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42 恐ろし優し 育ての親たち


「靴を脱がんかね」


 慌てて駆け寄った高志は、老婆の言葉に自分が靴のまま畳の上に立っていることに気付いた。

 六畳分の畳が綺麗に組み合わされて床の上に敷かれ、そこの真ん中に置かれた黒いちゃぶ台に手を置いて、老婆が皺の隙間から高志を睨む。


「すみません」


 片足ずつ靴を引っ張って脱ぎ、老婆の前に座った高志は静かに煙管を差し出した。


「そんなに焦ってどうする? 靴は畳の外へ置いておくれ」


「はい、すみません!」


 胸に抱くようにして持っていた靴を、高志は畳の外にそっと置いた。


「この子はいったい何をしでかしたんだい? 見たところ煙管本体に何の傷もないようだが、こりゃ酷いね」


 老婆は指先で煙管をひっくり返しては、眼鏡をかけたり上にずらしたりを繰り返し、丹念に観察している。


「傷がないのに酷い状態なのは、どうしてです? そんなの、ぼくは見たことがありません」


「だから、何をやらかしたのかといっておるのだよ」


 濃艶は高志と黒楽茶碗の間に割って入った。何をしたかと問われれば、それしか原因など思いつかない。


「ぼくの命を狙っていた男から、濃艶がぼくを守ろうとしたせいだと思います。遠い昔に神と崇められ、後に人の勝手で祟り神といわれた、黒楽茶碗の付喪神です」


「ほう、この子は濃艶というのか。それにしても付喪神が人の子を助けるとは、長く生きてきたが初めて聞いたよ」


 高志はこの旅にでた経緯と、付喪神達との関わりについて掻い摘んで話して聞かせた。


「濃艶が内側から傷ついているのは、間違いなく黒楽茶碗が最後にぼくを殺そうとしたときです。でも、あのときはすずがそれを止めたからぼくは無傷だった。どうして濃艶だけが影響を受けたのでしょう」


 小さく頷き、老婆は眼鏡を外して目頭を揉む。


「その黒楽茶碗は己では自制できぬほど、心が病んでいたのだろうね。あんたを傷つける力はすずが止めても、漏れ出る恨みと憎しみが形をとれば、近くに居たこの子はまともにそれを受ける。人を傷つけるのとは、また違った力でこの子は死にかけているのさ」


 赤い唇で笑い猩々非の帯をきちりと締めた、勝ち気な濃艶の姿が浮かぶ。

 

「助けて下さい。濃艶を、家に連れて帰りたいんです」


「さてね、やってはみるが面倒だよ。目に見える傷と違いやっかいだからね。やるだけやって、あとはこの子の気力しだいだろうさ」


 煙管を手にした老婆が立ち上がり、必要な物を取ってくるといって、畳の外に置いてあった草履をつっかけ奥へといった。

 改めて見回す店内は、思いの外広かった。

 六畳分の畳を真ん中に敷いていても、その周りには十分なスペースがあり、この字に囲むように、壁の側に設置された木のカウンターはまだ新しく、その上には瓶や棒が所狭しと並んでいた。

 壁を埋め尽くす小さな引き出しは、先に訪れた薬師屋の倍以上あるだろう。


「これだけの物を、ひとりで管理しているのか」


 人の気力も行動力も、年齢だけでは計れないのだと高志はつくづく思う。

 若さを無駄にするとはよくいうが、活力に溢れた老人をみると自分が背中にその看板を背負って歩いているようで、改めて溜息が出た。


「すず、ここなら出てきても大丈夫だよ?」


 濃艶のことも話したいのに、何度呼んでもすずは姿を現さない。


「イカ焼きを買ってやらなかったから、すねてるのか?」


 指先で鈴を小突いても、リンとも鳴りはしなかった。


「よっこらせ」


 老婆が大きな盆に香炉と瓶、棒やらハサミやら色々な物をのせて戻ってきた。

 少し丸まった腰を拳で叩きながら腰を下ろした老婆は、高志にサラシを細く切るようにいい、自分は瓶から取りだした乾燥した植物を何種類かすり鉢に入れ、擂り粉木で丹念に混ぜはじめる。


「ぼくは白河高志といいます。お婆さん、お名前は?」


 いってしまってから、女性にいきなりお婆さんは不味かったかと思ったが、老婆は気にする様子もなく、ずり下がる眼鏡の縁をくいっとあげた。


「ハナだよ。名前はハナ。ばばぁがハナ? みたいな顔をするなよ」


「いえ、そんなことは」


 そんなことはちょっとあったが、昔はヨネとかイネとかと一緒で、ハナも多かったのだろう。

 今はしわくちゃだが、ハナちゃんと呼ばれたであろう幼い頃は、きっと可愛い少女だったに違いないと高志は思った。


「切り終わりましたが、これをどうするんです?」


 細く切ったサラシをみせると、ハナは煙管を高志の前にすっと寄せる。


「これは高志の仕事だよ。サラシを煙管に通して、中を綺麗に磨くんだ。何度も新しい布に変えて、綺麗になるまで磨くんだよ」


 サラシを何とか煙管にねじ込もうとしたが、不器用なのか要領が悪いのか、どうにも上手く入っていかない。

 額にうっすらと汗が滲みはじめた頃、見かねたハナが手を出した。慣れた手つきでするすると煙管にサラシが通っていく。


「ありがとうございます」


 細い物に紐状のものを通すという作業で、老眼鏡に負けたことを恥じつつ、高志はがっくりと肩を落とした。

 ゆっくりサラシを引くと、中から白っぽい粉がぼろぼろと零れて机に落ちる。

 ハナが気にするな、といったので高志は作業を続けた。

 サラシを三回替えて、やっと粉が落ちなくなった。


「ハナさん、この粉は何でしょうか? 煙草を吸って詰まった残留物とは違うみたいですけれど」


 するとハナは、皺に埋もれて小粒な目が見えなくなるほどに、顔をくしゃりとさせて笑った。


「それは教えられん。想像はつくが濃艶がしっかりと息を吹き返したら、本人から聞くがよいさ」


 この粉に自分が関係しているのかと首を傾げていると、薬草の調合を終えたらしいハナが、煙管を香炉の上に置いた。


「この薬草に火をつけて、その煙で燻してやるのさ。人にとってのお灸に似ているね。ただし、効果はこっちが百倍優れているがね。人もこうやって燻せば早く治るだろうに、治る前に煙でやられちまうのが問題さね」


 さらりと物騒なことをいう。

 

「さあて、はじめようかね」


 線香の先に火をつけて、それを香炉の中に差し込むと火の移った薬草からもくもくと煙が立ち上る。

 頃合いを見計らっては、ハナが香炉に薬草を継ぎ足し、その度にぶわりと大きく煙が昇った。

 白かった煙が徐々に色味を帯びだした。

 雨降りの直前に浮かぶ雲を思わせる煙は、まるで未練があるように煙管にぐるぐると巻き付き、後の煙に押されて上へと昇っていく。


 カタリ


 香炉にのせられた煙管が、僅かに身じろいだ。


「濃艶? 聞こえるかい? しっかりしてくれ」


「まだじゃよ。あまり煙に近づいて直接吸うなよ。人の体には、少々きつい」


 香炉に顔を近づけた高志の肩を、ハナがそっと押さえる。確かに煙は近くに鼻を寄せると硫黄と腐ったネギを混ぜたような臭いがした。

 僅かに吸い込んだのか、高志は少しだけ咳き込み煙から顔を離す。


「今はまだ、薬草が気付け代わりになって目を覚ましただけのこと。内に溜まった澱が昇華されるには、まだ時間がかかる」


 立ち上がって奥にいったハナが、温かいお茶を入れてくれた。

 礼をいって一口飲んだ高志は、喉から逆流しそうになった液体を、慌てて手で押さえる。


「それを全部お飲み。あんたはそれで何とかなるだろうよ」


「ぼくの為の薬ですか?」


「高志が飲んだのは、苦緑神清丸だろう? そんな不思議そうな顔をするんじゃないよ。年寄りは何だって知ってるもんさ。余計なことはとくにな」


 頷くハナは笑いながら、早く飲めと手で煽る。

 どんなに苦かろうが、元はといえばこれを求めてでた旅だ。ハナが苦緑神清丸のことを知っていたのは不思議でならなかったが、今更飲まないわけにはいかないだろう。

 覚悟を決めた高志は、鼻を摘んで湯飲みの中身を一気に飲み干した。


「ぐえっ!」


 失礼は承知だが、押さえきれずにゲップまで湧いてでる。

 人の体からでたとは思えない、異臭のするゲップだった。


「ここに来たら、どんな薬が貰えると聞いていたかは知らんが、やれるのはそれだけだ。もう飲み込んでから十数年たっておろう? 飲んだ直後ならまだしも、今となってはどうしようもない。胸が痛むことがあったろう? やっかいだが、それは高志を守るためでもあるから、消すことはできないよ」


 苦みを噛みつぶして肩で息を吐く高志は、目尻に浮かんだ涙を指先で拭いながら、何とか声を絞りだそうと苦戦した。


「痛みが、止まらない、なら……この薬は、なん、の、為に?」


 何とか話してはみたものの、苦みにざらつく喉があっという間に張り付いて、再びげほりとむせ返る。


「まわりからどう聞いていったかは知らないが、苦緑神清丸は神の薬。飲んで時が経てば、体の隅々へと行き渡る。丸そのものとして取り出すことなど不可能。どこから噂を聞いたのか、黒楽茶碗も下らぬ迷信を信じたらしいの」


 自分の分は普通のお茶なのだろう。旨そうに一口啜って、ハナは幸せそうに口をしわっと窄める。


「苦緑神清丸を神が飲めば、それはただの気力剤に過ぎん。疲れた体と心を癒し、失われた気を補充する。人でいう所の風邪のような症状もこれで治る。まぁ、神は風邪など引かぬがな。だが人が飲むとき、その効能はまったく違った物となるのだよ」


「どんな?」


 ひと言だけで高志はまたもや、げほりとむせる。

 ハナは慣れた手つきで香炉に薬草を少したした。


「人の子で苦緑神清丸を飲んだ者など、歴史を紐解いても数人しかいないと聞いている。その中で飲んだ後も生きていたのは高志、おまえの他にたったひとりだ。邪な動機で口にしたなら、苦緑神清丸はその者の心から悪しき部分を食らい尽くす。邪心を持つ者から、邪心を除けばただの空箱であろう? だから、死ぬのだよ」


 そういうものなのだろうか。

 見えない人の心が、まるで形を持つかのように感じられて、高志は思わず己の胸に手を当てた。


「生き延びた者は、何の変化もなく一生を終えるか、あるいは高志のように、人ならざる者を目にするようになる。どちらに転ぶかは、天性の素質がものをいう。苦緑神清丸など飲まなくても、高志には見えない者が見えていたはずだよ。飲んだことで力が増した。まるで人の存在と遜色ない姿と声をもって現れる者達と、それとは知らずに関わってきたのだよ」


 幼い頃、高志を育てたのは自分達のようなものだと、体の弱い母の代わりに、自分たちが面倒をみたと付喪神達はいった。

 実家の奥にあった一部屋に詰め込まれた、母の集めた古道具の集まる部屋。

 そこでどのように過ごしていたのか、高志には断片的にしか思い出せないが、たしかに妖や付喪神と過ごしていた。付喪神達はその時のことを覚えていて、この旅でも自分を助けてくれたのだから。


「おっと、忘れておったわ。苦かっただろう? 口直しにこれを飲むといい」


 渡されたのはとろりとした甘酒で、高志は口を洗い流すように、何度も小分けに飲み込んだ。


「やっと喉の調子が良くなりました。もっと早く出してくれれば良かったのに」


「物忘れは年寄りの特権じゃて」


 愚痴る高志に、ハナは笑って香炉に薬草を足す。

 手にしていたのは、さっきまでとは違う薬草だった。


「薬草を、変えるのですか?」


「あぁ、そろそろ仕上げじゃて。煙を見てごらんな。灰色に渦巻いて煙管にからんでいたのに、今は白い煙がさらさらと昇っておるじゃろ? 内に溜まったものが抜けた証拠だよ。この子はもう大丈夫だ。人ではないから、邪気が己の気を損なわなくなれば、あっという間に元気になる」


「良かった」


 高志はほっと息を吐く。


「あのときすずが妙な攻撃を受け止めていて、ぼくが大丈夫だったから、てっきり濃艶も平気だと思い込んでいた。ぼくの注意が足りなかったんです。後で、濃艶に謝らなくちゃ」


「くくくっ。そんなこと、濃艶は気にしておらんと思うぞ。だが怒っておるからのう。すっかり元気になって姿を現す前に、そこらの鍋の蓋でも持ってきておいた方が良いと思うがな」


「ハナさんは、妖や付喪神の心がわかるのですか?」


「いいやわからんよ。だが、こうやって治療してやっている間は、断片的に記憶が見えるのだよ。妙な力だが、これがなければ人でない者に正しい調合の薬などつくってやれぬ。伝わってくるのは、今一番心の表層に浮かんでいる思いの事が多い。だから、早く鍋の蓋を用意しろというておる」


 今思っている以外のことで、濃艶に謝るべきことがまったく思い浮かばない。

 ハナが皺だらけの指先でつまんで入れた薬草が、香炉の中で爆ぜて赤と紫の火花が散った。

 薄く色付いた煙が、まるで空気の揺らぎなどないかのように真っ直ぐに昇っていく。昇る煙をみながら、まるで濃艶の帯と着物の色だと高志は思った。

 もう一度香炉で薬草が爆ぜ、煙管が転がって黒いちゃぶ台の上へ転がり落ちる。

 鈍い高志にでもはっきりと感じられるほどに、周りの空気が変わった。


「ハナさん、何処にあるのかな、鍋の蓋」


「遅いわ」


 次の瞬間、座る高志に覆い被さる姿勢で、濃艶が姿を現した。


「坊!」


「はい、ごめんなさい!」


 訳もわからず謝った高志をみて、濃艶がさらに顔を顰めてぽかりと頭を打った。


「煙管の手入れをしても、自分の犯した罪を思い出しもしないとは、いい度胸じゃないか」


 濃艶の赤い唇が、にやりと歪む。


「妖艶、もう大丈夫なの? だったら良かった」


「良かないね! 手入れしたときに落ちた粉を見ても思い出さないのかい? まったくあきれたトンチキだね!」


 何を叱られているのかわからず両腕で頭を庇う高志と、鬼のように上から見下ろす濃艶をみて、ハナが楽しそうにしゃがれた笑い声をあげる。


「教えてよ、何を怒ってるの?」


「何をだって? 巫山戯んじゃないよ!」


 またぽかりと打たれた。

 仁王立ちで高志を見下ろす濃艶の美しい顔が、今は夜叉にしか見えない。


「あんたはね、このあたしに小麦粉を突っ込んで吸ったんだよ! 爺さんが煙草を吸うのを真似て、よりによって小麦粉をあたしに突っ込んだんだ!」


 あの白い粉は小麦粉だったのか。煙管に小麦粉を詰めて吸う幼い日の自分の姿を思い浮かべて、高志は思わずくすりと笑った。


「笑ってんじゃないよ! この馬鹿坊が!」


 怒りながら話す濃艶によると、幼い日の高志はじいちゃんが煙管で煙草をふかすのをみて、白い粉なら白い煙がでるかと小麦粉を詰めたらしい。あとで濃艶にこってんぱんに叱られた高志は泣きながら煙管を拭いたが、煙管の内側までは掃除できなかったというわけだ。


「一生かけて謝ってもらうって、これのこと?」


「そうだよ!」


「これのせいで、ぼくの子供が産まれたら、濃艶にぐっちゃぐちゃにされるの?」


「あぁ、そうだよ! ぐっちゃぐっちゃにしてやる!」


 説教し続ける濃艶の下で顔を伏せながら、高志はこっそり笑っていた。

 バスで濃艶が姿をみせたとき、禍々しいのでもなく、おどろおどろしいのでもない恐ろしさを感じたのは、こういうことだったのだ。

 まだ全ては思い出せないが、幼かった高志は今日のようにいつも濃艶に説教をくらっていたのだろう。

 濃艶に叱られる怖さを、心の隅っこが記憶していた。

 そして、濃艶の優しさも。


「濃艶」


「なんだい!」


「ありがとう。幼かったぼくの面倒をみてくれて。親のかわりに、ぼくを叱ってくれて」


 身を仰け反らして、濃艶が目を剥く。


「止めとくれ! 気持ち悪い」


 背を向けたかと思うと、すいっと煙管に戻ってしまった。

 まだ笑っていたハナが、皺にぽつりと付いた笑い涙を指先で拭う。


「さぁ、もう大丈夫だ。煙管を持ってお帰り。高志に飲ませた薬は、苦緑神清丸が過剰に体の中で反応するのを防いでくれる。ただ、元々の力は消えないし、何より妖や付喪神にとっては、臭うだろうからね、あんただって直ぐわかる。これから先は、忙しい人生になるよ。静かで平穏な日々なんてものは、来世に期待するこったね」


 何が何だかわからないが、取りあえず頷いて高志は煙管をリュックに収めた。


「黒楽茶碗に襲われる前なら、あの煎じ薬も少しは役にたったんだがねぇ。少なからず苦力神清丸が放つ臭いを抑えるし、胸の痛みも軽くてすんだろうに。胸が病むのは止められないが、今までよりはずっと痛みは少ないから安心おし」


 あの痛みが治まるだけでも、薬の価値は十分にある。


「あの、お代は?」


「いらないよ。もう貰っているからね」


「誰が払ったっていうんです?」


「昔、苦力神清丸を売った相手さ。あんたが困ることを見越して、今日の煎じ薬のお代を払っていったよ」


 胸がわざわざしたが、その正体がわからない。


「買っていった人が誰なのか、教えては貰えませんか?」


「そりゃ無理だ。秘密を守る、信用第一の商売だからね。心配ないよ高志、あんたは自分で思うより、多くの者に守られて生きてきたのだから」



 ハナに礼をいってエレベーターにのり扉が閉まると、直ぐにすずが姿を現した。


「イカ焼き、買っておくれ」


「はいはい、用が終わったから買ってあげるよ」


 嬉しそうに口を窄めるすずをみて、高志はふと思った。


「ねぇ、すずは薬師屋に前にも来たことがあるかい?」


「ないな。薬は嫌いじゃ」


 一階に着いて扉が開く前に、すずはまた姿を消して鈴に戻っていった。

 すずが戻ったとき、珍しく鈴がチリンと鳴った。

 高志の胸の中でもやもやと広がるのは、あの時立ち聞きしたすずと縁結びの神の会話の一部。


――わしにもわからぬのだよ。なぜ助けたのか。


――苦力神清丸だが、どうも飲ませたのはわしのような気がしてな。


 エレベーターの扉を抜けてビルの外に出ると、老人の姿をした神が優しく微笑んで待っていた。

 高志も微笑み返し、リュックから煙管を取りだして見せる。

 高志の中で広がる疑問は、まるで鈴の音の余韻のように、胸の中に波紋を広げていった。



読んで下さってありがとうございます!

次話で完結です。


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