ABC物語 4
それからしばらく
三人が同じ場所にいる時間が、
少しずつ増えていった。
きっかけは、たぶんBだった。
BはCと話している途中で、
ときどき後ろを振り返るようになった。
視線の先にいるのは、
だいたいAだ。
Aは気づいているのか、いないのか、
ノートに視線を落としたまま、
顔を上げないことが多かった。
それでもBは、
会話の途中で一度だけ、
Aのほうに向かって口を動かす。
声は聞こえない。でも
「Aもどう?」
と言っているように見えた。
【メモ:Bは、Cと話しているとき、わざとAを誘っている】
ある日BとCが廊下で立ち話をしていた。
Aは少し離れた場所で、
靴ひもを結び直していた。
Bはその様子に気づくと、
一度Cのほうを見てから、
手でAのほうを示した。
Cは一瞬だけ間を置いてから、
Aのほうを向いた。
Aは
呼ばれていることに気づいて、
少し戸惑った顔をした。
それから近づいていった。
三人が、
同じ場所に立った。
距離は、
まだ少しだけぎこちない。でも
誰も離れなかった。
【メモ:三人で立つ位置が、
前より自然になってきている】
昼休み。
Bは、
自分の席の前に、
わざと三つ分のスペースを作っていた。
Cは、
そこに座った。
Aは少し迷ってから、
その隣に腰を下ろした。
三人で机を囲む形になる。
会話の中心は、
最初はBだった。
でも話題がAの知っていることに移ると、
Bは口数を減らした。
Cは、
Aの話を聞いて、
小さく笑った。
Aは、
少しだけ安心した顔をした。
【メモ:Bは“場を作る役”をしている。
Aは、まだ遠慮している。
Cは、それを受け止めているように見える】
放課後。
三人は、
同じ方向へ帰ることが増えた。
並び方は、
毎回少しずつ違う。
Aが真ん中の日もあれば、
Bが間に入る日もある。
Cが少し後ろを歩く日もある。
でも、
三人とも、
途中で離れなくなった。
教室の後ろ、窓際。
僕の席から見えるのは、
その“並び方の変化”だけだ。
仲良くなった、と言うには早い。
でも、
避け合っていた頃より、
明らかに、距離は縮んでいる。
【メモ:ABCは“仲良くなりつつある”。
ただし、
それぞれの気持ちは不明】
三人の関係は、
少しだけ丸くなった。




