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第二話 クラスメイトの旧友と

「あの、大丈夫ですか」

「殺しましょうか」

「えっ」

「は?」


 とある春の日。

 花壇の横で派手に転んでいる黒髪の少女を見つけて手を差し伸べてみるとまさか殺害予告を受けるとは思っていなかった裕二は、思考停止しかけていた。裕二が完全に固まって話が進まなくなりそうなところで立ち上がった琴音が話しかける。

「その制服はうちの学園の生徒かしら?なぜこんなところにいるの」

「なぜと言われても、初日から遅刻するのはカッコ悪いし余裕持って家出ただけなんだけど」

「一応先輩になるのよ、タメ口はどうなのかしら・・・学年と名前は?」

「あっすみませんセンパイ!今年から1年生の村雨裕二です」

「村雨君ね?今見た事は忘れてね」

「ちょっと衝撃的過ぎて」

「忘れなさい」

「ええ・・・は、はい」

 有無を言わせない威圧感と殺気を感じたので素直にイエスと答える裕二だったが、入学直前からこんな面白いものを目にして忘れられるわけがなかった。

「タイミングが悪かったからあなたのことは嫌いになりそうだけれど・・・早めに登校する心がけは素晴らしいわね」

「センパイもそうなんですよね?」

「いや私は早く行く理由が・・・」

ここで打ち合わせの事を完全に忘れていた琴音。さっと時計を確認して、

「・・・村雨君、走るわよっ」

「ええ?入学式まで時間ありますよね?」

「いいからっ」

 迫真の表情の琴音に押されて裕二も共に走り出す。当然、裕二には走る理由などなかった。


 そんなわけで二人が学園に着き、そのまま生徒会室へ向かう。

「村雨君、なぜ生徒会室まで来るのかしら?」

「まだ自分の教室の場所が張り出されてすらないんですけど」

「じゃあなぜこんなに早く来たのよ」

「センパイに走らされてなければもっとゆっくり来ましたよ」

「それもそうね」

 と、悪びれる様子もなく言った琴音だが、罪悪感を感じていないでもなかった。

「じゃあちょっと待ってて」

と言い残し生徒会室に入っていく。このまま放置されるんじゃないかと思う裕二だったが、それは杞憂に終わる。生徒会室から出てきた琴音が、

「じゃあ行くわよ」

と言い歩き出す。素直についていくと再び待ってて、と琴音が言い残し職員室に入っていく。再び出てきた琴音に教室の鍵を渡されて琴音が言う。

「この鍵に貼られているシールの教室を探しなさい、時間ならあるでしょう?」


 校舎が思いのほか広かったせいで割と時間はかかったが、無事他の生徒が着きはじめる前に教室を見つけることが出来たので、換気ついでに窓や扉をすべて開け放しておいて、自分の名前が書かれた紙が貼られてある席に座り、窓から空を見上げる。

「今日からここに通うんだな・・・皆来るのが楽しみだ」

「おう、どんなクラスメイトなんだろうな?」

 唐突に誰かに話しかけられる。裕二が言えたことではないが、正直まだ早い時間なので他に誰か来るわけがないと思った裕二は驚いて少しビクッと体が跳ねた。

「おいおい驚かなくてもいいぞ、多分俺は村雨と同じ理由で早く来たんだよ」

「なんで俺の名前知ってんの?と思ったら机に書いてたか・・・」

「逆にお前は俺の名前覚えてないのか?寂しいぜ、中学の時に結構会ったと思うんだけどな?お前、南中学校のテニス部だったろ?」

「テニス・・・?あっもしかして西中学校の森田か」

「忘れられてなくてよかったよ」

彼の名は森田舜(もりたしゅん)。裕二の中学校時代のテニスのライバルで、数ある地域大会の決勝や準決勝でよく当たって、顔くらいは覚えていて当然の間柄だ。

「まあ入学式に遅刻なんざしたくねえからな」

「そうだな」

「せっかく同じクラスになったんだしよろしく頼むぞ、裕二」

「おう、舜」

今の今までそれなりに顔も合わせていたし話したこともあったのに下の名前を知らなかった二人は、名前を知ると同時に自然に下の名前で呼び合っていた。少なくともボッチは避けられたと安心した裕二は、そろそろ学校に到着し始めるであろう他のクラスメイトのことを考えながらこれからの生活を楽しみに待つのであった。


 生徒たちがほぼ全員教室に入り、皆がそれぞれ親交を交わしあっているところで、裕二たちの担任である仙波先生が挨拶しながら教室に入る。まだ来ていない生徒こそ居るが、チャイムは鳴ったためもう入学式の説明は開始されていた。ひとしきりの説明を受けたのち、時間を確認しつつ生徒たちは教室の前に並び、体育館へ向かう。

 

 今から始まる入学式を終えれば、楽しいスクールライフの始まり、のはずだった---

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