1.ミツイ、就職を希望する
その日、私の仕事場に現れたのは一見して平凡そうな少年だった。
私の名前はエレオノーラ。このエルデンシオ王国の首都にある、職業紹介所の職員である。
職業紹介所とは何をするところかと言えば、この国にどのような職種があるかを紹介するところであり、また転職に悩む青少年(中年や老年も受け付けている)の相談先でもあるわけだ。
もちろん、結婚して仕事を辞めたご婦人がパートタイムで仕事を探す時なんかも仲介しているし、短期の魔物退治を目当てにやってくる者も多い。
例えば常連のライルさんは、短期の魔物退治を専門に請け負うタイプ。
紹介所の開所時間とほぼ同時にやってきて「なんか仕事ない?」と聞いてくるわけだ。
「なぁ、受付の嬢ちゃん。牧場の角ウサギ狩りは飽きたんだよ、も少し手ごたえがある魔物退治とかってねえのか?ゴブリンとかさあ」
「いい加減名前覚えてくださいよ、エレオノーラです。首都近くでゴブリン退治なんて仕事はありませんよ。徒歩4日ほど行った先の村でしたら、近くの森に魔物が住みつくことがあるので常駐の傭兵を探しているそうですが」
「田舎は嫌だ、マトモな酒がねえし。野宿は寒ぃから旅はしたくねえんだよ、もっと近場なやつ!」
「では、下水道のネズミ退治などいかがでしょう。ジャイアントラット退治、万が一病気になった時には治療のアフターサービスもついてますし、お昼のお弁当つきです」
そう言って私は諸条件について書かれた用紙を見せた。ライルさんは文字が読めるので読み上げる必要はない。
下水道のネズミは毒を持っていて、噛まれると稀に病気にかかることがある。病気の危険がある分、角ウサギ狩りよりも報酬はいいが、下水道は暗いし臭いし狭いしと、人気のないスポットの上位である。ライルさんは明らかに顔をしかめる。
「うげぇ……臭そう」
「人が嫌がるところにこそ、仕事は余っているものですから」
「うぐぐぐぐ……仕方ねえか。角ウサギばっかりじゃ腕が鈍るしな……、今日はそいつにしよう」
「かしこまりました。ではこちらがライルさんの契約書です、お仕事が終わったら依頼主からサインをもらってきてくださいね。支払いは戻られてからになりますので」
「ちなみにこれ、仕事の後の風呂まではアフターサービスに入ってねえんだな?」
「臭い移りした衣服を処分した場合の補償もありません」
「ダメ押しするなよ、請けたくなくなるだろ!?」
「紹介所の方で衣服とお風呂代として100G報酬に上乗せしてあります」
「……」
「支払い前にお風呂に入ってきてくださることを希望しております」
「……報酬に上乗せしたの、嬢ちゃんだろ」
「私は嬢ちゃんではなくエレオノーラです。それと、その件については黙秘します」
さて、職業紹介所を使うメリットは大きく分けてふたつ。
ひとつは雇用に際して騙されることがなくなること。
自分で職探しをしていると、条件の悪い劣悪な雇用を結ばされてしまい、奴隷のような扱いを受けたり、雇用主の横暴に対して抗議できなかったりする。なにしろこの国は識字率があまり高くないため、法律やらの知識のある人間は多くない。雇用時に文面を取り交わしてもその内容が読めなかったりする人間も多く、またそもそも文面を取り交わすといった手段を知らないまま雇用されてしまうケースもある。口約束は後で言った言わないのトラブルになることが多いので注意されたい。
もうひとつのメリットは、自分の知らない職種を紹介してもらえることだろう。
想像してみて欲しい、街中のパン屋の子供として生まれ育った場合、竜騎士の適性があったとしてもその仕事に就ける可能性がどれほどあるのか。竜騎士になるには竜との相性や剣技、礼儀作法などが必要とされるが、パン屋の子供である限り、そのどれも身につく機会はない。希望職種と現状との間に大きな隔たりがある場合、こういった職業紹介所などを利用するしかないのだ。
エルデンシオ王国の職業紹介所は国が運営しているため、その信用度は大変高い。文字の読み書きができ、理知的で(利用者は老若男女問わないので、感情的な人間は向いていない)信用できる人柄であり、容姿が一定以上あることが必要なのだ。
私の場合は髪を結い上げて制服をきっちりと着込んでいるので、隙のないクールビューティ、といったところか。
同僚には見目麗しいのもいないではないが、容姿については平均並みの職員が多いので、最後の項目はたぶん必須項目じゃないと思う。
職業紹介所は二階建ての建物の中にある。私のいる受付があるのは一階、二階は貴族用の応接間や職員の休憩室になっている。貴族の子息などに仕事を斡旋する際、庶民の使う一階窓口に来られると大変邪魔なのだ。無用なトラブルは避けるに限る。
一階は入り口を入ると正面に長いカウンターがあるのが見える。待合用の長椅子に座り、順番を待つという仕組みだ。カウンターには常時五人ほどの受付担当者がいるので、手が空いた担当者が順番待ちする次の人を呼ぶ。
その日は昼過ぎからずっと衛視のカークスさんの相手をしていた。
長く仕事をしているといろいろな人がいるもので、中には転職希望といいつつ、別に転職する気のない人もいる。
「ねぇねぇ、エレオノーラさん。もっとわりのいい仕事紹介してくださいよ。それと今夜、一緒に食事しません?」
「街の衛視はかなり条件のいい仕事ですよ?危険も少ないし、報酬は安定してるし、週休二日も保障されてますし、団長は面倒見のよい方で」
「いや、危険ですよ。誰がって団長が危険ですよ。こないだなんか、行商人の荷物が怪しいって言って、いきなり馬車破壊したんですよ!?あと顔が熊にしか見えませんよ!」
「でもその行商人、ご禁制の薬を運んでいたんですよね?」
「いや、そうなんですけどね!すっげぇ美人だったんですよ?それをいきなり言いがかりつけて!」
「デレっとなって油断してるカークスさんに代わって悪人を退治してくださったんですね?」
「いやまぁ、うん、そうです」
「あと、食事はご遠慮します。忙しいので」
「そこはちゃんと断るんですか!?」
「それとあの団長さんは、熊ではなく狼なんですよ、獣人なので。だから鼻がいいんです」
「え、そうなんですか?犬耳とかないんですが」
「曾お祖父さまの代だそうなので、かなり血は薄くなってるそうですからね」
「知りませんでした……」
「後、耳もすごくいいんですよ。カークスさん、お昼休みはとっくに終わってるんでしょう、戻らなくていいんですか?」
私が入り口を見ながら言うと、衛視のカークスさんは顔を引きつらせて振り返った。
入り口に熊のように佇む衛視姿の巨漢を目に入れて……そりゃもうはっきりと青ざめる。
「よう、カークス。仕事中に女をナンパたあ、いい度胸じゃねえか」
「い、いや、その。団長。これはですね、ナンパではなく……。ええと、そう、職探しで」
「上司に向けて転職したいですとはますますいい根性だな」
「いやいやいや、その。えっと。あれ、その子誰です?」
「ごまかし方が下手なやつだな、相変わらず」
カークスさんの言葉で改めて入り口を見やる。
体が大きいため熊に似た衛視団の団長さんは、その影に少年を一人連れているようだった。
ひょろりとした平凡そうな少年だ。服装も特筆するところはなく……、いや、布地は質がかなりよさそうだ。薄いのにしっかりしている素材に見える。一般的な毛織物であればもっとゴワゴワしているはずだし。デザインはごくシンプルで、上は白いシャツ、下は黒いズボンという面白みのない格好。荷物らしきものは一切持っていない。
黒い髪に黒い瞳。身長は170センチと少しだと思うが、隣の団長さんが大きすぎてよく分からない。
「エレオノーラ、こいつはお前に任せたい。旅人らしいんだが、どうにも変なやつでな。仕事を探してるらしい」
「仕事ですか。名前と年齢、それと前職と出身地についてお聞かせ願えますか?」
私が聞くと、少年は目を見開き、少しためらった後に言った。
「名前はミツイ・アキラ、年は16歳。前職は特にない。出身地はニホ……、いや遠いところで……」
言葉を選びながら言っているらしく、嘘ではないが本当でもないといった雰囲気。
「ミツイさんですね。前職がないというと?
親の世話になっていたとか、病気で入院していたとか、まさか記憶喪失とかではありませんよね?
踏み込んで聞きますが、お気を悪くなさらないでくださいね。仕事をご紹介する都合上、不審人物かどうかの判断が必要なのです」
「え、ええと……その」
もごもごと口ごもる様子を見て、私は団長さんに視線を向ける。
「迷子みたいでな、外門の外をうろうろしてたんだ。見てのとおり持ち物はほとんどない、妙ちくりんな金属くらいだ。武器もなし、食料もなし、見覚えもないから少なくても首都の人間じゃないだろう」
「まさか無一文なんですか?」
私が聞くと、少年は堰を切ったように喋り始めた。
「そうなんだよ!ハッと気づいたら草原にいて。狼みたいなのに追いかけられて街まで逃げてきたんだ。
これって、なんなんだ。召喚?ここって異世界?
そりゃぁ、おれだって中二くらいのときには憧れたし、勇者になって魔王退治してお姫様と、なんてカッコいいとは思ってたさ。けど、マジでこんなことになるなんて思わないじゃないか!武器も何もないし、魔法も使えないし、狼は怖ぇえし!とるもとりあえず逃げて、まずは人里に行かないことにはって!」
「…………」
私が黙って見返すと、少年は我に返ったように顔を赤らめた。
「ええと、その、怪しい者じゃないんだ。迷子ってのも間違ってない」
「とりあえず嘘をつくのが上手ではないのは分かりました。それと、ここはエルデンシオ王国の首都です。イセカイという国ではありません」
「える……でんしお?」
「はい。エルデンシオ王国の職業紹介所。私はエレオノーラと言います。あなたを連れてきたのはこの街の衛視団の団長、ハボックさんです」
「エレオノーラさんか。はじめまして、世話になります」
「それじゃ、エレオノーラ。こいつの世話は頼んだ。今日中に落ち着きどころが見つからんようなら、詰め所に連れてきてもいい」
「分かりました」
団長さんはカークスさんの襟首をつかんだまま紹介所を出て行く。
後に残ったのは私と少年だ。ミツイ・アキラと名乗った少年は、16歳というがいささか頼りなく幼い印象を受ける。
「無一文なのですよね?」
「え。あ、う……はい。いや、一応金はあるんだけど、使えそうになくて。携帯もつながらないし」
ミツイはそう言うと、ズボンのポケットから財布と奇妙な金属塊を取り出した。財布の中からコインをじゃらじゃらと出してくる。注意深く見てみると、表と裏に文字や絵が刻まれたコインだ。薄っぺらく、軽く、ついでに小さい。さらには人物の絵姿が書かれた紙も横に添えた。なんだこれは。
「おれの国の通貨なんだけど」
「確かにこれは使えませんね。国交のない国のようです。交換レートがありませんので、両替が不可能です」
「そうだよなぁ。召喚されたとかなら、こう、召喚陣の中とかで、王様やお姫様が『おお勇者よ』なんて言ってくれるだろうけど、何しろ草原にポイッて……、ポイ……」
私が首を振ると、ミツイはがっかりしたように肩を落とした。自分で言って悲しくなったらしい。
さて、と私は考える。
すでに今の時間は昼を回っている。おそらく就労自体がはじめてのこの少年に、どのような仕事を紹介するべきだろう。
完全に無一文ということは、宿代すら持っていない。ツケにするような信用もない。住み込みの仕事でもないと、とりあえず夜の寒さで死にそうだ。
「とにもかくにも、仕事を紹介させていただきましょう。まず、何かご希望の職種などはありますか?」
「希望?」
「ええ。もちろん、職種によってはすぐにご紹介できかねるものもありますけどね」
「そうは言っても……ええと、どんな仕事があるんだ?」
「最初から選択肢を与えては、それ以外の職種が思いつかないことも多々あります。
具体的な就労条件でもいいですよ?給金が多い方がいいとか、危険が少ない方がいいとか。後は内容からというのもありです。これをやってみたいとか」
「やってみたいこと……」
ミツイは少し考えて、わずかに顔を赤らめながら聞いてきた。
「ま、魔法とか使ってみたい」
「魔法使いをご希望で?」
「できるのか!?やっぱ、魔法とかあるんだ?!ファンタジーだなぁあ!」
ミツイは喜色を浮かべて弾んだ声を出した。
どこの出身か知らないが、彼の発言にはたまに意味不明の言語が混じる。何語だろうか。
「どの程度の魔法がお使いになれますか?
一級以上であれば宮廷魔術師や国軍の魔法部隊といったエリート職もございますが、初級程度の場合は得意分野によってご紹介できる先が異なります。例としましては水魔法が得意な方は、浄水設備の管理会社や水精霊の世話役などが給金もよい安定職として人気がありますね」
「……つ、使えない場合は?こう、習ったりとか」
「魔法の使用方法を学びながら給金がもらえる職種というのは、滅多にないですね。魔法の使い方を学ぶだけでしたら、学校に行くなり魔法使いの内弟子になるなり方法はありますが、どちらもそれなりに授業料がかかります」
「金が、かかるんだ?」
「そりゃ当然です。お金が稼げる技術なんですよ?それをタダで他の人に教えてあげるようなのはお人よしとは言いません。一部の人間がそのようなことをしては、経済全体に悪影響もありますからね。物事には適正価格というものがあります」
「そ、そっか…。でも、勉強すれば、魔法を使えるようになるんだよな?」
「魔力があれば、問題はないと思いますよ。どの程度使えるようになるかは、素質にも左右されますけど」
「素質って、分かるもん?」
「魔力量……つまり魔法の素質でしたら、魔道具を使えば測ることも可能ですね。でも……」
私は少々気の毒になりながら言い添えた。
「魔法が使えないということは、魔道具の使い方も分からないでしょう。現時点でのミツイさんには計測自体不可能かと」
ミツイはがっくりと肩を落とした。
気落ちしたミツイには悪いが、あまり彼一人に時間をとってもいられない。
紹介所の職員は私だけではないが、客はいくらでもいるのである。同僚任せにしていると、後日穴埋めという名の休日出勤やら飲み会の幹事やらを回されてしまう。
「今日のところは、先ほどの団長さんのところに行くといいでしょう。
彼はとても面倒見のよい方なので、今夜の寝床くらいは用意してくださるでしょうし。希望すれば衛視見習いとして雇ってくれるかもしれませんよ?」
「衛視……か。地味だなぁ……」
ミツイは不謹慎なことを言った。えり好みしていられる立場ではないように思うのだが。
「人気ありますよ、衛視。危険も少ないし、報酬は安定してるし、週休二日も保障されてますし。まぁ、労働時間は若干長いんですけどね」
カークスさんにも言ったセールスポイントを上げると、ミツイは「うーん」と考え込んだ。
「冒険者とかってのは、ないのかな。ほら、ファンタジーなら定番だろう?」
その『ふぁんたじー』というのがよく分からないのだが。
「『ぼうけんしゃ』、というのはどのような職種です?内容を言っていただければ該当するものがあるかもしません」
「え。な、ないの?ほら、冒険者ギルドとかさぁ。内容は……なんだろ、魔物退治したりとか、街のトラブルシューターみたいな。勇者とか戦士とか魔法使いとかがパーティ組んだりするような」
つまり、ライルさんのような魔物退治がしたいのだろうか。そういえば先ほども魔法使いが希望だとか言っていたが、魔物相手に魔法を使うのが希望なのか?平和そうな見かけのわりに好戦的な少年だ。
「短期の日雇い労働がご希望でしたら、いろいろありますよ」
私は受託可能な依頼書を確認しながら言った。
「魔物退治でしたら、牧場の角ウサギ狩りですとか、徒歩4日先の村からの常駐の傭兵募集ですとか、地下下水道のネズミ退治……は、現在他の方が受託中ですので、その成否によって明日も継続依頼されるかどうかが決まりますね」
「なんだ、あるんじゃん!それだよ、そういうの。冒険者になるにはどうしたらいい?」
「剣や魔法などの魔物と戦える術をお持ちでしたら、依頼を受けていただいて構いませんよ」
「え、いや、だから、剣も魔法も今は使えないんだけどさ。職業訓練所みたいなのはないの?」
「剣も魔法も学ぶのでしたら、それぞれの学校や師匠の内弟子になるのが定番ですね。独学で戦う人もいないわけではありませんけど」
「く、くそう。また金なのか。金がないと何もできないのか……」
「むしろ、ミツイさんはこれまで何をしてらしたんです?16歳だというなら、それなりにできることはあるのでは?」
「つっても、おれ、学生だったし……。勉強や運動はしてたけど、魔物が倒せるような代物じゃあ……」
「学生?では、文字は読み書き可能ですか?」
「できる……けど、エルデンシオの言葉は、無理……」
ミツイは私が差し出していた依頼書の文字を見ながら首を振った。
難儀なことだ。どこの国の出身か知らないが、これだけ物知らずでよくエルデンシオに来ようと思ったものである。おとなしく故郷で働いていた方がよかったのではないだろうか。
「無一文で放り出されて……、帰り方も分かんねえし、どうしろって言うんだ……」
途方に暮れてぼやくミツイ。
「ミツイさん、もし魔物退治等をお考えになるのでしたら、やはり団長さんのところで衛視見習いをなさるのがよろしいかと。衛視見習いは衛視としての本採用ではありませんのでいつでも辞めることも可能ですし、見習いでありながらわずかですが給金も出ます。衛視としての基礎鍛錬があるので剣や槍の使い方を学んだりもできます。また週休二日ですので、給金が出たらそのお金で魔法を習いに行くことも可能ですよ」
私が言うと、ミツイは目を輝かせた。よほど魔法が使いたいと見える。
「衛視見習いの基本的なお仕事は、衛視の補助です。衛視は外門から出ることは滅多になく、基本的に街中のトラブルを解決する仕事です。酔っ払い相手に立ち回りが必要だったり、泥棒が出たら調査を行ったりもしますし、外門の外からやってくる人間の監視なんかもしています。街の人間の尊敬を集める仕事なので、人柄に大きな問題のある方では就けません。ミツイさんにつきましてはまだお人柄などについて不明点が多いですので、一足飛びに衛視職はご紹介できませんが、見習いでしたら可能です」
「おおぉ……すげぇ。聞けば聞くほど好条件な気がしてきた!あ、住むところは?寮とかある?」
「衛視は詰め所に住みますので、既婚者以外は見習いもすべて詰め所住まいですね。部屋代はかかりませんが、食費については自己負担する必要があります。また詰め所住まいの衛視は、緊急自体が起きた際は週休日であってもかりだされますので、その点は注意が必要です」
「独身寮ってことか。まあ、それはいいや。一人暮らしってしたことないから、ちょっと楽しみかも」
「個室にはなっていないそうなので、プライバシーはほとんどないみたいです」
「…………」
「アフターサービスです、終業時間まで待っていてくだされば、詰め所までご案内しましょう」
この少年の能力適正についてはまだなんとも言えない。
向いていないようであれば別の仕事を紹介するだけだ。
とりあえず今日のところは様子を見よう。
□ ■ □
ミツイ・アキラ 16歳
レベル1
経験値:0/100
職業:なし