと口許に耳を寄せる。
そして今度はハッキリと聞き取ることのできたその言葉に、その場でがっくりと膝をついた。
しあわせそうにふにゃっと微笑み、口許を綻ばせながら少年は言う。
「私の魔女様」と。
ーーー何だそれ!?
瞬間つっこみそうになり、慌てて自分の口をふさいだ。
魔女…というのはこの場合どう考えても雛子を指しているに違いない。
まぁこんな服装をしているのだ(安定のアダム○ファミリー)そう呼ばれるのも仕方ないとは思うが…。
「わたしの」
その言葉が非常にひっかかる。
何故だろう。こんなに可愛いのに、どこか今日の薫さんを彷彿させるような…。
それとも今日彼のそばにいた時間が長かった為に夢にまで影響がでたか…。
どちらにせよこれで心は決まった。
「よし。置いていこう」
目を覚ましたら面倒なことになりそうだ。
少年の側をそっと抜けて、台座を降りようとするが…。
バタバタバタ!!
突然慌ただしい足音が扉の向こうから聞こえてくる。
「な、何…?」
この音は一人や二人ではない。
いったいこれからなにが起こるのか。
ごくりと唾をのむ雛子の前で、再びあの扉が開かれた。
今度こそその先を拝んでやると気合いを入れた雛子だったが。
バターン!!!!!!
「「「「魔女様~ーーーーー!」」」
「キャーーーーー!!」
突然大量になだれ込んできたムキムキ男性の群れに大きな悲鳴をあげ。
この日もまた、雛子の夢は途切れた。
翌朝。
「あぁ怖かった…………」
ムキムキマッチョの野太い声が耳から離れない。
5~6人はいただろうか?
槍のようなものを持っていたから衛兵なのかもしれないが、なにしろその先頭が…。
「スキンヘッドのマッチョな白髭老人とか……」
私の深層心理の一体どこからやって来た!?と自分に問いただしたくなる。
当然だがそんなものに心当たりはない。
「目覚めが悪すぎる。もう一回寝よう」
続きを見る可能性は否定できないが、恐らくそれはないような気がしていた。
どうせ仕事はないのだからゆっくり二度寝してもなんの問題もない。
もう一度深く布団をかぶり直し。
今度は、夢も見ない深い眠りについた―――。
読了ありがとうございました。




