RとJ
とても穏やかな木漏れ日が差し込んでいた。
白いレースのカーテンが風になびき、そのすぐちかくに少女一人腰かけている。
ぱらっとページを繰る仕草でさえ神々しい雰囲気を秘める少女は、目の前の世界に夢中なようだった。
「また、読んでるんですか。」
少女が読み終えるタイミングを見計らって声をかける青年は、すらっとした長身で綺麗な紫の瞳をしていた。その声には呆れがにじんでおり、えんび服という出で立ちから少女に仕えているのだろうか。
「ええ、とても素敵な物語なんだから。」
「ばかげた貴族の色恋沙汰の、でしょう。」
青年は悪態をつくが、その裏にも少女を敬愛する声音が隠しきれいていない。
彼は甘い花の香りがする紅茶を少女の目の前にそっと置いた。
「ライラックは、この主人公が嫌いなのね。」
少女は彼の目をじっくりと見た。その名のとおり、美しいライラック色の瞳を。
「最初はちがう女目的だったくせに、あっけなくヒロインに乗り換えて、結婚式の前にブチギレてヒロインの従兄弟を殺して・・・あげく、勝手な思い込みで自殺して・・・。
あんな身勝手な奴に、どうしてシャーン様が恋するのか。オレには理解できませんね。」
ライラックは肩をすくめる。シャーンと呼ばれた翡翠色の髪をした少女は立ち上がり、彼の褐色の頬に手を添えた。
「誠の恋をするものは、皆、一目で恋におちるものなの」
彼はどこか愁いを帯びて、彼女の指先にくちづけた。