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青空のパック

作者: 加山ナオ

ボクは平成10年8月に生まれた。お父さんはチャンピオン犬でとてもカッコ良かったけど、ボクはどちらかといえばお母さんに似たみたいだ。ロングコートのミニチュアダックス、毛色はシェイテッドクリーム。ナオさんはボクのことをよく「絶対ミニじゃないわ」と言っていた。

 ボクの最初の飼い主は小学生のいるサラリーマンのお家だった。そこでは結構可愛がってもらっていたんだけど、お父さんが転勤になってボクを連れて行くことができなくて、貰ってくれる人を探したんだ。お別れの時みんな泣いてくれたよ。ボクも寂しかったし不安だった。

 次のご主人は最悪だった。そこにはマロンちゃんっていう可愛い女の子のミニダックスがいてね、ボク達は結婚して3匹の子犬が生まれたんだよ。うれしかったんだ。そのうち2匹はどこかにもらわれていったんだけど、1匹ショコラちゃんはボク達と一緒に暮らしていたんだ。ボクも可愛がったよ。ある晩ご主人が酔っ払って帰ってきていきなりボクを蹴飛ばしたんだ。あまりの痛さにボクはキャイィィンと叫んだんだけど、後は声も出せなかった。その時からボクはご主人が大嫌いになった。次の日帰ってきたご主人が「おぉ、よしよし」なんてなでようとしたからボクはおもいっきり噛み付いてやったんだ。その日からボクは殆んど狭いケージから出してもらえなくなっちゃったんだ。お散歩もあまり連れて行ってもらえなかった。ご飯は少しだけもらえたけど、いつもお腹が空いていた。ボクの子どものショコラちゃんはとっても可愛がってもらっていた。お耳におリボンなんかつけてもらっていることもあったよ。ボクはブラッシングもしてもらえなかったから毛もボロボロだった。悲しかったよ。人間なんて大嫌いだと思っていた。ご主人が離婚することになりボクは連れて行けないということで、また、新しいご主人のところに貰われていく事になったんだ。さすがにボロボロの毛並みのままでは可哀想だと思ってくれたみたいで、美容院で綺麗にシャンプーとカットをしてもらって、見違えるようになったけど、ボクはガリガリであばら骨が見えていたんだ。


 2月の寒い日新しいご主人のナオさんがボクを迎えに来てくれたよ。可愛がってもらえなかったけど、新しいお家に行く事も不安だった。その時、ボクが使っていたものは何も持たせてもらえなかった。えさ箱もリードも首輪も新しいベッドもみんなナオさんがその日のあわてて買ってきてくれたんだ。ナオさんのお家にはベルって言う名前のミニダックスがいたんだ。すっごいチビだったからボクがリーダーになって威張ってやった。ベルは怖そうに小さくなってたよ。

 

 ナオさんは優しかったけど、ボクは人間不信になっていたから、どうしても素直に甘えられなくて、よく唸って吠えていたんだ。ボクがお昼寝しているとき、ナオさんがフカフカのお布団にボクを寝かせてくれようと思って抱っこしてくれたんだけど、ボクはいきなり蹴飛ばされたときのことを思い出しちゃって、ナオさんを思い切り咬んでしまったんだ。ナオさんはとてもびっくりしていたし、とても痛そうだった。ボクはとてもいけないことをしたと思った。ボクは毎日怖かったからよく凄い顔をみせて唸っていたんだ。でもね、そんなときもナオさんは優しかったよ。

 ボクはとても食いしん坊だったから、人間の食べるものが大好きで、誰もいなくなったリビングのテーブルの上に乗って、バターを盗み食いしたことがあるんだ。すごく沢山食べたよ。途端に気持ち悪くなって、バターをゲーゲー吐いたし、お腹も壊してしまった。ナオさんは流石に怒っていた。お散歩の時拾い食いもよくしたよ。川原に連れて行ってもらったとき、ボクは何だかよく分からないウンチを食べたんだ。その時ナオさんはとても悲しい顔をして、しばらくボクと口をきいてくれなかった。

 ボクはナオさんの所に来たときはガリガリだったけど、ちゃんとお食事を食べるようになって7Kgまで太ったんだ。だからナオさんはよく「ミニじゃない」って言って笑っていた。ボクはナオさんに優しくなでてもらうのが大好きだった。ナオさんが座っている時ボクはナオさんのお尻に張り付いてお昼寝していた。ナオさんが家計簿をつけたり、本を読む合間にボクの頭をなでてくれるとボクはとても幸せだった。ボクはだんだんと人間が好きになっていったよ。とくにナオさんは大好きだった。


 ボクはある朝突然うまく歩けなくなってしまった。びっくりしたナオさんはボクをお医者さんに連れて行ってくれた。お医者さんは「どれくらい歩けるか見せてください」と言って、ボクをナオさんから遠く離れたところに置いた。ボクは怖くてナオさんの所まで必死で歩いたんだよ。その後に点滴と注射をされてお薬を貰ってお家に帰ったんだ。痛み止めのお薬だったから、次の日からボクはまた元気になった。ナオさんも喜んでいたんだけど、ボクは2週間後くらいからまた歩けなくなってしまった。ナオさんはまた病院に連れて行ってくれた。その時はお腹も壊していたから、点滴をして下痢止めと痛み止めともらって、帰ったんだ。でも、ボクはだんだんと弱っていっちゃって、点滴をしてもらっても元気にならなくなっちゃった。それどころか病院は怖くて疲れてイヤになっちゃうんだ。ナオさんがもう病院にいくのは止めようねって言ってくれたときはホッとしたよ。ナオさんがいなくなっちゃうと不安になってボクはトイレじゃないところでおしっこしたりしていたんだけど、よく歩けなくなってしまった今は、おしっこは絶対トイレでしたかった。お水もいつものところで飲みたかった。トイレにいってお水を飲んだあと疲れてしまって帰れなくなると、ナオさんが優しく抱っこしてベッドまで運んでくれた。

 ボクはもうご飯が食べられなくなってしまった。いつも食べることばかり考えていたのに・・・ナオさんはボクのためにケーキを焼いてくれた。とっても嬉しかったけど、ボクは食べられなかったんだ。ナオさんはとても悲しそうな顔をしていたよ。ナオさん泣かないでって思ったんだけど、どうすることもできなかった。

 なんだかとても苦しくなって咳をしたらうんちが出ちゃったんだ。ナオさんは悲しそうに始末してくれたけど、ボクはそのときもうナオさんとはお別れだなって思ったよ。それからしばらくしてボクは13才でナオさんの元から旅立った。ナオさんはずっとそばにいて「パック!!パック!!」って呼んでくれた。寂しくなかったよ。


ありがとう!!ナオさん。ボクはナオさんのところに来て幸せだったよ。ナオさんは今でも時々ボクのことを思い出して泣いているみたいだけど、ボクは天国で幸せにくらしているから安心してください。


ナオさん、さようなら。。。


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