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God Games†  作者: R1C2
幕間
21/22

幕間

*ディドリー視点

 

 料理が出来る人を募集する。

 フォーダットさんはそう言った。その条件を完璧に満たしているとは思えないが、その瞬間自分は確かにフォーダットさんと目が合った。自分は、求められている。あの、フォーダットさんにだ。

 

 ディドリーは高揚するのを感じた。そしてその事に確信を得てエリオットが離れてから直ぐにフォーダットへ志願しに行った。連れて行って下さい、と勢い良く頭を下げたディドリーにフォーダットは柔らかく頷いた。お願いしますね、といつものように微笑んだフォーダットに、旅への期待が高まっていくのを感じた。フォーダットさんの旅に着いていける。


 フォーダットが独りでふらりと放浪するのは珍しいことではなかったが、誰かを供に付ける事はかなり珍しい。『白刃の輪廻』の中ではそれに選ばれることは最高の名誉を意味した。

 ディドリーにとって名誉なんぞは興味の対象外だったが、フォーダットの旅に着いていくのはいつも胸に抱いている夢だった。余りにも難しい学問の為になかなか理解者のいないシクター論をこよなく愛するディドリーにとって、真剣に論じ合える相手というものは希少価値だった。

 そしてそれが出来るフォーダットはさらに他の多ジャンルにも手を出しており、その知識欲は計り知れない。


 そんなフォーダットはディドリーにとって理想像だった。


「ディドリー、エリオットさんとはどうですか」

 フォーダットはディドリーが臨時の寮代わりのテントに戻ろうとしたのを引き留めて尋ねた。

 それを聞いて、ああそういうことかと理解した。高揚していた心がさっと冷え込んだのを感じた。


 フォーダットさんは自分なんかに興味があった訳ではないのだ。エリオットと親しいから、ただそれだけの理由だったのだ。大事なエリオットの、その親友。


 自分は今、どういう顔をしているだろう。憧れているフォーダットさんの前で、どんな顔をしてしまっているだろう。自分が求められていると感じてしまったことへの羞恥できっと今酷い顔をしている。

 恥ずかしい。

 求められているのはただエリオットだったのだ。

 あいつだけなんだ。


「仲良くやってますよ」

 ディドリーはひきつる口の端を持ち上げてフォーダットに笑顔を見せた。




 ディドリーはエリオットに会いに行くことにした。エリオットが、どんな感情を持って旅についていこうとしているのかが知りたかった。

「おっす。エリオット、俺も付いて行く事になったぜ」

「ディドリー!?」

 エリオットのテントの中に体を滑り込ませると、エリオットは大きく眉間にしわを寄せた。


「何故だ」

「フォーダットさんによ、俺も行きてぇっつったら、フォーダットさん、いいですよってな」

 ディドリーは心底おかしそうに笑って見せた。

 エリオットはそれに対し嫌そうに顔をしかめる。


「お前、料理なんか出来たか?」

「まあ、自分で食う分には困らねえくらいには作れるぜ」

 幼い頃からエリオットとは付き合ってきたが、料理をしている所など見せたことがないから不安なんだろう。


「ぶっちゃけ、フォーダットさんが俺に求めてるのは料理じゃないと思うんだけどな」

「どういう意味だ?」

「そりゃ料理も必要なんだろうけど、多分エリオットの目付役じゃねぇか?じゃなきゃ、俺が即決で採用されるとは思えねえし」

 エリオットの顔色を伺った。見張られているという現状を突きつけられて、どう反応するのか。


「そもそも、なんでお前は同行を申し出たんだ。研究はどうした」

「さぁ」

 エリオットは思うような反応を示さなかった。話をずらし、現状を直視しない。

 理不尽だということは分かっている。しかし、エリオットがフォーダットさんを良く思わないことに腹が立った。

 俺には、フォーダットさんに目をかけられるだけの何かがない。エリオットはそれを持っているのに。


「なんだ。研究第一じゃなかったのか?口だけか?」

 これは悪ふざけだ。挑発に乗って怒った振りをするのが定石だ。


「うるせぇよ」

 それは突然だった。ディドリーはきっとエリオットを睨みつけた。笑って言うはずの言葉に笑顔が伴わない。

 ちがう、こんな風にする予定じゃなかった。こんな子供じみたことを言いにエリオットを訪ねたのではない。


「お前に俺の研究の何が分かるんだよ。シクターの何も理解してないくせに」

 酷く棘のある言い方になってしまった。

 確かにエリオットはシクターの専門家な訳ではないし、ましてまともに学んだことすらない。だが、それでここまでキツい言葉を投げる必要はなかった。

「何だ。何が気に入らない?」

「別に。悪い、当たった」

 ディドリーはふいと目を反らした。


「研究、行き詰まってるのか?」

 エリオットが気遣わしそうに聞いてきた。それがまた癪に障った。何も、自分がどういうポテンシャルを持っているのかさえ気づいていないエリオットに、そうやって気遣われるのが嫌だった。自分は、自分の限界を知ってしまっている。


 俺が、フォーダットさんの役に立つのはエリオットの傍にいるときだけだ。

 俺は、こいつの傍に居てのみフォーダットさんに求められるのだ。


「まさか。天才俺様だぜ。研究が行き詰まるなんてあり得ねえよ」


何故、俺じゃないんだろう。こんな、甘ったれで剣技も中途半端で我儘で偉そうで体力も知恵も何もないのに、なんで、なんで俺じゃなくてエリオットが求められる。

 なんで、俺は認められないんだろう。


 醜いな。


 俺は、笑った。

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