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あの時の感情

 ああ、こんなにも君が遠い――。

 あの時、君の手を放していなかったらこんな感情を持たずに済んだのに。



 この感情は何?

 君を救えなかったことへの後悔?

 何も出来なかった自分への怒り?


 それとも――。


 **********◇**********



 「……手を、放して」


 彼女が言う。

 どうして、そんなことを言うの?

 今ここで、僕が手を放したら君は――。


 「離してよ!!」

 「嫌だ……」


 君の手を放したくない。

 君と別れたくない。

 君と、ずっと一緒にいたい。


 でも、僕の手はそろそろ限界にだった。

 こんなの、ドラマのワンシーンみたいじゃないか。

 ――ドラマだったら、ハッピーエンドだよね……?


 「どうして私にそこまで構うの!? 早く手を放しなさいよ!!」

 「君は分かってない……」


 なんとかそれだけを絞り出すと、僕は彼女の目を見る。

 悲しみと怒りに染まった、哀しい目。

 僕は知ってる。

 君の笑顔がとても可愛いこと。

 そんな目をしていたら、可愛い顔が台無しじゃないか……。


 「分かってないのはあなたの方よ! 手を離さないと、あなたも死んじゃうわよ!!」


 そうなるのかもしれない。

 ――そうなってもいいかもしれない。

 君と一緒にいれるのなら、それもいいかもしれない。


 「……君となら、死んでもいい」

 「な、何馬鹿なこと言ってるのよ! 手を――」


 彼女の言葉は途中で消えた。

 限界にまで近づいていた僕の手が、彼女の手を離してしまったから。

 僕の目には、彼女がゆっくりと遠ざかっていた。

 それは一瞬の永遠で。



 彼女はこの世から消えた。

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